もうすぐ夏休み
7月になった。早く梅雨が明けないだろうか?俺は参加してないけど6月には日本最大のヒルクライムイベントの富士ヒルクライムが開催されたと言うことだ。参加選手の車載カメラ動画を確認すると雨だった。雨の中では調子が出ない気もすぐが優勝者は過去の記録を更新たタイムだそうだ。強い人はどこか違うのだろうか?
日本で有名なヒルクライムイベントと言うと他にも夏合宿を予定している乗鞍もヒルクライムで有名で乗鞍で優勝すれば日本一のヒルクライマーの称号が与えられるのだそうだ。先生の話しではどれも難易度は赤城と同じくらいでタイムも近いそうだけど、赤城と富士を比較すると富士は勾配が緩くてダラダラとただ登る感じ、乗鞍は変化があって面白いけど標高が高いので空気が薄くてパワーが出しにくいのだそうだ。
今年のエントリーはもう終わったので、参加は出来ないけどいつかは参加してみたい。
さて、梅雨が明けたら本格的にトレーニングしたいけど、期末試験はあるし、原型師さんは月末にイベントがあるので学業に支障が無い範囲で手伝って欲しいと言っているし、凛も入稿の締め切りが近いので忙しそうだ。
まあ、俺は赤点取らなければ良いと思ってるし、そんなに焦っても無いんだけど。
原型師さんの手伝いは相変わらず洗浄と下地処理がメインだけど、エアブラシを借りて塗装の練習もしている。肌の部分は透明のメタルプライマーで下塗りをして、クリアオレンジにクリアレッドを少し足したものに半艶消しのクリアで薄めた塗料を使って、少しずつ色を確認しながら塗り重ねる。このやり方はサフレス塗装と言われるが、色が濃くなってしまうと修正が難しい。また、例外的に目だけは白いサフで塗るので、マスキングをしないといけない。
トレーニングについては雨が多くて赤城に登る機会は少ないとはいえ、週に2、3回は登っているので、トレーニングの量としては悪くないけど、人で登るのはイマイチモチベーションが上がらない、やっぱり誰かと競いあった方がいいけど結城は部活が忙しくて時間が会わない、そう言えばテスト前の日曜日は空いていると言っていた。天気と良さそうだし日曜日は唯トレーニング日だけど、たまには良いかな?
そして日曜日、結城と学校の駐車場で待ち合わせをした。朝だけどいつもより少し遅い時間なので、これから赤城に登る人の車が沢山停まっている。学校の駐車場だけど、赤城を登る人に解放されてるのだ。
結城は先に来ていた。
「おっす!今日は試走に来ている人が多いな」
「おはよう、だな、速い人にぶち抜かれるのは、めげるから嫌だな」
「何言ってんだ!抜かれたら抜き返すだろ!」
「やる気満々だな」
「おうよ」
「そう言えば、おまえ痩せた?」
「まあ、大体、暑くなると痩せるんだ」
ペロリジャージをめくって、割れた腹筋を見せつけた。日焼けもしてるしカッコいい。
「流石だな」
「おまえはどうだ」
結城は俺のジャージをめくって
「まだまだだな、白いし」
「インドア派だしな、さて、登るか」
「よっしゃ!今日は負けないぞ!」
俺と結城は赤城の県道4号線を登り始めた。先行は俺で畜産試験まで15分くらいなるべく信号に引っかからないペースで登る。割と結城は落ち着いて俺の後について登っている。いつまで我慢できるだろうか?
畜産試験場の交差点に近づくと嫌な予感しかない光景が見えた。国道353の西側におそろいのジャージを着た集団が信号待ちをしている。近場では最大のチームで富士や乗鞍で優勝した人もいる強者のチームだ。俺たちは信号をパスできそうなので、後ろに付かれることになるといやというか、あっと言う間に抜かれてしまうだろう。そろそろ本気出そうと思った所で出鼻をくじかれそうだ。
信号をすぎ少し走った所で後ろに迫ってきたので俺は邪魔してはいけないと思って若干ペースダウンして、先を譲る事にした。後ろから「右から抜きます!おはようございます」とか、声がけしながら速そうな人が抜いていく、五人くらいに抜かれたととろで、「んっ?」結城にも抜かれた。無謀にも結城は反応して、追撃している。仕方ないできる所まで付き合うか!
速そうな人たちは、まだスタートしたばかりなのか、なんとか付いていく事ができた。とはいえ俺としてはオーバーペースである事に間違いない、ただ、心拍数は上がり切っていない、もう少しいけるかな?
それにしても、結城もよくくっついていける。楽そうでもないけれど、しばらく一緒には走ってなかったけど、それなりにトレーニングしていただろう。それと体重も軽くなったのも効いているのだろう。俺ももう少し減量をしようかな、結城の腹筋から考えれば、俺はもう少し絞れそうな気がする。
空っ風街道との交差点手前で先頭の人が加速して、続く人たちも反応した。それに対して限界以上で走っている俺と結城は反応出来なかった。少し距離がひらき、速そうな人たちは信号をギリギリパスした。そして、俺と結城は信号で止まった。
「くそ!速すぎだろ!」
「まあ、あのペースについて行くのは無理だって」
「うーん」
「まあ、頭冷やして俺たちのペースで登ろう」
「しゃーないか」
信号が変わり俺が先で走り始めた。その時にチラリ後ろを確認すると何人かの集団が上がってくるのが見えた。まだ、離れているのでわからないが、さっきまで追走していた集団と同じチームなのだろうか?まあ、気にしてもしょうがないので、自分のペースで登る。飲み薬の工場の辺まで登ったところ、前に登っている人が見えてきた。あまり速そうではなかったので、追い越ししようかと後を確認すると自動車がつながっていて、すぐには抜けそうもなかった。仕方なくペースダウンして、前の人の後ろに付いて走る。
当然だが、試走は自動車も同じ道を走っているので追い越しの時は注意しないといけない、あまり速度差があるとペースが乱れてしまうので嫌だ。だから、早朝に走った方が空いいて走り易い。とはいえ、追い越しは勝ったような気がして気持ちいい、まあ、タイムなんて気にして走っている人ではないかもしてれないけど。
さて、料金所跡は道が広くなっているし、平坦なので追い越しのポイントはそこにしようと思った。だが、料金所跡手間の少し急坂を越えた所で後ろを確認しようとしたら、どどっと、後ろの集団に抜かれてしまった。しかたないのでその集団の後ろに貼り付いて、様子を見る事にした。
結城は俺の後に付いている。さて、どうしようか、橋を渡って、短い平坦区間が終わる。信号と先行者に阻まれて追いつかれだけど、何となく付いていけそうな気がする。
集団は5人、そのうち3人は同じジャージを着ている。平坦から坂に変わったとろで、パワーを上げてきたけど数分後、集団から脱落者が一人下がってきた。俺と結城はその人を抜いた。同じチームでも無いし、ベッタリ追走するのは悪いと思って、5メートルぐらい距離を置いた。
ペースとしてはマイペースぐらいで丁度いい、でも、頑張れば抜けるかな?そんな感じだった。しばらく、そんな感じだったけど、集団のペースが桃林の辺で若干、落ちてきた。
「ダメだ、限界」
と先頭の人が叫んでスピードが落ちて、集団との距離が溜まった。ここで減速すると、失速してしまうので、俺は集団を抜くことにした。ダンシングで加速して一気に抜き去った。結城も付いてくる。
後ろの集団に煽られるのも嫌なので、オーバーペースで最初のS字カーブ、C1の入り口まで頑張る。カーブで下を見ると、集団は追ってこないようだ。若干、ペースを落として、上がった心拍数を抑える。振り向いて、結城の様子を確認する。
「大丈夫か⁈」
結城は手を挙げて親指を立てていたが、苦しそうだ。
俺もこのペースでは最後まで持ちそうも無いし、タイム的にはベストよりいい、なんとか、持ち堪えたい。
そのまま、直線を走って二つ目のS字カーブまで上がる。あと少しで箕嶺の平坦だ。一息つけると思ったら後ろから上がってくる気配を感じた。カーブで下を確認すると誰か一人、上がってくる。先程の集団ではないようだ。
抜かれるのは嫌なので、若干ペースを上げる。「くそ、休ませてくれないのか?」心拍数を確認するとまだ行けそうな気がしたので、箕嶺の手前の坂でダンシングで更に加速する。平坦でも足を緩めないで限界近くまで上げる。
でも箕嶺の平坦で追いつかれ、結城はその人に抜かれた。「ダメか?」と思ったけど、焼きとうもろこし家手前の坂では仕掛けてこない、後ろにベッタリ付かれて嫌だ。
そして、焼きとうもろこし家が見えて平坦に差し掛かった所で仕掛けてきた。俺はもう限界ギリギリなので、無理はしないで走った。
姫百合駐車場の通過タイムはジャスト50分、「うへっ⁈ 記録更新だ!」こうなったら、ゴールまで頑張るしかない!
なんとか抜いていった人の後ろにつけないだろうか、九十九折り区間の坂に入った。前の差はまだ少しだ。でも、無理は出来ない。
ギリギリの走りをしながらどうしようと考えるけど、頭に血が回らないので、とにかく踏んだ。ここでやめたら、記録更新は難しい、でも、力尽きて失速するかも、だから、リミッターを心拍数180として、それ以上になったら追撃は諦めよう。
前の人との距離は開いたり縮まったりして、ずっと射程内だ。この人もギリギリで登っている感じがする。俺は比較的一定スピードだが、前の人は坂で若干スピードが落ちる。そこで俺は間を詰める。そしてカーブの出口でダンシングで加速してまた、離される。なんか、俺とは走り方が違う。俺はダンシングもするけど、基本的にはシッティングだ。姫百合駐車までは、勾配の変化が少なくて、一定パワーで登る事が出来るけど、九十九折り区間は変化があって難しい、前の人の様にメリハリをつけだ方が良いのかもしれない。
試しに前の人の真似をしてみた。しかし、ダンシングするとどっとHPを削がれる。うーん、俺はダンシングが下手なんだろうか?難しい。
そんな感じで一杯清水のパス停まできた。後、残り2キロだ。なんかいけるかもしてれないと思ったら、前の人が用水がトンネルから流れて落ちるへんで加速し始めた。ラストスパートだろうか?俺も頑張ってペダルを踏む、心拍数は180を超えた。「くそったれ!リミッター解除だ!」でも、追いつかない!じわじわと距離が開いていく、ゴールの観光案内所が見えた時には、100メートルぐらい離されて、前の人が観光案内所を通り過ぎるのが見えた。
それでもラストは頑張って加速した。そして、観光案内所の駐車場に入った。「やった、記録更新だ!」息をゼーゼーしながら、停車して、ハンドルにもたれかかって、息を整える。
ふと、結城が後ろにいない事に気がついた。前の人につい行くのに夢中で結城の事を忘れていた。
まもなく、結城もゴールした。
「くそっ!速すぎだ。でも、記録は更新した」
「俺もだよ、一人で登るのも、いいけど、たまにはバトルするのも面白いな」
「まあ、そうだけど、やっぱり、悔しいな、体重が軽くなったから、今日はいけると思ったんだけどな、お前も速くなったんだな」
「そうかな?今日は調子が良かったのかな?」
「あーあ、明日からテストか」
「嫌なこと、思い出させるなよ」




