梅雨
月曜日、ゆかりは昨晩の事が夢であったような振る舞いだった。ただ、おはようのキスがいつもより濃厚だった気がした。こんな朝がくるとは考えたことはない?いや、考えないようにしていただけだったのかもしれない。ゆかりな事は好きだし、大切に思う気持ちは変わらない、でも、やっぱり、前より愛おしく感じる。
何となく、よくわからない不思議な感覚でぼーっとしてしまった一日だった。
火曜日は天気が不安定だったので、朝は軽くローラーで汗を流して、水曜日の朝、赤城に登る事にした。
水曜日、夜明けと同時に家を出て、赤城を登る。少し雲があるし、赤城の上の方は雲で見えなかったけど、天気予報では雨は降らないらしい、
でも、姫百合駐車場を過ぎたぐらいから、霧になった。確かに雨ではないし、路面もドライだけど、重い空気に包まれた感じでパワーの割にスピードがでない、大袈裟な表現だと水の中を走っている感じだ。霧に包まれで神秘的な感じもする。気温が高く無いので、走りやすいはずなのに、ペースは上がらなくて、モチベーションも下がり、結局ダラダラと登ってしまったので、タイムもよくなかった。
ウィンドブレーカーを羽織り、前後のライトが付いている事を確認して下る。
霧の中の下山は神秘的な感じがする。アイウェアは水滴がまとわりついて実際の視界よりもずっと悪い、たまにすれ違う自動車がふわっと現れて、ドキッとする。
それにしても、下山は退屈だ。スピードを出せばジェットコースターのようで楽しいと言う人もいるけど、自転車で50キロを超えると怖いのでそれ以上にならないように下る。プロの選手はレースでは下りで100キロを超えることもあるそうだけど、ヒルクライムは下りが速くても意味ないし、俺は安全第一で下山する。
放課後のミーティングで、先生が俺のトレーニング履歴を確認して、
「高梨くん、頑張り過ぎだぞ、限界まで上げるのは週2回まで、あとはFTPの90%ぐらいで、トレーニングすること。
出来れば、週一はサイクリングロードをのんびり走るぐらいの強度のトレーニングを入れるといいかな」
と言われた。それと、凛も「わたくしも週一で我慢しますわ」と訳のわからない事を耳元で囁かれた。ゆかりとはどうしようか?
木曜日は先生にアドバイスされたようにサイクリングロードを走る事にした。朝、起きようとすると、「わたしも一緒に行く」とゆかりが言ってきたので、一緒に行くことにした。サイクリングロードを南下して利根川まで走り、また同じコースでもどった。サイクリングロードは一人だと退屈だけど、ゆかりと一緒なのは楽しいし、思いがけない事もあった。
「にいちゃん、あれ、犬かな」
野良犬は嫌だなと良く見るとキツネだった。赤城では鹿とかよく見るけど、サイクリングロードでキツネを見るのは初めてだった。キツネは何故か俺たちと同じ方向に走って逃げているので意外と長く見ることができた。
「可愛いかったな」
「うん、早起きして、にいちゃんとサイクリングしたかいがあったよ」
その後、時間の都合で、一緒にシャワーを浴びた。ゆかりは俺のを洗ってくれた。
「えへへ、にいちゃん、元気だね、でも、お誕生日の事は特別だから、しばらくは我慢してね、だけどサポートはしてあげるから」
「わかった。じゃあ、俺もサポートしてあげようか」
「にいちゃんのエッチ」
まあ、血は繋がっていないとはいえ、まだ、責任の取れる歳ではないので、やり過ぎはよくないと思う。凛は「気にしないで」と言っているけど、注意はしないといけないと思う。でも、週一ぐらいは良いかな?
原型師さんの手伝いをしながら、フィギュアがどう作られるのか、だんだんわかってきた。俺が持っているフィギュアは量産型で、素材はPVC樹脂でソフトな感じで塗装もされているが先生の塗装と比べると安っぽい感じだ。ただ、肌はPVC樹脂の方が透明感があって、リアルな感じがする。先生はグレイのサーフェイサーでしっかり下塗りをしてから、色を塗り重ねる方法がメインで時間はかかるけど、仕上がりは綺麗で品質が高そうな感じになるのだそうだ。
ただ、イベントに間に合わない場合はサフレスと言って、透明のプライマーで下塗りして、クリアオレンジで肌色をるそうだ。サフレスは下地処理が楽だけど、色が単調な感じになるし、肌以外の服は発色が悪くなるので使えないそうだ。
塗装には興味があるけど、まだ、塗装の作業はやらせてもらえない、今のところは洗浄とヤスリがけがメインだったけど今週はレジンの表面にある小さな穴を瞬間接着剤で埋める作業を教わった。この穴は気泡が表面に出た物でエアブラシで塗装すると塗料を弾いてしまうので、その対策だそうだ。
金曜日は凛のアパートに泊まって、土曜日は赤城に登りたかったけど、雨だったので、凛のスマートローラーでトレーニングをした。スマートローラーと言うのはスポーツジムにあるような物でローラーの前にはタブレットがあって、アプリを利用して色々なトレーニングかできる。土曜の朝は赤城山ヒルクライムのシミュレーションをしてみた。坂の変化でペダルの重さが変わって面白いし、タイムも意外と実際に近い、
凛と朝食を食べたあと帰宅した。その後は家の手伝いをして、また、原型師さんの手伝いにでかけた。
日曜日も雨だった。月曜日は晴れるようだったので、朝は軽くローラーでトレーニングして、悶々と過ごしていたら、ゆかりが家の手伝いに店の方に行った後に来客があった。
「来ちゃった。ラーメン食べに」
唯だった。
「店はまだだけど、上がって」
「お邪魔します」
と言って、唯は靴を脱いでスリッパに履き替えた。俺がリビングの方に体を向けると、背中に柔らかい感触を感じた。
「ごめんなさい、本当は寂しくて、お兄さんに会いに来ました」
俺は唯が愛おしくなって、振り向き唯を抱きしめてキスをした。
「まあ、ここじゃなんだから、リビングにどうぞ」
「わたしはお兄さんの部屋でもいいですよ」
俺はズンと熱くなる物を感じだけど、グッと我慢して、
「俺の部屋は狭いし、ベッドしかないし」
「ふふ、残念ですけど、そうですよね」
そう、いつ家族が家の方にくるかもしれないし、それはヤバイ気がする。
とりあえず唯をリビングのソファーに座らせて、店の方に行って、ゆかりに唯が遊びに来た事を伝えて、ラーメンを頼んだ。ゆかりは「ラーメンが出来たら、スマホで連絡するから、あと、二時までは、家の方に行かないようにするから、ごゆっくり」と言った。
家のリビングに戻って、
「後、三十分ぐらいしたら、ラーメンが出来ると思うけど、それまでどうしようか?」
唯はポンポンと自分の座っているソファーの横を叩いた。横に座れと言う事だろう、俺が唯の横に座ると、唯は俺にもたれかかってきた。
「雨の日曜日はお兄さんとトレーニング出来なくて寂しいです」
「確かに、俺もトレーニング後に唯とまったり過ごす時間がないとリフレッシュ出来ない気がするよ」
「いつもありがとうございます」
「いやこちらこそ」
俺は唯の肩を抱いて、そっとほっぺにキスをしてみた。
「お兄さん、もっと」
「うん」
ラーメンが出来るまでの短い時間だけど、唯とスキンシップをした。もちろん、いつゆかりが現れるかもしれないので、今まで以上の事はしないようにした。
「ラーメンが出来たよ」と連絡があったので、店の方に取りに行ったら、
「にいちゃん、お手伝いが終わったら、わたしも混ざるからね」
とウィンクした。
ラーメンと頼んでない餃子を唯と美味しく食べて、満腹になって眠そうにしていると、唯が自分の太ももをパンパンと叩いて、
「膝枕しますか?」
「うん、ありがとう」
俺は遠慮なく、唯の膝を借りて、顔が見えるように、仰向けに寝た。
「あれ?顔が見えない、前は空が見えたのに、今は天井が半分しか見えない」
唯は 不思議そうに前屈みになって、俺を 覗き込んだ。唯のおっぱいでさらに視界が狭まる。そうか前はお腹も出ていて、胸で視界が狭まる事ななかったのか、
「どうかしましたか」
「いや別に、柔らかくて気持ちいいな」
「お兄さんのエッチ、でも、いいですよ」
と柔らかいそれを俺の顔に押し付けた。
「ダメだよ、お兄さんが起きちゃう」
「うん、でも、ちょっとだけ」
「息、臭くない?」
「大丈夫、わたしも餃子食べから」
「あっ、気持ちいい」
ゆかりと唯が目の前で絡み合っている。二人は何をして?
もしかして、百合??
「にいちゃん、おはよう」
目を覚ますとゆかりが俺を見下ろしている。
「唯ちゃん、寝てるよ、唯ちゃんの膝枕、気持ちよさそうだね」
確かに微かに寝息が聞こえる気がする。顔は見えないけど、
「可愛いな、いたずらしちゃうかな」
ゆかりは指でツンツンしてる。
「うっうん、お兄さんのエッチ」
「唯ちゃん、柔らかくて気持ちいい」
「ああん、ゆ、ゆかりちゃん?わたし、寝てた?」
「うん、にいちゃんとね」
「あっ、お兄さんも起きました?」
「ああ、今」
よっこいしょと、起き上がる。外が明るくなってる。
「雨上がった?」
「うん、明日は晴れるって」




