表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/55

三話 近藤輪業の娘

唯とサイクリングしてから今日で一週間が過ぎた。あれから唯は毎日サイクリングロードでトレーニングしているようだ。毎日、LINEで報告が入る。内容はお尻が痛いとか腕や背中が筋肉痛とかだ。また、妹も暇なので一度付き合ったみたいだけど、ママチャリなので付いて行くのが大変だと言っていた。まあ、妹はスポーツ好きで体力もあるのでちょうどいいハンデかもしれないけど。

 さて、今日は唯と唯のヘルメットを買うのに付き合う予定だ。先週と同じ場所で待ち合わせだけど集合時間はお店が開く時間に合わせた。準備をしていると、妹のゆかりがやって来て。


「ねえ、にいちゃん、今日は唯ちゃんと自転車屋に行くんだよね、わたしも一緒に行くから」


「へえ、そうなんだ」


「ごめんね、邪魔して」


「まあ、いいけど」


 少し残念ではあるが、まあ、友達だしそんな話になったのだろう。それから、妹はママチャリなので俺も通学に使っているママチャリで妹と一緒に待ち合わせ場所に向かう。

 唯はロードバイクで先に来ていた。服装は動きやすそうだけど、少しおしゃれな感じがした。

 俺たちはサイクリングロードを使って市内に入り目的の近藤輪業に着いた。


 店に入ると店主が自転車をいじっていた。店主の近藤さんは元競輪選手出身で賞金で店を始めたそうだ。今も競輪関係の仕事もやっているようだが


「やあ、高梨君久しぶり」


唯とゆかりを見て。


「なんだ両手に花だね、で今日は?」


「えーと、こっちの子が最近、ロードバイク買って、ヘルメットが欲しいんだって」


近藤さんは思い出したように。


「ああ、こないだのお客さん、えーと、中倉さんだっけ」


「はい、その時はお世話になりました」


「えーと、今手が離せないので」


おーい!菜々、店、手伝ってくれ


はーい、すぐ行く


と奥の方から聞き慣れた女性の声が帰って来た。まもなく姿を現した。


「やあ、高梨君いらっしゃい♡わたしに会に来てくれたのかな?」


と唯とゆかりに気がついて。


「あれ?わたしと言うものがいるのに、そちらの二人は?」


「先生、冗談はやめてください。こっちが妹のゆかりとその友達の唯です」


そう近藤先生は学校の先生で俺の自転車の先生でもある。そして俺は先生のことが好きと言うか憧れている。だけど去年の夏あることがあって少し避けていた。

まあ、学校で時々見かけるはあるけど。


「ほら、菜々、ふざけてないてお客さんの相手して、ヘルメットだって」


「は〜い、こちらへどうそ」


先生は父親には嫌そうな返事をしたがすぐに営業スマイルで案内してくれた。


「どれがいいかなぁ?」


どれも安全性には問題ないので、気に入った物を見つけたらいいと思いますよ。


「あっ!これなんかかわいい、うーん、こっちもいいなぁ」


お気に入りのヘルメットがあればご試着ください。


 唯は色々見たり試着したりして、なかなか決まらないようすだった。


 ゆかりが暇なのか


「わたし、ちょっと自転車見てくるね」


とロードバイク展示コーナーにいってしまった。


ようやく、気に入ったのが見つかったのか、白ベースでピンクの模様が入ったヘルメットをかぶって。


「ねえ、これなんかどうかなぁ」


「うん、かわいいと思う」


唯は少し照れて。


「じゃあ、これにします」


お買い上げありがとうございます。


ふと、ゆかりの方を見るとキラキラした目で白いロードバイクを見ていた。近づくと。


「お父さんがね、入学祝いにねロードバイクを買ってくれるって、これなんかどうかな」


「まあ、値段も手頃だしいいんじゃないかな」


親父は唯には甘いから、ポンと買ってあげるだろう。ちなみに俺のロードバイクは親父のお下がりだけど。


「んっ?おまえも乗るの?」


「うーん、考え中」


 唯はクーポン使ってヘルメットを購入した。その後、ウェアーを眺めていた。


「なんか水着みたいで着るのは恥ずかしいかな」


「まあ、そうだけど流石に自転車用なので機能的によく出来ていて、何より楽だし、慣れてしまうと他が着られなくなるんだ」


「そうなんですね、でも、もう少し痩せてこういうのか似合うようにならないと」


「まあ、頑張ってね」


唯とゆかりは二人で寄る所があるとかで店を出た。その後、店内でうろちょろしてると、先生が寄ってきて、腕に手を絡ませて、耳に口を近づけて囁くように。


「前にも言ったけど、あの夏の事は気にしないでね。だからお店にも顔を出してね。学校だと話しづらいし」


あのう、先生、胸、当たってるんだけと、相変わらず距離が近い、無意識なんだろが、いろいろ辛い。


奥の方から大きな声で。

「おーい、生徒、口説いてんじゃない!」

「は〜い」


と少し離れて。


「あと、また一緒に走りたいな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ