ゴールデンウィーク1
28日の木曜日、連休に備えて、休息日としたので目覚ましはかけなかったが、習慣で夜明けの時間に目が覚めた。
薄暗いけど、妹の顔が目の前にあることは確認できる。
そうか昨夜は一緒に寝たんだっけ。それにしても、可愛い寝顔だ。俺が鑑賞していると。小さく「うん」鼻声をだして、唇を突き出した。
「起きてる?」
「だから、おはようのチュー」
甘えん坊だなと思いつつ、軽く口付けする。
「おはよう、にいちゃん」
「おはよう、ゆかり」
「今日はトレーニングしないの?」
「ああ、明日は結城とハルヒルの試走だし、休む予定」
「私も明日はサイクリングだけどハードじゃ無いトレーニングだから、今日はいつも通りにランニングしてくるね」
「じゃあ、起きるか?」
「ううん、ちょっとだけ充電させて」
そう言って俺にくっついてきた。
「にいちゃんは今日も元気だね」
「だから、そこは触るな」
「えへへ」
ベッドからでて、顔を洗っい、トイレに行って後、いつももようにコーヒーを淹れていると、妹がトレーニングウエアに着替えて、二階から降りてきた。
「コーヒー淹れたぞ」
「ありがとう、にいちゃん」
ソファーに座って、二人でコーヒーを飲んだ。妹はコーヒーを飲み終わると、トレーニングに出かけた。その後、俺はこっそりと自己処理をした。終わったあと、虚しい気分でだったが、処理しないと理性がたもてない。その後は録画したアニメを観て元気を取り戻した。
学校では明日からの連休の話題を中心に話しをした。あと、明日のハルヒル試走は前回と同じく、榛名支所の隣りの福祉会館前に七時と言うことにした。
そして、29日、連休の初日だ。俺は五時に起きた。妹は俺の布団の中から「いってらっしゃい」と手を振っていた。軽く朝ご飯を食べ、支度をしてロードバイクで待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所の榛名支所に着くと、前回とは違いロードバイクの人たちで賑わっていた。連休なのとハルヒル開催まで一カ月を切ったので試走に来ている人が多いのだろう、同じチームユニホームを着ている集団もいる。
結城は先に来ていてベンチに座っていた。俺はバイクラックに自転車を引っ掛けて結城の隣りに座る。
「おはようっす。なんか、速そうな人がいっぱいいるな」
「ああ、おはよう。結城、俺たちは自分たちのペースで登ろう」
俺たちは二人で登り始めた。始めは俺が先行した。前回はママチャリに翻弄されたが落ちいて始めはあまり上げないで後半の激坂に備える感じで後はパワーメーターを活用して一定のペースで登ろう。最初の坂を登り、下りになるのでギアを重たくして、加速しようと思った瞬間、後ろからビュンと黄色いお揃いのジャージを着た二人に抜かれた。その後ろに結城も張り付いている。
マイペースで登ろうと言ったのに、だけど、俺も加速中だったので後に付く、速そうな二人だったが下りで後ろに付いているので、楽に付いていける。俺の後ろにも同じジャージを着ている人が追ってくる。信号を超えて、ガソリンスタンド跡に差し掛かり、登りに入ったが速度を緩めない、キツいと思いペースを緩めた。前を走る結城も黄色ジャージの二人から離れ始める。俺の後ろの人はそのままだ。病院の下あたりで先行している二人のペースが落ちてきたので、一定の距離を保ち付いて行く、パワーメーターは220w、心拍数は170、まだ、大丈夫だ。
公園の横を走っていると前の方がに白いジャージの人が見えた。俺たちよりも遅いペースでだんだんと距離が詰まって来た。黄色ジャージの二人が白いジャージの人に追いついて、抜こうとしたが後ろから自動車が続いてくるので、抜けない。公園横を過ぎて、坂が急になるところで俺と結城が追いつく、郵便局を過ぎたところで、自動車が切れ、白いジャージの人を抜いた。黄色ジャージの二人は坂の終わりでダンシングして加速する。この時、後ろにいた黄色ジャージの人が俺たちをぬいて、先頭にでた。この平坦の直線区間を先頭はかなりのペースで走る。俺は逃げらないように張り付いて走る。直線からコーナーを曲がり、緩い坂になり、ペースが落ちたととろで先頭の人が手を出して、前に出ろと合図を出した。すぐ後ろの人が前にでる。先頭だった人はペースを落として、下がってきたて俺と結城の横まで来た。
「一緒に回そうぜ」
そう言って、俺の後ろについた。親父ぐらいのおっさんだった。そして、次々に先頭が代わり、鳥居のところで結城が先頭にでた。下り坂を加速してスピードが上がる。橋のところでサイコンに確認すると40キロだった。そのままブラインドのコーナーに突っ込んでいく、コーナーの終わりで、結城が右ヒジをクッと外に出した。多分抜けと言うことなんだろう、俺は先頭にでた。また、坂が急になって、スピードが落ちてきた。カーブが多く、後ろからくる車が確認出来ないので。先頭の交代が難いので自分のペースで登る。パワーは230W、心拍数は170を少し超えている。後ろも動かない。
坂を登り切りフランスレストランの看板があるカーブで後ろの黄色ジャージの三人が俺の前に出る。俺は三人について行く、わずかにアップダウンロードがあるが平坦にな区間だ。途中、登りになった所でスピードが落ちた。俺はペースが落とさなかったので前にぶつかるような気がした。後ろを確認すると、車は来ないのでそのまま、前に出て先頭を引く、平坦区間が終わって、坂に入る。
俺は220から230Wで登る。平坦区間よりスピードが落ちて、俺の好きなペースとなった。結城は黄色ジャージの後ろにいる。しばらくすると、黄色ジャージの人たちがばらけてきた。一人は付いてきた。その後は結城、残りの二人は少しずつ遅れていった。
魚籠屋の平坦区間は加速しないで結城を待った。結城は追いついて俺の後ろについた。
「きっつう!限界かも」
結城はかなりきつそうだ。後ろの黄色ジャージの人もキツいのか、前にでなかった。俺はマイペースで登る。
鳥居を潜り、榛名神社の参道付近の平坦区間は激坂に備えて、流して走る。後ろから結城が。
「限界だ!先いってくれ!」
「わかった」
俺は一言だけ返して、ハルヒル名物の激坂区間に入った。マイペースを守ろうとは分かってはいるけど、激坂は燃えてしまう。250wでオーバーペース気味だ。落ち付けと自分に言い聞かせるが、スピードが10キロ以下になると負けた感じがして、ついつい、上がってしまう。民家が見えてきた時には心拍数が180を超えていた。まずいとは思いながら、あと少し、橋を越えれば平坦区間で休める。
なんとか激坂区間を登り切って、一息ついて、後ろを確認する。結城と黄色ジャージの二人は少し離れているが、まだ、確認できる。そして、その後ろからピンクのウエアーの人が3人いる。結城たちに追いついてくると言うことはかなり速い人たちだろう。同じウエアーなので多分、同じチームで赤城でも何度か見かけた事がある。
俺は上がった息を整えるために短い平坦区間は流して走る。左コーナーを過ぎるとまた坂だ。ここも結構、急だけど先ほどでは無い、マイペースで登っていると、後ろの気配がじわじわ近づいてくる。
「おはよう御座います!右から抜きます!」
ピンクのウエアーの人が声をかけて抜いていく、俺も。
「おはよう御座います」
と返す。ピンクのウエアーはジャージではなく、ピタッとした。ワンピースだ。これはロードレースの選手たちが着るやつだ。おそらくかなり上位の人だろう。
三人に抜かれたが、どこまでついて行けるか試したい。俺はオーバーペースだと思ったが、必死で三人に付いていく、急なS字カーブでパワーを確認すると約300wだ。すごい、しかも、俺は必死だけど、ピンクの人は余裕がありそうだ。これは付いていけない。S字カーブを登った所で追走を諦めた。少しペースを緩めて、落ち着いところでマイペースに戻る。ゴールの天神峠まであと少しだ。男根岩をすぎて、最後はもがいてゴールする。タイムは55分を切った。
力を使い果たして、突き当たりの駐車スペースで止まったら、先ほど俺を抜いて行ったピンクウエアーの三人が談笑している。あのペースで登っていたのに平然としている。その一人が俺に向かって。
「おつかれ、頑張ってたな」
俺は息が上がっいて、上手く返せなかった。
「高校生くらいかな」
「はっ、はい」
「ハルヒルにはエントリーしたのかな」
「はい!」
「じゃあ、ライバルだな、頑張ろう」
「はい」
そこへ、ピンクウエアーの人たちが下から上がってきた。その後ろに結城と黄色ジャージの人がいる。次々にゴールして、結城と黄色ジャージの人は俺の近くに自転車を止めた。結城はゼイゼイ息をしていた。
「おつかれ、大丈夫か?」
「ああ、何とか、記録更新した」
「それはよかった。俺もだけどな」
「しっかし、高梨は激坂に強いな、ついていけなかったよ」
黄色ジャージの人が話し掛けてきた。
「いや、まいった。始めは自分たちの方が速いと思ったけど、甘かった。だけど、面白かったよ」
「引いてもらったおかげでいいタイムでした」
「まあ、それは同じだよ。ところで若そうだけど」
「高校二年です」
「ふっ、俺の娘と同じくらいか」
初めて会う人たちだけど、走ったあとは気分がいいののか、年齢とかの隔たりはなく、話しがはずむ。ピンクや黄色のウエアー中心に続々と上がってきて、だいぶ賑やかになった。結城がサイコンを見て。
「なあ、高梨、平均のパワーは?」
「ああ、えーと、222Wだ」
「俺は235Wだった。パワーは勝っているのに」
「多分、体重が違うからじゃあないかな?」
「そうか、だったら痩せればいいのかな、でも、体脂肪は10%を切っているし、痩せすぎるとスタミナが無くなる感じだし、やっぱり、パワーを上げるしか無いか」
「だけど、ハルヒルまでには難しいかな」
「確かに、今日はもう一本、走ろうと思うけど、高梨はどうする?」
「俺は明日、赤城を登るからやめておく」
俺は結城と別れて、榛名湖畔に降りる。トイレにより、湖畔の直線を走る。広い湿原の真ん中を通る道はひたすら直線だ。ヒルクライムの後なのか意外とペースが上がらないし、大した勾配では無いがじわじわと足にくる。
坂が終わり、料金所跡の駐車場脇を通る。駐車場には聖地らしくパンダトレノとシルビアが止まっていた。
下り坂になってすぐ、景色のいいところに駐車場があった。谷川連峰が綺麗に見えたので道路の反対側だったが、駐車場に自転車を止めて景色を眺めて、写真を撮って、妹に送った。
自動車だったら、アニメのようにドリフトを決めたい所だが自転車は命取りだ。この下りは砂が浮いていたり、荒れている所もあるので安全第一だ。
伊香保温泉、渋川市内を過ぎて、大正橋からサイクリングロードに入る。基本的に下りと平坦だし、家までは前橋市内で少し一般道を走るが楽ちんだ。
家に帰り、シャワー浴びて、自転車の汚れを落として、自転車を片付けて少し休憩して、家の手伝いをした。俺の仕事は皿洗いが中心だ。午後一時少し前に母さんが今日はここまででいいから、これを持って、家で食べてといった。ラーメンは三杯あった。妹と誰かいるのだろうか?
ラーメンを持って、自宅に入ると楽しそうに話しをしている女性の声がする。リビングに入ると妹と凛が学校のジャージ姿でソファーに座っていた。
「にいちゃん、ありがとう」
「お邪魔しています。ごめんなさい、シャワーを浴びたので、あなたのジャージ、勝手に借りています」
「大丈夫だよね、わたしのじゃ小さくて、にいちゃんのを貸した」
俺はダイニングテーブルにラーメンをおいた。
「俺は構わないよ。さあ、こっちで食べよう」
「パンツはわたしのを貸したけど、ブラは合わないので、ノーブラだよ」
凛は恥ずかしそうだ。三人で座ってラーメンを啜る。
「それにしても、どうして登坂が家にいるのかな?」
「サイクリングの後、先生と唯ちゃんも誘ったけど、用事があるんだって」
「そう言うことか、で、サイクリングはどうだった?」
「楽しかったよ。利根川のサイクリングロードを太田まで行って、帰りは埼玉側を走ってきたんだよ」
ラーメンを食べ終わり、俺はコーヒーを淹れた。妹と凛は三人掛けのソファーに座っていたのでソファー前のテーブルにコーヒーを置いた。
「にいちゃんは登坂先輩の隣ね」
そう言うが空いているのは真ん中だけなんだけど、少し狭いけど、指定されたので二人の間に座る。
「ゆかりさんはいつもここで浩之さんと一緒なのかしら」
「先輩、さっきもいったけど、わたしのことはゆかりって呼んでほしいな」
「では、わたくしも凛と呼んでくださるから」
「年上だし、それはちょっと、せめて、凛おねえちゃん?なんか違う、やっぱりお姉さま?うん、なんかしっくりする」
「確かに、凛はそう言う感じだな」
「もう、浩之さんまで」
そのあとはしばらく楽しく三人で話しをした。三時にまたコーヒーを淹れて、お菓子を食べ、そのあと凛は帰った。妹と凛は仲良くなったみたいで一安心だ。
こうしてゴールデンウィークが始まった。
先週の土曜日に赤城山を登っていたら、雨が降り出した。山の中で雨宿りをして、暇だったので、この小説を打っていたら、「ブッ、ブッ」と鳴き声が聞こえた。猪の親子だった。怖かったのでじっとして、やり過ごした。
熊じゃ無く良かった。ちなみに小熊は一度見たことがある。




