ニ話 とりあえずサイクリングしてみてるか
二人が二階にいってから、アニメ見ながらぼんやりどうするか考えた。と言うか考えるのが面倒くさいし、唯のことは嫌いではないこで唯の自転車ダイエットに付き合うことにした。
唯が帰る時に
「まあ、少しなら手伝うよ。とりあえず連絡するからLINE教えて」
「ありがとうございます。ご指導、よろしくお願いします」
「唯ちゃん、良かったね」
「じゃまた」
夕食の後、自室のベッドでスマホを眺めていたら、LINEグループの招待が入った。何かと思ったら「唯ちゃん、ダイエット プロジェクト♡」なんだこれ、作成者は妹、グループを開くと
ゆかり:にいちゃん、唯ちゃんのことおねがいします。
唯: よろしくお願いします。
俺:了解
なんだ妹に監視されているのか
ゆかり: でいつから
唯:いつからでも
ゆかり:じゃあ明日の日曜日からは?
唯: 私は大丈夫だよ、
俺: 準備とか大丈夫?自転車は?
唯: ロードバイク、入学祝いに買ってもらいました。
ふーん、どんなバイクなんだろ、ちゃんとヘルメットとか用意したのだろううか?その辺は当日見れば分かるか、
俺:ロードバイクの乗り方は?
唯:お店の人に簡単な扱い方と乗り方をサイクリングロードで教えてもらいました。
俺: OK、7時で大丈夫かな?
ゆかり: 早くない?
唯: 大丈夫だよ、私、早起きだから
俺: じゃあ桃の木サイクリングロードのスタート地点で
唯: ボート練習してる所?
俺:そう
唯: 明日、よろしくお願いします。
ゆかり: おねがいね
俺: 了解
唯: おやすみなさい
ゆかり: おやすみ
翌日、朝5時に起きた。俺は朝にトレーニングするので早起きする。トレーニングを始めた頃は、辛かったが慣れてしまえばどうと言うことはない。待ち合わせは7時、コーヒーを飲みながら録画した異世界アニメをみた。朝食は家族とは時間が合わないので、アンパンを一つ食べる。あまり食べるとトレーニングしていて気持ち悪くなるので。
準備をして待ち合わせ場所に向かう。よく考えたらこれってデート?好きな奴がいるみたいだから違うかな?
待ち合わせ場所にはすでに唯は来ていた。近くまで行くと明るい笑顔で
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「おはよう、それが新しい自転車?」
「はい、まだ買ってもらったばっかりです」
唯と自転車をチェック、服装な学校の体操着、ヘルメットは中学校指定の通学用を手にしている。さて、自転車は
「へー、ちゃんとしたロードバイクなんだね、色がかわいいね」
「うふふ、ありがとうございます♪」
なんか嬉しさだぞ、色はミントブルーでグレードは低いけどブランド物、ペダルはフラットペダル、初心者はこれでスタートが良いだろう。
「あっサイクルコンピュータ、これGPSがついている結構いいやつだ」
「えっ?そうなんですか?なんか買った時おまけで付けてもらいました。あと、ベルと鍵、前後のライトも」
「で、少しは乗ったの?」
「はい、まだ買って10日ぐらいなので家の周り、あとここも走りました」
「何キロぐらい?」
「よく分からないけど1時間半ぐらいかな?もっと走りたかったけど、お尻が痛くなって、あと腕も、こんなんじゃダメですか?」
「まあ、ママチャリとは違って慣れないと、でも慣れるとはるかに楽になるんだ」
「そうなんですか?」
「まあ、とりあえず走ってみるか、乗り方とかチェックしたいので前を走ってくれるかな、ゆっくりでいいから」
「はい、よろしくお願いします」
ヘルメットを被り、唯が先行、サイクリングロードを北に向かう。唯は重そうに体を揺さぶりながら、ペダルを踏んでいる。サドルの高さとか自転車店で合わせてもらったのか違和感はない。
それにしても、女の子の後ろを走るのは少し恥ずかしい、大きなお尻を眺めてるのは、いやらしい感じでいけない気がする。しかし、少しは様子を見よう。
季節は春とはいえまだ肌寒い土手沿いの菜の花は咲き始めている。もう少ししたら桜が咲く、サイクリングロード脇には結構、植えられていて子供の頃からよくお花見に行く、そう言えば唯と妹と来たこともあっな。
走り始めて30分ぐらいもう少しで街の北、サイクリングロードの終わりが近い、俺としてはゆっくりペースだけど唯はハアハア息を切らして、一生懸命ペダルを踏んでいる。
「そろそろ休憩しようか」
「ハイ、わたしまだ大丈夫です」
「まあ、帰りもあるし、無理しない、そこに公園あるから」
サイクリングロード脇にある公園に入って、ベンチ脇に自転車を立てかけて、
「俺はトイレに行くけど、唯は?」
「じゃあ、わたしも」
「じゃ先にどうぞ」
「はい、じゃあ、お先に失礼します」
トイレは男性用と、誰でも使うことができる個室がある。俺もよく使っているので知っているが毎日掃除しているようで比較的清潔だ。一緒に利用することも可能だけど、唯が出て来るのを待つ、
唯が戻ってきたので、
「じゃあ行ってくるから、自転車見てて」
「はい」
唯は痛そうにお尻をさすってから腰を下ろした。用を済ませて、唯が座っているベンチに戻る。
「疲れた?」
「ううん、大丈夫なんだけど、やっぱり姿勢がきつくて」
「サドルの高さとかハンドルの位置とか合ってないとダメな事持ち運びあるけど、一応、初心者向けに合わせてあるみたいだし、んっ?そう言えばこの自転車はどこで買ったの?」
「えっと、近藤輪業です」
「うっ!あそこか!」
「あれ?知っているのですか?」
「まあ、ちょっとね」
というか初心者だった頃、世話になったけど、あることがあって最近はご無沙汰している。
「あっ、それでね買った後にクーポン券もらったんです。それでヘルメット買おうと思っているんです。どういうのがいいか分からないので、お兄さんまた付き合ってもらえますか?」
「まあ、いいけど」
「おねがいばっかりでごめんなさい」
「えーと、このまま帰るのはつまらないから、休憩かねて寄り道するか?」
「唯は不思議そうな顔をして、でも嬉しそうに微笑んで」
「はい」
「じゃ付いてきて」
公園を出て赤城山へ向かう県道4号線を北に向かう、少しだけ走り東に曲がる。市民プールを通り越すと俺が通う高校がある。少し振り向いて、
「唯も春からここに通うんだね」
「うふふ、そうですね、楽しみです」
高校を通り越して、すぐに目的地のパン屋に着いた。自転車を止めて、
「少しここで休んで行こう」
「美味しそうなパン屋さんですね」
「そうなんだ、学校近いし、サイクリングの途中でよることがあるんだ。あっそこのサイクルラックに自転車を引っ掛けて」
俺たちはパン屋に入る。焼き立てのパンの香りが食欲を誘う。
「色々なパンがあるんですね、みんな美味しそうですね」
「色々食べたいけど、ダイエットだし、一つだけね」
唯は少し苦い顔をしてパンを選び始めた。俺はアンパンをトレイにのせた。
「もう、どれにしょうか迷ってしまいます。あっ、このブタさんのパン、かわいい!でも、ううん、どうしよう」
色々迷って、唯はブタキャラのパンをトレイに乗せた。ブタのパンはこの町のマスコットキャラクターに似ている。
レジが終わって、無料のコーヒーをもらい。
「喫茶コーナーがあるから、そこで食べよう」
「ハイ」
俺たちは椅子に座って、パンを食べ始める。
「運動するとお腹が空くよな、でも、このパンのカロリーは300kcalとして、ここまで自転車で消費したカロリーは200kcalぐらいかな?これだとせっかく運動しても痩せないよね」
唯はキョトンとした顔で話しを聞いている。
「俺は自転車で痩せた時、食べる量は変えなかった。食事を減らすのはつらいから」
「たしかに、なかなかダイエットって続かないですよね、わたしも何度か挑戦したのですが、上手くいかなくて、それでゆかりちゃんにお兄さんの話を聞いて、おねがいしたのですよ」
「だけど、俺は痩せるために自転車を始めたのではなくて、赤城山を登るために始めて、気がついたら痩せていた。もちろん、体重が減るとヒルクライムが楽になるのでカロリー計算も意識した。けど、基本は食べる量は変えなかった」
「ふーん?そうなんですね」
「だから唯がどうしたら痩せられるかよくわからない、だけど、俺が自転車で知っていることは教えるから」
「はい、それでいいです」
「あと、自分のトレーニングもあるから一緒のトレーニングは週一ぐらいでいいかな?」
「ううんと、はい、よろしくお願いします」
「とりあえず今は自転車に慣れること、そう言えば通学はどうする?」
「一応、自転車で考えてます」
「うん、それなら通学の練習も兼ねて時間がある時は今日のコースを走るのがいいかな」
「はい、入学式まで休みなので走ってみます」
それから帰りは俺が先行してスタート地点までゆっくりもどり、その日は別れた。
家に帰ると妹がニタニタ笑いながら
「どうだった。サイクリングデートは?」
「デートじゃないだろう、トレーニングに付き合っただけだろ」
「まあ、そうゆうことで」