十九話 彼女の部屋へ
月曜日、学校にいくと、なんだか凛の様子が変だ。余所余所しい感じがした。挨拶とか話しとかは普通だけど、先週のように嬉しそうではない。嫌われた?赤城ではそんな感じではなかったし、でも、一緒にお昼も食べたし、気のせいかな?
下校時間になった。凛は「さよなら」と一言だけ言って、先に帰ってしまった。あれ?と思っていると。スマホにメッセージが入った。凛からだった。
「お待ちしてますが、15分ぐらいおいて、いらしてください」
「了解」と返信して、宿題を少しだけして時間を潰してから学校をでた。
自転車で凛のアパートに行った。ドアチャイムを鳴らすと、すぐドアが開いた。小さな声で。
「入って」
中に入るとすぐに鍵をかけた。凛は俺の正面に立つと深呼吸してから、嬉しそうに微笑んだ。
「お帰りなさい、あなた。ご飯にします?お風呂に入ります。それともわたくし?」
なに?ふざけているな。でも、学校とは違う笑顔にほっとした。俺も悪ノリして。
「もちろん、おまえだよ」
凛は照れつつも目を閉じて、唇を突き出した。俺は軽く口付けした。凛は抱きついてきたので、俺も優しく抱きしめて、しばし、凛の温もりを味わった。
「なに、テンプレやってんだ」
「ふふ、どうしたらキスしてくれるか色々と考えましたが、少しふざけたほうが良いかと思いまして」
「確かに、本気だと緊張して、出来ないかもな」
「さっ、上がってください。お茶入れるから座って待っていてください」
俺は靴を脱いで凛の部屋に一週間ぶりに入る。二人掛けのソファーに座ると、用意してあったのか、すぐにお茶を持ってきた。それをテーブルに置くと俺の横に座った。あれ、なんか昨日もこんな…
「今日は学校で余所余所しい感じだったけど、どうかしたかと思った」
「ごめんなさい。あなたに話しておけばよかったけど、学校では話しにくかったので。先週は嬉しくて、あなたとイチャイチャしすぎで、少々、目立ってしまいました。学校では我慢した方がいいよと、忠告してくれた友達もいましたので、学校ではクラスメイトとして仲良くする程度にしようと思ったの」
「そう言う事だったのか、わかった、俺も気を付けるよ。とはいえ、もう学校中の噂になっているけどな」
「ええ、あなたが卒業したのとか」
凛は自分で言っておきながら顔を赤くしている。
「ところで、昨日は中倉さんのトレーニングでしたわね、どうでした?」
「ああ、料金所跡まで登ったよ」
「あそこだとゴールまでの三分の一くらいかしら、頑張ってますよね」
「5キロ痩せたってさ」
「それは凄いですわ、でも、中倉さんも妹さんもあなたと一緒の時間が長くで羨ましいですわ。わたくしももっと一緒にいたいですわ」
「そうだな、放課後だと2時間くらいだし、毎日は宿題とか勉強もしないと」
「ですわね、わたくしも火曜と木曜日は塾があるし」
「そう言えば、おまえは家には帰る日もあるのか?」
「ええ、週に一回くらいは」
「寂しくない?」
「もちろん寂しいですけれど、実家は姉と兄はもう家から出てるし、両親は仕事が忙しくて帰ってくるのは遅いから、ここと変わらないですわ」
「そうか、そうだったな」
「通学時間分、自由な時間が出来ますし、男の子を連れ込んでも大丈夫ですし」
凛はいたずらっぽく、ウインクした。
「でも、ご両親はよく一人暮らしを許してくれたな」
「わたくしの両親は放任主義なの、それにあの人達は仕事の事しか頭にないようですわ」
「そうなんだ、家は両親は近くにいるけど夜は妹と二人だけで、小さい頃、妹は寂しそうにしてたかな」
「だから、仲がいいのね。家も中学に上がる前は姉がいたから、寂しくなかったけど、中学生になって一人で寂しかったけど、あなたに出会えて嬉しかった」
「だけど、三年の夏休み、俺がエッチなことしようとしたせいで、本当にすまなかった」
「いいえ、わたくしもずっと、あの時の事を後悔していましたの。あのとき、あなたにわたくしの初めてをあげてしまえば寂しい思いをしなくて済んだのに。でも、あの時、上着を脱がされ、ブラも外され、触られて、急に怖くなって、気がついたら、あなたを叩いていました」
「まあ、それで俺も目が覚めて、やめたけど」
「今は覚悟はしていますから、大丈夫ですわ。でも、わたくしも心の準備があるので、その時はキチンと話してください」
「わかった。というか、良いの?」
「女の子が好きな人を部屋に入れるという事はそう言う事ですわ」
凛は横から俺に抱きついて、顔を俺の胸に埋めた。
「たくましくなりましたわね、前は柔らかで気持ち良かったですのに、でも、漢らしくで、うっとりしますわ」
「ありがとう、凛も前も可愛い感じだったけど綺麗になったし」
俺は凛の髪の毛から肩、腰に手を伸ばして優しく撫でた。そして、お尻を触る。
「エッチ、でも、続けて…あら?固くなって来た」
「こら、そこは触られると」
「あら、服の上からならOKなんでしょう」
俺は凛の肩を押して、逆に凛をソファーに押し付け、覆い被さった。凛はトロンとした目で俺を見つめて、目を閉じる。そして、キスした。最初は優しく、次は、凛の下唇を俺の口で挟んで、その感触を味わった。それに凛も答えてくる。だんだん、激しくなり、舌を絡ませて大人のキスになってきた。でも、息が切れてきたので、一旦、口から離れた。凛を見るとさらにトロンとしている。
息を整えて、もう一度、優しくキスして、凛から離れて、横に座った。
「ふう、やばい、ドキドキしてる、心拍数が….」
凛は俺の腕に自分の腕を絡ませて、寄り添っている。ここまでは中学時代に体験済みだ。でも、仲直りして、まだ一週間だし、今回は本能に負けない。
「なんでこんなに幸せな気分になれるのかしら。わたくし、溶けてしまいそうですわ」
しばらく、この余韻を味わおう。少なくても、落ち着いて、理性を確保するまでは。数分間、黙っていると、凛が腕を解いた。
「今日はここまでで我慢いたします。でも、まだ時間がありますので、お話しをしましょう」
「わかった。話しは変わるけど、もうすぐゴールデンウィークだな。凛は家族でどこか行くのか?」
「いいえ、両親はハワイ旅行ですわ。わたくしたち学生は学校を幾日も休まないといけないので、わたくしは何の予定もありませんわ」
「そうか、ウチは普通に仕事だし。そうだ、二人でサイクリングしないか」
「いいわよ、どこがいいかしら?」
「渋峠って、知っている」
「ええ、ヒルクライマーの聖地ですわね。でも、遠くないかしら?」
「確かに、ここからだと往復180キロ、平均時速20キロだと9時間、休憩を二時間とすれば11時間、朝、五時に出発すれば、四時には帰って来れる」
「もしかして、計画していました?すらすら話していましたし」
「うん、ずっと行ってみたくて、凛と仲直りする前から考えていたんだ」
「わたくしはそれほど長距離は走ったことはありませんが、最高で120キロぐらい利根川のサイクリングロードででしたわ。貴方は?」
「俺は160キロ、獲得標高2500メートル、赤城登ったあとに榛名を登ったんだ」
「それなら渋峠も大丈夫ですわね。私はどうかしら、赤城しか登ったことが無いですし」
「まあ、駄目なら輪行で帰る手もあるし、家の親は疲れるとよく電車で帰って来るよ」
「そうですわね、家もお祖父様の会社が持っている。リゾートマンションが草津にありますから、万が一はそこに泊まってもいいですわ」
「凛、それはまずく無いか?」
「ですから万が一ですわ。それに、わたくしはOKですから」
凛はいたずらっぽく微笑んだ。
「それはともかく、一緒に行くか?」
「はい、あなたについて行きます」
「じゃあ、後で詳細の計画を立てよう」
その後、俺と凛はゴールデンウィークの計画や近況を話した。凛は前から続けている趣味をサークル活動として続けているそうだ。今度、見せてもらう約束をして帰る事にした。
部屋を出る時、先週はおでこだったが今日はハグしながら唇にキスして、部屋を出た。
暗いサイクリングロードを走しりながら、凛の感触を思い出して幸せな気分に浸った。
家に帰ると妹が機嫌悪そうに
「にいちゃん、ご飯は用意したけど、今日は登坂先輩のところで食べ来るかと思った」
「その時は連絡するって、言っただろう」
「じゃあ、一緒に食べる?それともお風呂にはいる」
「汗流したいからサッと風呂入ってくるよ」
「わかった。お風呂は沸いてるから」
お腹も空いたが、さっぱりしたかったので風呂に入った。ざっと洗って、湯船を使っていると、脱衣所に妹がやってきた。
「にいちゃん、洗濯していいかな」
「ああ、ありがとう」
妹は洗濯物をガサゴソして、洗濯機に入れいるようだ。
「にいちゃん、パンツなんか変なんだけど」
妹は浴室のドアを少し開いて、俺のパンツを見せた。
「これはもしかして、我慢なんとかというやつでしょ。登坂先輩と何してたのかな?」
「だから我慢して、キスまでだよ」
「ふーん、キスはしたんだ。良かったね」
妹はバシャんとドアを閉めて、パンツを洗濯機に放り込んでスイッチを入れてから脱衣所から出ていった。
風呂から上がって、リビングのいくと食事の用意が出来ていた。
「先に食べても、良かったのに」
「一人で食べるのはつまらないし」
「ありがとう。一緒に食べよう。いただきます」
「いただきます」
食後、一緒に食器を洗って、いつものように二人で並んでテレビを見た。いつもより、くっついて来たので俺がいない間は寂しかったのだろう。
リアル世界では、あと三日で2023赤城山ヒルクライムの本番だ。どうなる事やら、ワクワクドキドキ




