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十八話 幼馴染とヒルクライム

 日曜日、今日は幼馴染の唯のトレーニングに付き合う日だ。二人で走るのは久しぶりだ。いつものようにサイクリングロードのスタート地点で待ち合わせしてた。待ち合わせ場所に行くと唯はいつもと同じように微笑んで俺を待っていた。サイクリングロードは俺が先行して走った。

 今日は昨日走った赤城山ヒルクライムのコースを唯が無理なく登れそうなところまで登ろうと考えている。具体的には、前回は畜産試験場までだったので、料金所跡ぐらいかな?赤城神社まで登れたのだから大丈夫だろう。


 サイクリングロードを抜けて、赤城山に向かう県道4号線からは、唯を前に出して様子を見ることにした。

 後ろから唯を見て、少し体がスッキリしてきた様に見えた。かなり頑張っているようだ。

 畜産試験場の交差点で休憩することにした。自転車から降りて。

「調子はどうかな」

「全然、大丈夫です」

「そうだな、息もそれほど上がってないし、いい感じだね」

「なんだか最近は調子が良くて」

「そう言えば、少し痩せた?」

「うふふ、分かりましたか。5キロも軽くなったんですよ!」

「それは凄い、無理してない?」

「いいえ、ご飯の量は変えてませんけど、お菓子は少し我慢してます」

「運動することで体重が減るし、筋力も付くから、気持ちよく走れるようになるんだ」

「そうですね、実は最初は苦しくて、辛かったけど、だんだん気持ち良くなって来ました」

「そうなんだ、ヒルクライムは慣れるまでは辛く苦しい、だから、続かない人が多いけどそれを乗り越えると楽しくてやめられなくなるんだと思う」

「もっと登って、痩せればもっと気持ち良くなるんでしょうか?」

「そうなんだけど、最初はぐんと体重と軽くなるし、速くなるんだけど、段々伸びる量が減ってくるんだ」

「なんか不吉な話しですね」

「だから、そうならないようにトレーニング内容をかえるんだ。唯もそろそろ次のステップに進んだほうがいいかな」

「よろしくお願いします」

「もちろん。じゃ、休憩終わりでまた登るか、今度は俺の後を付いてきて」

「はい」


 俺は唯のペースに合わせて、時速10キロぐらいで走る事にした。俺は畜産試験場から料金所跡までの区間は時速16キロを目安にしている。タイムは12、3分、距離は3キロぐらい。

 昨日、登坂と登ったように少しずつペースをあげてみた。途中の信号付近で離れ始めたのでそこでペースアップをやめて、唯が付いてこれらる限界を探った。

 料金所跡直前で勾配がキツくなっている所は少し意地悪く、速度を上げて走ってみた。流石に付いてはこれなかった。坂が終わり、ベンチがあるところで止まって、唯の様子を確認した。息はハアハア、汗もかいて、キツそうだ。

「お兄さん、速いよ!」

「ハハ、ごめん、ほらベンチで休もう」

俺はベンチ脇に自転車を止めて、ベンチに座った。続いて唯もベンチに座ろとしたが、座る直前によろけて、俺の方に倒れ込んできた。ガチンとヘルメットがぶつかった。

「ご、ごめんなさい。ハアハア、でも、お兄さんも悪いんですよ。ハアハア、私、置いて行かれるかと思って、必死に追いかけたのですよ」

俺は優しく唯を起こして。

「ま、兎に角、ヘルメットを脱いで休もう」

 俺たちはヘルメットを脱いだ。唯は息を落ち着かせている。俺に置いて行かれまいと、必死になってペダルを踏んだのか、少し悪いことしたかな?

「落ち着いた?怒ってる?」

「はい、ちょっと、」

本気で怒っている感じではないけれど。

「どうしたら許して貰えるかな」

「うーん、考えておきます」


 最近、唯のキャラが変わってきた様な気がする。久しぶりにあってから、二ヶ月弱になるので、最初は猫をかぶっていたのだろうか?いや、昔から、大人しくて目立たない感じだったような気がする。最近は積極的で妹の感じに近くなっている様な気がする。


「今日は帰りに近藤輪業に寄っていく予定なんだけど」

「あ、私も一緒に行っていいですか」

「構わないけど、時間は大丈夫?」

「全然、大丈夫です。今日の予定はこれだけです」

「わかった。じゃあ、真っ直ぐ下るのもつまらないから、少し遠回りして下ろうか」

「もう登らないんですか?」

「少しは登るけど、基本は降りで」

「はい、分かりました。付いて行きますけど、置いて行かないで下さいね」

「ハハ、もちろん」


そうして、俺と唯は下り始めた。下りのルートは最初の信号で左に曲がって、空っ風街道を総合グラウンド方面に向かう。公園までは下りぎみで軽快に走れる。総合グラウンドの南には、古い電車が置いてある。たまに手入れをしているらしいが、周りは草ぼうぼうだし、誰か電車好きの人の趣味なのだろうか?

 駐車場脇を過ぎると急勾配になるので。

「唯、この先はちょっと急だから、ギヤを一番軽くして!」

「はい」

俺は唯に合わせて、歩くぐらいのスピードで登る。この坂は長くはないが、意外とキツく青年の家入り口まで続いている。登り切ってから、唯の様子を確認した。

「お兄さん、急でしたよ!もう登らないと思ったのに!」

「あと、一回、登れば下りだから、頑張れ!」

「本当ですか?頑張って登りますから、ご褒美くださいね!」

「分かったから、頑張れ!」


一旦、下りになったがすぐに登りになった。ここも意外とキツい。ここを登って、今は動物の霊園だけど昔は芝スキー場だった所を過ぎれば下りだ。ゆっくりだけど、唯もなんとか登り切った。本当は赤城神社の近くまでと思ったが、今日はここでやめておくか。

「よく頑張った!後は下るだけだから」

「ふうー、ご褒美、いっぱいくださいね」

「わかったけど、あまり高いのは勘弁してな」

 信号を南に曲がって、ひたすら下り、市内に入り、近藤輪業に到着した。


 ちょうど開店時間だった。自転車を店の前にあるバイクラックに引っ掛けて、店内に入った。

「いらっしゃい」

と店主の近藤さんが出迎えてくれた。

「話は菜々から聞いているよ。赤城山ヒルクライムの学校対抗のチームのメンバーになったんだな。頑張れよ」

「はい」

「菜々のチームだから、全面的にサポートするから、と言いたいけど、ほかの学校のお客さんもいるので、少しだけな」

 そこへ、先生が現れた。

「おっはよう!可愛い私の生徒諸君!」

「先生、おはよう御座います」

「なんだ、高梨君はまた女の子と一緒か、モテモテだな」

「先生、違います。高梨先輩は私のトレーニングに付き合ってもらっているだけです」

「ああ、そうだ。今日、来てもらったのは、これを君の時に付けるためだ」

 先生はダンボール箱から、クランクを取り出した。

「テッテレー、パワーメーター」

「先生、それは?」

「やっぱり、効率的にトレーニングするなら、パワーメーターがあった方がいい。ちなみに私はセンサー類は付けないのが好きだ。それはさておき、自転車を持ってきなさい。唯ちゃんも点検するから持ってきて」

「分かりました。でもそれは高いんじゃ」

「安心してくれ、これはお客さんが新しい物を買って、要らなくなったのをウチで下取りした中古だから」

「でも、壊したら」

「大丈夫、その時は体で払ってもらうから。ま、それは冗談だが」


俺たちは自転車を先生と店員さんにわたした。先生たちは作業場に行ってしまったので、店内をぶらぶらした。唯はウェアに興味があるようだ。

 しばらくして、先生が唯の自転車を持ってきた。

「唯ちゃん、軽くメンテしといたから」

「ありがとうございます。先生、わたし、そろそろ自転車用のウェアを買おうと思っているのですが、私、太めだから」

「そうかなあ?それほどでもないと思うけど。それに、結構伸びるから、痩せもダボダボにはならないぞ。こちらなんて、いかがでしょう。お嬢様」

「可愛いですね」

「よろしければご試着してみませんか?」

「ええ、どうぞ」

「恥ずかしいから、先輩はあっちに行ってください」

 

 仕方なく、俺は作業場に向かう。パワーメーター付きクランクとの組み換え作業は終わっていた。店員さんはガチャガチャと変速しながらディレイラー調整をしていた。

 「よし!作業終了、高梨君、サイコンとパワーメーターのペアリングと使い方教えるから」

店員さんの名前は森本さん、元はロードレースのプロで赤城山も一時間ちょいで登れる人で若手選手の指導もしている。俺とレベルが違うのでお店主催の練習会では見かけた事はあるが、一緒に走った事は無い。

 森本さんはパワーメーターの使い方を教えてくれた。サイコンの表示はワットと左右バランスなどが表示出来るが普通はワットだけを気にすれば良いと言っていた。あと、パワーメーターを使ったトレーニングについての簡単な資料ももらった。


 唯のところへ戻ると唯は袋を抱いて嬉しそうにしていた。

「うふっ、サイクルウエア、買っちゃった」

「お買い上げ、ありがとうございました。お嬢様。高梨君、この袋は背負えるから、持っていってあげてね」

 

 俺はパワーメーター、唯はウェアを買って、ルンルン気分でサイクリングロードを走る。赤城で試してみたいけど、昨日、今日と走ったので少し休みたい。

 帰るとお昼だなと思っていると。

「お兄さん、今日はウチでお昼食べていってくださいね♪ゆかりちゃんの許可もとってありますから、大丈夫ですよ」

「了解、では、遠慮なく、ゴチになります」

 

 俺は唯の家に上がり込んだ。今日も唯のお母さんは不在だ。やっぱり、寂しいだろうな。だから、一緒にいたいのだろう。今日はもう休むつもりだったのでゆっくりさせてもらうか。


「私、汗かいたからシャワー浴びたいけど、お兄さんも汗かいたでしょう?よかったら、浴びますか?」

「そうしたいけど、着替えがないから」

「私のジャージでよければ、私、デブだから、短いけど着れるはずです」

確かに、汗でベタついたままだと気持ち悪いし、家に帰ると動くのがいやになるし。

「わかった。じぁあ、お言葉に甘えて、借りるよ」

唯は嬉しそうに、微笑んで。

「では、お先どうぞ。私はジャージとタオルを準備しますね」


俺は浴室に向かい、サイクルウエアを脱いでシャワーを浴びた。そう言えば、昔、ゆかりと唯と遊んで泥だらけになって、三人で風呂に入ったのを思いだした。あの頃は幼かったので、何も感じなかったけど、女の子の家でシャワー浴びて、しかも、二人だけだし、これって、少しまずくないか?

 でも、俺には登坂がいるし、唯も好きな人がいるし、多分、俺の事は兄弟みたいに思っているのだろう。疾しい事は考えてはいけない。

 ガチャンと脱衣所のドアがあいて、

「タオルとジャージ置いておきますね」

扉ごしに唯の姿を見た。もちろん浴室のドアガラスは凹凸があって、はっきりとは見えないけど、俺は全裸なんだぞ。やっぱり、異性して見てないんだろう。

 手短にシャワー浴びて、唯が用意したタオルで体をふいた。「あれ?俺のサイクルウエアがない?」唯が片付けてたのか?兎に角、唯のジャージを着る。下着はないので直接でなんか変な感じだ。


 リビングに戻ると。

「私も、ささっと、シャワー浴びてきますね」

 俺はソファーに座って、店員の森本さんから貰った資料に目を通した。資料には、


1.FTP測定をしよう。

2.ローラーとパワーメーターを使ったトレーニングメニュー、SST走/10分走/インターバルトレーニングなど

3.実走での利用方法

4.一日のトレーニング量の目安はTSSを利用しよう。

など


 なんか、よく分からない項目もあるけど、色々試してみたい。

 リビングのドアが開いて、唯が入ってきた。さっき買ったと思われるサイクルウエアを着ている。恥ずかしいのか胸は腕で隠している。

「どうですか?可笑しくないですか」

 俺はソファーから立ち上がり唯の姿を確認する。確かに痩せはいない、標準的な体型よりは太め、中学の頃の登坂ぐらいの感じだ。胸は隠しているのでよくわからないけど。

「うん、可笑しくないよ。やっぱり、少しスッキリしてきたね」

唯は間近まできて、恥ずかしそうに腕を開いて隠していた胸を露わににした。それを見た俺は危うく理性を失いかけた。確かに唯は巨乳だし、ピッタリした。サイクルウエアはそれがよくわかる。でも。

「ゆ、唯ちゃん?あの、女の子はジャージの下にはスポーツブラ付けないと」

「えっ、サイクルウエアの下には下着は着ないって、先生が…」

唯は自分の胸を見て、ポチっとしている事に気がついた。そして、なぜか俺に抱きついて。

「ごめんなさい、お見苦しい姿を見せてしまって」

いいえ、ご馳走様ですとは、言えなかった。

「だ、大丈夫だよ。でも、よく自転車、頑張ったね。よしよし」

と俺は優しくハグして、頭を撫でた。

「恥ずかしい、でも、ありがとうございます。でも、まだまだですから、よろしくお願いします」

と言って、唯は俺の胸に顔を擦り寄せた。そして、少しだけ間をおいて。

「ごめんなさい。着替え来ますので目を瞑ってください」


挿絵(By みてみん)

俺は目を閉じて、唯が離れて、ドアが閉まるのを確認して、目を開いた。「やばかった」ソファーに座って、息を整えよう、心臓もバクバク、心拍数は180を超えているんじゃ?深呼吸、深呼吸、平常心、でも、柔らかだったな。胸の感触は最高だし、ああ、あの胸に顔を埋めたい。じゃなくて!俺には彼女がいるんだぞ!唯は幼馴染で妹と同じなんだ。

 そうだパワーメーターを使ったトレーニングの資料でも読んで、煩悩を払おう。


 しばらくして、唯が戻ってきた。部屋着なんだか?ピンクの可愛らしいジャージに短パン姿だ。俺もだいぶ落ち着いてきた。

「安心してください。ちゃんと付けてますよ」

唯は悪戯っぽく、ジャージのファスナーを少し下ろして、スポーツブラをチラリ見せた。

「じゃあ、お昼の支度しますね。テレビ付けて、サブスクのアニメでも見てください」

「わかった。遠慮なく見させてもらうよ」


唯はリビングの隣りのキッチンに行った。リビングとキッチンは仕切りがあるが様子は見ることができる。俺はテレビを付けて、サブスクの確認をしたが、どうせ見るなら、二人で見たいので、動画配信サイトでパワーメーターを使ったトレーニングについての動画を見た。

 調理が進み、だんだん、美味しそうな匂いが漂ってきた。


 やがて、料理が終わって、唯が料理をトレイに乗せて運んできた。そして、それを目の前のテーブルに置いた。ケチャップでハートが描いてあるオムライスだった。

「どうぞ召し上がれ」

「いただきます」

唯は俺の隣りに座って、食べ始めた。

「いかがですか?」

「うん美味しいよ。卵はふわトロだし、ケチャップご飯も鳥肉、玉ねぎ、マッシュルームかな?色々入っているし、サラダもあるし、とても短時間で作ったとは思えないよ」

「うふふ、ありがとうございます。誰かと一緒に食べるのは楽しいです。ゆっくり、味わってくださいね」

「おお、そうするよ。それにしても、うますぎる。唯と結婚する人は食べ過ぎて、太っちゃうな」

唯は恥ずかしそうに顔を赤くしている。

「いっぱい運動すればいいのですよ」

「うん、そうだな」

唯は料理を食べているととても幸せな気分になる。胃袋を捕まれるとはこの事なのかと思った。


 至福の食事が終わった。

「ご馳走様、美味しかったよ」

「ありがとうございます。じゃあ、片付けてお茶にしますね」

唯は食器をトレイに載せて、キッチンに行った。俺は満足感でいっぱいだ。


 まもなく、唯がコーヒーを持って戻って来た。テーブルにそれを置くと俺の隣りに座った。

「今日はお疲れ様でした」

「いや、少し無理させごめん。そうだ、ご褒美は何にしよう。お昼ももらったし」

「そうですね、私はお兄さんと一緒にいられるだけでも充分です」

「でも、それだけじゃ、申し訳ないし」

「では、ゆかりちゃんみたいに甘えさせてください」

唯は俺の横に密着してきた。

「えーと、唯はゆかりがどんな風に甘えてるか知ってるの?」

「ええ、だいたいは、ゆかりちゃんは良くお兄さんの話をしているし、ウチに遊びに来たときに、こんな感じだよて、実際にやってくれたし」

「そ、そうなんだ、でも、これじゃあ、コーヒー飲めないから」

「 あら、ごめんなさい」


ふう、ゆかりはどんな風に言っているのだろう。兎に角、コーヒーを飲むか。

「そう言えば、登坂先輩はお兄さんの彼女さんなんですよね」

「ああ、そうだよ。中学からだけど、この間まで、少しすれ違っていて、最近、また、仲よくなったんだ」

「恋人同士って、どんな感じのお付き合いなんですか」

「うん、だから、今はまだ、二人だけで話す機会があんまり無くて、前は良く、話ししたり、イベント行ったりしたけど」

「イベントって?」

「ああ、コミパって知っている?」

「お台場で開催するイベントですね」

「そう、漫画とかアニメとかが好きな人が集まるやつ」

そう言えば、登坂と仲良くなるきっかけは二人でコミパに行ったことだった。懐かしい。

 

「そうなんですね、私はもっと色々しているかと思ったいました。でも、キスとかはするんでしょ」

俺はブッと飲んでいたコーヒーを吹きしそうになった。

「そ、そんな事は…」

「しないのですか?」

「えーと、中学の時はしたけど…」

「へー、中学の時はチューしたんですね。それで今は?」

俺は正直に

「仲直りしたばかりなので、おでこにしただけだよ」

「ふーん、そうなんですね。そう言えば昔、お兄さんのほっぺにチューしたの覚えてます?」

「でも、あれは子供だったし」

「でも、ゆかりちゃんは今でもたまにするって言ってましたよ」

「だから、家族のキスだって」

「私は?家族じゃないけど、妹みたいに思って良いんでしょう」

「まあ、そうだけど…」

「じゃあ、今日のご褒美にほっぺにチューしてください」

唯はメガネを外し、目を閉じ、ほっぺにを突き出した」


俺は少し抵抗を感じたが、優しく唯のほっぺにキスをした。

「ありがとうございます。お返しです」

唯は俺のほっぺたにキスをした。柔らかい。

「お兄さんのほっぺはお髭があるんですね」

「朝、剃ったけど、少しは伸びるから」

「えへへ、お兄さんにキスしちゃた。良いなぁ。ゆかりちゃんはいつもお兄さんと一緒で、私、ずっと羨ましかったんですよ」

「そうかなあ?いつも怒られているけど」

「そうですかね、ゆかりちゃんはお兄さんのことが大好きなんですよ。お兄さんも好きなんでしょ」

「まあ、嫌いじゃないないし、家族だから大切に思っているよ」

「私は?」

「唯もだよ」

「ありがとうございます。今日は私のこと、ゆかりちゃんと同じくらいに可愛がってくださいね。あっ、テレビ見ます?それともゲームしますか?」

「そうだな、アニメがいいかな、見たいのがあるかな?」


 俺はいつも家で妹といるような感じで唯とアニメを見た。お腹がいっぱいだし少し眠くなって来たところで「ピンポン」とチャイムが鳴った。

 唯は立ち上がって

「あっ来たかな?ちょっと待ってくださいね」

唯はパタパタと玄関に行った。玄関のドアが開いて、聞き慣れた声が聞こえた。妹だった。妹は中に入ってきた。


「にいちゃん、着替え持ってきたよ」

俺は妹から着替えが入っていると思われる袋を受け取った。

「唯ちゃん、にいちゃんに変なことされなかった?」

「大丈夫ですよ。優しくしてくれましたよ」

「なら良いけど、にいちゃんは早く着替えてきて」


 俺は着替えを持って脱衣所で着替えて、リビングに戻ると、ゆかりと唯がピッタリくっついてソファーに座っていた。俺に気がつくと、慌てて離れた。


「に、にいちゃん、着替え、早かったね」

「あっ!もう、おやつの時間ですね。お茶を用意しますから、座って待ってくださいね」


俺は違和感を感じたが、ソファーの真ん中、妹の隣に座った。

「き、今日はどこまで登ったの」

「料金所跡まで」

「そうなんだ、楽しかった?」

「まあな」

「唯ちゃんの作ったお昼は美味しかった?」

「うん、美味しかった」


 唯がお茶とお菓子を戻ってきた。テーブルにそれを置いて、俺の隣りに座った。つまり、二人に挟まれた。他にもソファーがあるのに。

「お茶をどうぞ、お菓子も摘んでください」

「唯ちゃん、ありがとね」

「ううん、私こそ、お兄さんに甘えさせてもらって」

「こんなので良ければいつでも」

「でも、お兄さんは登坂先輩と一緒にいたいだろうし」

「大丈夫だよね、にいちゃん」

「ああ、確かに登坂も大事だけど、唯のダイエットに付き会うと決めたし、俺も楽しいし」

「ありがとう、にいちゃん」

ゆかりは俺のほっぺにキスした。


その後、夕方まで三人でアニメを見でゆかりと家に帰った。


 なんか、激動の一週間だった。明日は凛の部屋に行く日だ。

もうすぐ2023年の赤城山ヒルクライム大会だ。今年からコースが変わって、計測区間が変わったので一時間半切れるかな?

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