十三話 チーム結成
週明けの水曜日、学校の掲示板に赤城山ヒルクライム、地元高校チーム戦の選手選抜結果が掲示されていた。メンバーは、結城、登坂、唯、ゆかりと俺の五人だった。男子は二人だけ、去年の大会成績からすれば、納得だけど、男子が病気や怪我などで参加が出来ないと順位に影響がでる。逆に女子が完走できればボーナスがあるので有利だ。そんな作戦なんだろか、俺と結城の他にも一人くらい男子がいた方が安全だと思うが。だいたい、唯とゆかりが完走できるか疑問だ。
教室に行くと結城はまだ席には座ってなかったが、登坂は座っていた。挨拶をして、荷物を置いたあと、振り向いて。
「見たか?掲示板」
「見ましたわよ。三人とも選ばれてましたわ、でも、一年の高梨ゆかりさんて、あなたの妹さん?」
「ああ、そう妹、そして、中倉 唯は妹の親友で俺の幼なじみ、最近、ロードバイクに乗り始めたんだ」
「そう、妹さんとは相変わらず仲良さそうね」
「そんなことないけど、完走できるか心配だよ。そう言えば登坂は完走はできそう?」
そう言うと、俺のにらんで。
「あら、わたくし、赤城で何度かすれ違いましたわよ」
「あれ?気が付かなかった」
「そうね、アイウェアにマスク、ロードバイクはあなたが知っているのと違いますし、気が付かなくても仕方ないわね」
そこへ結城がやってきた。
「おいっす、選抜決まったな、ところで高梨ゆかりって、おまえの妹か?」
「ああ、そうだが」
「やっぱり、なんか可愛い子が入ってきたって部活で話題になってたぞ、今度、紹介しろよな」
「だめだ、あれ俺んだから」
珍しく、ぷっと登坂が小さく吹いていた。こいつ冷たそうだけどたまの笑顔が可愛い。結城は。
「このシンコンが」
「それはそうとチームについての説明が金曜日の放課後、校長室に集合だってさ」
「なんか緊張すんな」
チームのメンバーは決まったが、結城がゆかりに手を出さないか心配だ。それにしても、もう、ゆかりは話題になっているのか、兄としては心配だ。唯は話題にはなっていないのだろうか?
学校が終わり、家に帰ると、ゆかりが腕を組んで待ち構えていた。俺、なんか悪いことした?
「にいちゃん、なんで登坂さんがチーム、メンバーなの?」
「いや、本人の希望だし」
「でも、にいちゃん大丈夫なの?」
「何が?」
「だって、登坂さんって、元カノでしょ!」
「うーん、まあ、中学のとき付き合っていたのは事実なんだけど、はっきり別れた訳でもないんだ」
「どうゆうこと?」
「まあ、受験だし、しばらく、距離を置こうとゆうことで、でも、自然消滅みたいな、俺にもよくわからないんだ」
本当は俺が嫌われるような事をしたし、クラスが一緒になる前までは無視されたし、振られたかもと思っていた。
「で、また付き合うの?」
「えっ?それは考えてなかった。ただ席が近いし、仲良くしたいとは思うけど」
「まあ、にいちゃんに彼女ができても恋愛は自由だから仕方ないけど、また寂しそうなにいちゃんは見たくないから」
こいつ、俺のこと心配してくれるんだな、なんか、ありがたく感じたので、頭を撫でて。
「ありがとうな」
「もう、にいちゃんは」
と言って、抱きついてきた。
そして、金曜日の放課後、俺と登坂、結城の三人で校長室に向かった。校長室のドアを俺がノックして。
「失礼します」
と言うと、中から女性の声で。
「どうぞと」
声が聞こえたのでドア開け、礼をして頭を上げると、すでに、唯と妹がソファーに座っていた。俺は「よう」という感じで手を振ると、妹の視線は俺ではなく後ろにいた登坂の方に向いていて、少し睨みつけているような感じがした。唯は下を向いて、硬くなっている。俺は冷や汗を感じた。気まずい雰囲気だが更に周りを見渡すと校長と満面の笑みを浮かべて立っている近藤先生がいた。先生はパンと手を叩いて。
「さあ、座って、座って」
俺たち三人は、唯とゆかりの対面に座り、校長は校長席の前のソファー、近藤先生はその横に折り畳み椅子に座った。そして、校長が。
「放課後の貴重な時間に集まってくれて、ありがとう。早速だが、君たちは選手に選ばれました。おめでとう。安全に配慮して、頑張ってください。それと、ここにいる近藤先生が君たちの指導をすることなった。それでは、近藤先生から一言お願いします」
先生は立ち上がって、
「えー、私がチーム戦の指導をすることになった近藤です。よろしくおねがいします。私もロードバイクに乗っていますし、大会にも参加してますので、チームの監督に選ばれました。知っている顔もありますが、まずは、自己紹介と大会に向けてての意気込みを聞かせてください、最初は高梨君から順にどうぞ」
そう言って、また、椅子に座った。俺も立ち上がって。
「二年、高梨浩之です。よろしくお願いします。それほど速くはありませんが昨年、大会には初めて参加しました。今年も参加予定だったので参加を志願しました。全員、顔馴染みのなのでチーム仲良く、頑張りたいと思います」
次は、隣りに座っていた登坂で。
「高梨君と同じクラスの登坂凛です。よろしくお願いいたします。ロードバイクに乗り始めたのは中学二年の時ですが、よく乗るようになったのは高校に入った頃からです。大会には参加したことはありませんが赤城は何度も登った事がありますので、わたくしも参加を考えていました。チームメンバーの皆さんとは、この機会に仲良くなりたいと思います」
登坂はこの気まずい雰囲気を打開したいのだろう。妹は怖い目で登坂を見つめて話を聞いていた。その次は結城で。
「同じく、二年の結城数馬です。よろしく、去年の大会では高梨に負けたので、今年は絶対負けないように頑張りたいです」
なんかその場の雰囲気が少し和んだ。その次は反対側に座っていた。妹のゆかりで。
「一年の高梨ゆかりです。よろしくお願いします。ここにいる高梨浩之の妹です。ロードバイクは最近乗り始めたばかりですが、中学生の時は陸上で長距離やってましたので体力には自信あります」
最後が唯で少し緊張しているようだ。
「一年の中倉唯です。よろしくお願いします。ロードバイクは最近、始めたばかりです。ここにいる高梨さんとは幼なじみでサイクリングに付き合ってもらってます。大会は完走できるか不安ですが目標を持った方がいいと思って、申し込みました」
全員の自己紹介が終わったところで近藤先生が。
「それで活動について説明します。このチームは部活とは違います。指導はしますが基本的には自主活動です。ですが、水曜日の放課後、ミーティングを行います。あと、部室が用意されますのでトレーニングやロードバイクの保管に活用してください。あと連絡先を教えてもらいたいのですが、都合が悪い人はいますか?」
と言って、メンバーの確認をとったがいないようだった。
「では、解散する前に教えて下さい、詳しいことはミーティングで話しましょう。私からは以上です。何か質問はありますか?」
と、聞かれたので俺が。
「どうして、このメンバーになったのですか?」
と、聞くと。
「申し込みがあったのはここにいる五人だけだったからです。他には…いないようなので、連絡先を交換して終わりにします」
俺たちは、連絡先を交換した。もっとも、近藤先生以外はみんな登録してあった。そう言えば登坂には着信拒否されていたような気がしたが、確認で送ったメッセージが返ってきたので、いつのまにか解除されていたようだ。
連絡先の確認が終わり解散となった。退室は俺が最後でドア閉めるときに近藤先生が俺にウインクしていた。大丈夫だろうか俺。
今日に荷物を取りに戻る途中、結城が。
「お前の妹、噂通り可愛いな、でも、なんか、登坂の方を見て怖い顔してなかったか」
「うーん、そうだったか?」
と、誤魔化すと、登坂が。
「わたくし、高梨君の妹さんに嫌われてるのかしら、どうしたら仲良くなれるのでしょうか?」
「そうだな、せっかく同じチームのメンバーになったんだから」
俺たちは教室でどうしたら仲良くなれるのか話しあった。また、唯とゆかりとの関係やこれまでのサイクリングやヒルクライムのトレーニングについて説明した。
結局、「一緒に汗かけば仲良くなるんじゃね」という結城の案が採用されたが、登坂が。
「坂ばっかりはだめよ、妹さん、ロードバイクを始めたばかりでしょ!いきなり赤城神社まで登れたのは凄いけど、いきなりはダメ」
たしかに、成り行きだったが、ゆかりはもっと平坦を走らせるべきだ。次回はサイクリングロード主体にするか、最後に登坂が。
「高梨君、できれば次のトレーニングに私も混ぜてもらえないかしら」
「うん、妹に聞いてみる」
「次のトレーニングはいつかしら」
「次の日曜日だけど」
「分かりましたわ、わたくしは大丈夫だけど、結城君は?」
「わりい、行きたいけど、都合が悪い」
「わかった。妹たちと相談して、あとで連絡する」
と言うことになった。上手くいけばいいけど。




