第七話 妖魔
長い長い通りには、特に何もない。
誰が解決したのかはよく分からないが、
昔、妖魔が出た場所だからだ。
皆がここで、
楽しい思いをすることはなかった証のように黙る。
なぜか、そのような雰囲気を、未だ、おびている。
土の様子を診ているサカエルが、「願ってくれ」とまた言った。
「ここらへんが桜並木になればいいのになぁ」と思わずぼやいた。
サカエルは喜んで、拓けた道の両端に、桜並木を生み出した。
さすがに感嘆の声が出た。
「千本、だ」
「千本桜並木道?」
「片方、千本。桜蛍も群れでいずれ来るよ」
「二千本桜並木道?」
「そう」
「さくらんぼの季節が楽しみだな」
桜蛍とは、なぜか桜の木を好む習性のある蛍のことだ。
群れで移動しているらしいが、その様子を見た者はいないと聞く。
桜蛍が夜に群れで光ると、幻想的だろうな、と思う。
サカエルが嬉しそうにしているので、
そろそろ違和感みたいなものがなくなればいい。
その『通りの妖魔』ではないか、と、
サカエルについてうわさがたっている。
そしてなんの信憑性なのか知れないが
『額に角を持つ私』に関して、
何かあれば退治してくれと依頼があったのだ。
しばらく共に旅をしてみて、サカエルが愛らしい人格だと思っている。
内心まさかな、とか、もしかして、と思うことがある。
今はそれについて書かない。
違ったら自分的に大変だからだ。
額の角が言っている。
「まだ、言うな。書くな、と」