第参話 寄り道したら幸運が訪れた
[ 結羽:ゆいばね 」
匙的な言い方だ。
昔昔のことだが、初代王には、その背に羽根があったと言ふ。
その親愛なる羽は、もげてしまう。
羽からの信頼を失ったからである。
それを”結った”のが結羽。
初代王とその一族はそれから神の一部になり、北の地にいるとかいう話がある。
なのでまだ未完成の世界地図の北の部分は、見切れている。
神話や逸話化していてるが、結羽は表現に関する匙的存在だ。
表現者に対して、結羽の割合というものは、天がまだ定めていない。
一説に、結羽の数は、「そんなにはいない」という単位らしい。
寄り道したら幸運が訪れた
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まず訪れたのが、木工師の仕事現場である。
前々からうわさを聞いていて、たずねたい所を寄り道する。
物書きだと言うと、作業場を見せてもらった。
興味をひかれたのが、青い板。
いわく、なんらかの条件をそろえた木に起こる色合い。
真っ青、である。
その真っ青が混じった木製の蝶は、まるで本物に魅えた。
標本は好きではないと言った幼馴染のために、ひとつ買っておく。
5万シューイーズ。
そう言えば書いておくのを忘れていた。
幼馴染の名を、『蝶:チョウ』と言う。