第二十八話 天空の巨人苺
もうすぐ宿だと思える旅路、
角パワーが発動し、行く道をそれて野生の苺を見つける。
かなりおおぶりだ。
巨大とも呼べるかもしれないその、一粒ひとかかえある赤苺。
持ち上げてひとつ摘んでみて、香りをかぐとかぐわしい。
もしかしたら伝説の、『巨人苺』かもしれない。
旅人の性で食べてみたくなった。
ナイフで少しそいで口に入れると、やはり苺、味もいい。
毒気もなさそうだ。
その苺ともうひとつぶをもいで、宿に持っていた。
喜んだ宿の主人が、「巨人苺かもしれないっ、はーみそみ~」と言う。
その場にいた初対面の旅人が、「み、なんだ、うちでは、り、なのに」と。
「はりそみ」か「はみそみ」、どちらでもいいことになっている。
「巨人苺ってなに?」とその旅人に聞かれた。
巨人苺は、童話の中に出て来たその作品の作者が旅路中偶然見つけた
大きな野生の苺の名前、もしくは愛称だ。
その作品では、巨人が育てていることになっている。
実在論などがあるらしいから、正式名はまだないのかもしれない。
仮に名前や愛称があるんだとしたら、「天空の巨人苺」だ。
「巨大苺」はブランドとして、もう、あるから。
宿にひとつぶあげたら、宿代が無料になった。
ナイフで少しそいだほうは、キッチンをかりてジャムにした。
少し桃の香りに似た風味がする。
荷は多少重くなるが、大きめの瓶に詰めた。