第十弐話 トウホウ見聞録
私は大きなハート型の天然地形に沿って、
最寄りの小ぶりなハート型地形『トウホウ』を
目指して、現在旅をしている。
トウホウと言うのは、「当方」のこと。
昔その方面に住んでいたひとたちの一人称から来ている。
なぜ一人称が「当方」だったのか、当て字で「塔峰」になったのかは謎だ。
近くに山はない。
パラリーナスアンジー・オオカブトキモルフォアゲハ。
伝説の蝶の羽を持つカブトムシ。
もしくは、カブトムシの角を持つ蝶。
姿を見たことはないが、
ここグラノノエールのどこかに実在するらしい。
その可能性が一番高いのが、
小さなハート型地形のとある場所だ。
その伝説の不思議昆虫をおのが目で見てみたく、ついでに見聞の旅。
見聞録、もしくは冒険記。
本当のところ、どちらの題名にしようか迷っている。
それから余談。
パラリーナスアンジーとは、本来『花』の名前だ。
そして幻昆虫の発見者の、娘さんの、名前だ。
発見者の名前は謎とされているが、『パラリーナスアンジー』という
花の意味の娘の名前を、幻の昆虫に付けたらしいことが一説として濃い。
探索隊などに昆虫のほうは、「パラリー」と呼ばれている。
蝶とカブトムシがまぐわったと、空想する者は多い。
パラリーとたわむれて子供を成す
そんな空想を描いた本を、読なければよかった。
角があるものとして。
題名はおぼえていないが短編集に収録されていたやつで、書下ろしだった。
本当に・・・
変な話だった・・・




