第十話 気苦労
関所から出る前に、
私の姿を見るために人だかりができた。
次の街でも、
額に角を持ったひとがなんかすごいことを
したらしい、と噂立つ。
あまりにも曖昧な噂の届き方に、
「何をしたひと?」と聞かれ、疲れる。
めんどうくさいので、
「役者とか俳優」と答えたら、角が作り物だと思われた。
夜の噂もなんとなくたったが、
浮名を立つほどした覚えはない。
なんだったら、新品に戻りそうだ。
冗談だ。
浮名が立つほどした覚えはない。
その話題ばかりね
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茶屋に寄ると、不思議な話を聞いた。
「パソコンのマウスがカブトムシ型になったらどうする?」
「角があって茶色なのかい?」
「クリックとダブルクリックの部分が羽根・・・?」
「角は何の機能なんでい?」
俺の存在に気づいた客が、「どう思う?」とたずねてくる。
「カブトムシ型になったら、マウスをマウスと呼ばなくなるのか?」
それでいいのではないかとか、と客たち。
なんとなく話がまとまったかと思った時に、
茶屋の子供が言った。
「カブトムシの光沢は、妖精が描いてるって本当なの?」
結局、その茶屋にいる間の客たちの話題は
「カブトムシ」関連だった。




