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真実【2】


 

   *


 異能士協会本部、影人対策作戦指令室。 


 女性型脱走事件が起こってから数分経過している。


 奴を幽閉していた実験施設に続く廊下では大量の血塗れ死体とそれを超える異能士達が(せわ)しなく走る。


「女性型脱走時の作戦は既に始まっているぞ! 何してる!」


「もう手遅れです、と俺は思います。もう女性型を追ってから随分と時間が経過していますが、報告らしき情報はない。捜索を開始した()()異能士からも連絡がありません。()()の明が必要と俺は思います」

 

 白夜(びゃくや)雪葵(せつき)がくだらないギャグを交えつつ言い、B級異能士に意見する。


「お前、ふざけているのか? 今がどういう時だか分かっているのか!? そんな冗談みたいな戯言に付き合ってる時間はないんだよ!」


「お言葉ですが、俺の異能『(しも)』で捉えられなかった以上、他の異能力者には無理でしょう。一例を挙げるなら俺より高い封印力を持っている人物……『(あお)い閃光』とかでなければ意味がありませんよ、と俺は思います」


 言いながら彼は自分が展開した水色にも虹色にも見える、透明で巨大な結晶体に視線を移す。 

 彼自身が異能で顕現させた物だろう。

 その大きさを言い表すなら(ぞう)三頭分。

 施設の床から逆に氷柱(つらら)が生えているかのようにも見えるし、水晶鉱石のようにも見えた。

 その様子から「異能クリスタル」と俗称されているらしい。


「確かにお前の水晶体能力は封印に向いてる上、かなり強力だ。それで無理だったとなると厳しいのは分かっている。だが我々はそれでも奴を追わなければいけない! 分かったなら行動しろ!」

 



   *



「ちなみに聞くが、奴……その女性型を見つけて、その後はどうする気なんだ?」

 オレは隣を走り、屋根を飛び移る玲奈に問いかける。

 未だ見つからない女性型を追っている途中だったが会話は途切れなかった。


「どうするって……戦うけど」


「それはそうだろうが、殺すのか?」


「当たり前でしょう、何人殺したと思ってるの? あの女性型は脱走する間に約40の精鋭と警備員の異能士10名を葬り去った。もう()かしてはおけない……」


 確かにその話は驚きだし、同情もする。

 正直本部はエリート異能士の巣窟。加えて優れた結界のオンパレード。

 一体どんな手を使って脱走したのかも不明だ。見当もつかない。

 だが……。


「奴の殺すのは駄目だ」


「は? 正気?」

 金の髪を揺らしながら聞いてくる。


「奴を殺しても人類に未来はない。影人の正体が知りたいなら、奴を捕らえるしかない」


「……必要ない、です。もう正体を知る必要はない。それにもうじき夜が明ける。このままだと民間人まで巻き込みかねない。私の本分は影人や異能の脅威から人々を守ること」


 最後のセリフをオレは覚えている。


「そう教えてくれたのはあなたでしょう?」


 オレはしばらくの間沈黙するがすぐに口を開く。


「……だが、奴を殺すのは駄目だ」


「どうして?」

 眉間にしわを寄せる玲奈。


「いや、そもそもオレ達は奴を殺せない。あの女性型は身体(からだ)水晶体(すいしょうたい)化させ、防御する能力を持っている。おそらくは白夜一族の結晶を扱う異能『(しも)』と同じ能力だ」


 最初に女性型の腕を切り落とした際その防御はなかったが、オレが胴体を切りつけた時には既に水晶体が身体を覆っていた。

 おかげで檻マフラーの刃は通らず、二度目はわざわざ白夜一族『霜』の弱点異能である『(イカズチ)』を使わざるを得なかった。

 凛から借りている力『蒼電(サファイア)』を半強制的に解放するより他なかった。


「なんでっ……影人が異能を? それはどういうこと? そんな話は聞いてないけど。そもそもそんな馬鹿なことがあり得るの?」


「あるものはある。受け入れるしかない」


「……でも、もしそれが本当なら私達に彼女を殺す手段はないということになる」


「そういうことだな」


 実を言えば、オレの『蒼電(サファイア)』は数日に一度しか使えない。よって既に今日は使用できない。

 オレは雷電一族特有の発電器官「仮想電源」を持っていない。

 その分オレの身体に自然に帯電していく電荷からオレの中の僅かなサファイアジェムを核に「蒼電(そうでん)解放」を行う。

 その蓄電荷が無い今の状態では少なくともオレは凛の電気の力を借りることは叶わない。

 オレは雷電一族じゃないからな。


「……分かった」


 玲奈のその発言直後、奴の気配を感じたオレは浄眼を展開することにした。

 そのため眼を発動するがその矢先、微かにズキンと目の奥が焼けるように痛む。


「っ……」


 オレは右手で押さえて痛みに耐えた。


 またこれか。


 だが今回は前回と異なり、浄眼の展開に成功する。

 痛みを発しながらも発動したようだ。


 オレはそのまま前方を注意深く観察、奴をすぐに確認する。

 女性のような体つきにあの髪……間違いない。女性型の影。オレがくノ一と呼称していた奴だ。

 

 玲奈が何の迷いもなく視認できない奴を追えているということは呪印のマーキングを仕掛けているのだろう。


 また次第に奴との距離が縮まっていく最中、その玲奈が口を開く。


「取りあえず私達の目的を(あらかじ)め決めておく。悔しいけど、まず女性型を殺すことを諦める。次に目的をあいつの捕獲に変更する。その上で聞くけど何か捕獲できそうな異能技はある? 告白すると私の『(ころも)』は第二定格出力までしか調整できない」

 

「どうだろう、普通の檻の展開はそんなに遅くないが、奴を囲い込み、さらに閉じ込めるための立方体を構成し、少しずつその空間固定を収束させるには数秒を要す。つまりそのための隙を作る必要はあるが、檻で閉じ込めることは可能だ」


「分かった。それでいく。私が『衣』の第三定格出力で女性型の気を引きつつ陽動、統也は奴を弱らせてさらに檻で捕獲……これでいい?」


「ああ、問題ない」


 さすが伏見家の当主。

 旬の娘とかそんなことに関わらず、優秀な指導者、統率者として能力を持っている。

 現在の問題を正しく認識し、その状況をオレにも把握させ、さらには互いの目的を明確に一致させることで、意味のない衝突を避けようとしている。



 さあ、やるか。

 正直『蒼電(サファイア)』なしでどこまでやれるかは賭けだ。

 ちなみに奴の水晶体防御を破る方法は電気系統異能しかないが、オレはいつでもあいつを殺せる。



 さて大人しく捕まって、人間の姿を見せろ。

 オレの仮説が正しいならCSS(シーズ)の正体は大輝のような影人化できる人間、ということになる。

 


 つまりあんたも人なんだろ……女性型。



 少しの間、お前と遊んでやる。……死ぬなよ。


 お前に死なれたら困るからな。






サファイアジェム

……凛から雷電の力を借りるために必要な宝石。統也の身体の中に埋め込まれていると語る。

原理は不明。



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