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理緒の独白



 あたしは何のために生まれてきたのか。


 そう問うた時、返ってくるのは多分くだらない綿のようなスカスカなもの。


 明確に答えられないわけじゃないけど、答えるときっと中二病みたいになってしまう。


 簡潔に言えば、正しく生きていくなんてできないってこと。間違えて、スカスカになって。


 そうやってスカスカな毎日を送っていても、それでもいつか大切なものに出会えると。

 

 そう信じて生きた。


 うん。


 うん。


 うん……。


 間違(あやま)って誤って過って、そうやって手に入れた。


 ――幸せ。


 ――ギア。


 ――統也。


 あたしはただ……統也と一緒にいれればそれでいいんだ。ほんとは。


 世界なんてどうでもいい。統也の目的もあたしにはよく分からないし。


 だから。

 

 彼のギアとして並んで立っていられれば――それでいい。そうやって一生を過ごせれば――それでいい。それ以外なんて別に欲しくない。


 ただ統也がだけが、欲しい。


 統也さえいてくれたら、なんでもいい。


 彼だけがあたしを心から満たしてくれる。


 彼だけがあたしをちゃんと理解してくれる。


 大好き。


 彼しかいない。





 こんな時ふとあたしの頭によぎるのは、あたしの存在価値。統也基準の、あたしの価値。


 まるでゼノンのパラドクスみたいに統也に追いつけないことが、あたしの中の苦しみ。


 統也は足が速いから――決して追いつけない、自分に対する憤り。


 ずっと孤独で、ずっと強者で。そんな彼にあたしは、一ミリも追いつけない。


 きっと彼はこの先も独走を続けていく。孤独なまま走り続けていく。


 けど、それに追いつけないと、彼のギアとしては相応しくない。


 このままだと一生並べない。


 統也は、一生をかけてオレと並べればそれでいいんだ、っていつものように優しく言ってくれた。


 でも、あたしはそうは思はない。


 それじゃ納得できない。

 

 彼はいつも正しいことを言うから、それが正しいと理解していても。






 統也―――。






 追いつきたいよ―――。








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