カラーチェンジアメジスト
特級異能者≒S級異能士 (少なくとも基準は同じ)
特別紫紺石=CSSの紫紺石
◇◇◇
異能士最高議会。8月24日。
四年前の第ニ次防衛戦争の際に討伐したCSS三人がそれぞれ収めていた3つの特別紫紺石。マナ密度が極めて高く、影人化できる人間が保有する原動核として働くアメジスト。
それが本日未明―――何者かによって奪取された。
それは即ち、適合者さえいればこの世に再び別のCSSが誕生する可能性を意味していた。
「―――で? 皆様方は何が言いたい?」
皮肉な言い方。異能士上層部のお偉いさんが円形に座る中、その真ん中で佇む伏見旬は上への口の利き方とは思えないような口調で尋ねる。
「4年前の知性影人討伐を伏見旬、御主に頼んだのは失策だった」
とある上流権力者がそう述べる。
「俺のせいで『3つの特別紫紺石』が奪われた、って言いたいの? だとしたら筋違いだよね? 3年より前は影人って存在すら真面に理解出来てなかった時代。そんな世の中に一体どんな全能を求めてるわけ?」
「口を慎め。痴れ者が」
「そっちこそ権力持ってるってだけで偉ぶるのは良くなくない? 異能者階級・特級の俺らが常にあんたらの味方をしてるとは限らねぇんだぞ」
「貴様というやつは……」
左の年寄り、澱彗という人物が呆れ顔を露わにする。
今度は別の者が口を開いた。
「オリジン軍へのスパイとして潜入工作してるのは特級異能者がほとんどなのだぞ。それはそれ相応の任務があるからだ。しかし伏見旬、御主のせいで名瀬統也というキラーカードをこちらは手放さざるを得なくなった。今がどれだけ危険な状況か理解しているのか?」
ははは、と旬は笑う。
「分かんない? 統也も茜もヴィオラも、他の特級異能者もそうだ。皆あんたらに従うのはこちら側に『俺』がいるからだ。俺がオリジン側につけば皆靡く」
否定なしっと。都合が悪くなるとだんまりか。
呆れる旬は溜め息を我慢する。
「大体にしてさ、保管してた知性影人の特別紫紺石―――その3つを隠匿しきれなかったせいで今こうなってるわけでしょ? それを今更、破壊できるのは九神だけでしたって事実に関する無知のせいにしないでほしいんだよね」
「伏見旬、御主も討伐した知性影人の特別紫紺石、その保管を手伝えば状況は違ったのでは?」
「名瀬家の統也じゃないんだからそんなのは無理だって。それに、保管場所ないし不可視結界を看破した相手は特級レベルなんでしょ? どっちにしろあんまり意味なかったと思うよ」
今回このタイミングで特別紫紺石が奪われたのは運が悪すぎる。
相手は狙ってやってんのか。気色悪いが多分結構狡猾だ。
流石に茜を通して統也へ知らせた方がいいか。
特別紫紺石とは知性影人――IWでCSSなどと呼称されている異能を使用する影人が持つ核のこと。
現代科学ではそれを人間が食えば、影人化の力を得ることが出来ると言われている。
ただし、誰でも影人に成れるという訳じゃない。
異能者以外、そして一定の素質を持っていなければいけない。
「しかも、今はどうしようもないほどに人材不足決め込んでる最中でしょ? 名瀬の王『統也』、二ノ沢の魔女『紅葉』、ホワイトのユリシス『セシリア』とか。最高クラスの異能士はそのほとんどが不在。……どうすんの、まじで。俺もそんなに暇じゃないんだよ。統也が任務終わるまで待てるわけないよね? そもそも任務完了出来るかさえ分かんないのに」
楽しそうに語った旬から察した上層部の1人が口を開く。
「伏見旬め、貴様初めからこうなると分かって名瀬統也を……! 彼に解決させるためにか!?」
「えっ、なんの事?」
旬はニヤケながらあからさまに恍ける。
「舐めた態度が過ぎると、こちらも然るべき報いを受けさせるぞ!」
「うわ、怖っ。―――でも誤解すんなよ? あんたらが本気で対抗したって、俺には敵わない。統也にも勝てない」
それを聞き、ため息をつく権力者たち。
「……事実なことが厄運よな。伏見旬と故人エミリア・ホワイト、両名共に世界の勢力均衡を変更させたほどの例外的異能者。世界転覆など目じゃないのだろうな。特に伏見旬、御主は」
死んだエミリアのこと思い出させんなよ、と旬は静かに思った。
「そ。要は敵に回す相手を間違えんなって話。4年前の雷電迫害みたいに大勢死ぬぞ」
語る旬自身もそれは避けたかった。
「ならばディアナ・ホワイトの起源暴走の件はどうケリをつける?」
「現在はホワイト一族の聖封印を利用してなんとか押さえ込んでる状態。あまり刺激すると厄介なんでほぼコールドスリープ状態にしてる。以前杏子が俺にやったみたいに時空凍結とか使える技術者探してんだけど、そっちは見込み無し。――ってなわけでいったんは棚上げ」
「起源を有する12人のうち3人を御主一人に任せたのは失敗だったかもしれんな」
不平を漏らす権力者の一人。
彼の言う「3人」とはディアナ・ホワイト、雷電凛、名瀬統也のこと。
「そんなに彼女らを厄介払いしたいなら、好きにすればいいさ。ただしその場合――――俺は三人の味方につく。それを分かってんだろうな?」
旬は不快感を隠す気もなく言い捨てた。
その後、ポケットにしまっていた黒い布マスクを付けつつその薄暗い議会室から離脱した。
伏見旬
身長:183cm
血液:AB型
誕生:2月21日
性格:歴代最強という言葉からは想像できないほどいい加減な態度をする上、基本不真面目な性格。「冷静な自分」と「陽気な自分」を使い分けている。
異能:御三家・伏見が相伝する異能『衣』の「黒」因子を持ち、虚数術式・イザナミで虚数域の黒いマナエネルギーを顕現する。詳細不明。
流行:敵が多すぎてイライラしている。その上権力者は保身にまみれているため、尚イラついている。
印象:自他が認めるイケメンであり、黒いマスクを常に着用している(匂いからの多大な情報を抑制するため)。かぐやの影響から伏見一族は年を取りにくいため、未だ25歳程度の容姿。
※作者備考:作者から一言「文字通り最強の男です(笑)」




