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伏見かぐや【2】

CSS(シーズ)

……影人化できる人間の総称で、練度が高ければ人間の思考をそのまま影人になった際に引き継ぐことが出来る。

 また影人化した時にだけ異能を使用できるのも特徴。

 ただし人間から影人へ変化する際のトリガーは未だ不明。



  *



「つまりなんだ? 翠蘭がその『九神(くじん)』という九人のうちの一人だと言いたいのか?」


 隣に尋ねると冷たい視線のまま静かに頷く瑠璃。


「そして影人側は()()()()を殺したくて仕方ない。今回の事件はおそらく翠蘭(かぐや)を殺すのが目的で影人側の誰かが画策したことだろう」

「……何故そんなことをする?」

「九人が生きていると影人側にとって大変不都合なことがあるからだ。その九人―――九神(くじん)は、CSS(シーズ)と呼称されている『影化できる人間』を殺せる『要素』を持っているらしい。私も詳しいことは知らない。だがそれらを上手く活用すれば影人をこの世から消し去ることも可能だと言われている」


 以前、(みこと)とのデートで訪れた立体駐車場。そこで戦闘した瑠璃が言っていた「九神の光で影を消す」ってやつか。

 話を聞いている感じ嘘はついていないな。

 この女の本性は既に理解しているので、オレを殺そうとしないことも分かっている。


「だから、翠蘭(かぐや)を見つけ次第保護してほしい」

「言われるまでもない」

「……頼もしいな。貴君と走っていると、まるで父の隣で走っていると錯覚する。貴君は父とどこかが似ている。最強の人間が持つ独特の雰囲気、不思議な風格とでもいうのか……。性格は似ても似つかんが」


 姉妹揃って同じことを言われた。しかも旬の実の娘たちに。

 オレはその内容を無視する。


「そもそも伏見一族の祖である翠蘭が保護対象なのは理解できない。おそらくオレより遥かに強いだろ?」


 体術でもオレと互角だった。今思えば、それさえ不自然だったということだ。


「――だったそうだが、今はそうでもない。彼女(かぐや)は三年よりも前……だから青の境界ができる前だな。いわゆるCSS(シーズ)四人をたった一人で仕留めている。その際に力やマナを消耗しすぎた反動で今はほとんど異能が使えないんじゃないかというのが私の見解だ」

「なるほど」


 だから浄眼で翠蘭のマナ性質を読み取っても『衣』異能者だと判断できなかったわけか。

 相当に異能の力が衰弱していたならあるいは。


「大体CSSと呼ばれる『影人化できる人間』も権能を持つ12人と(つい)を成すように12人いる」

「12人? 多いな」

「正確には、12人()()。三年前、かぐやが疾うに4人、父・旬らが3人を殺したから今は計5人だ。……討伐を簡単そうに言ってはいるが、かつて父らがそのCSS3人と戦闘した際には精鋭数百人が犠牲となったそうだ。奴らCSS(シーズ)は飛びぬけた瞬発力と高速移動を可能にし、『異能』をも持っているため強力」


 異能を使える影人、すなわちCSS――女影や、変形手の剣を持つ影人と同等の輩。それを単独で4人も殺した翠蘭(かぐや)とは一体何者なんだ?

 檻能力『制限(リミッター)』未解除の今の状態とはいえ、オレでもおそらく二人相手が限度だろう。


「そんな話は初めて聞いた。黒羽大輝もその一種って認識でいいのか」

「相違ないだろう」

「分かった。取りあえずは納得した」


 最初に、旬さんはそれらの事柄を全て知っていたはずなのにオレに伝えなかった。

 あえて隠していたのか。

 いや、あの男のことだ。何か他意があった可能性もある。


 オレに教えると何か不利益があった?

 隠す理由……なんだ? 想像もつかない。



 するとその時だった。



「ん?」


 思わず声を漏らし立ち止まる。瑠璃も慌てて走っていた足を止める。


「貴君、どうかしたか?」


 オレは瑠璃の目もはばからず急ぎ浄眼を発動する。

 瞳が青くなっているだろうがまあいい。今更この女に知られたところで悪条件にはならない。


「……たった今、別荘の近くに居た影の気配が北にずれた。そいつを含めて強い影の気配が三つある。おそらく初めからその三人のCSS(シーズ)がいたようだ。最初、東側にいたCSSは『皆殺し』という役目を終え、北に向かったって感じだと思うが……。西と南にも気配がある。おそらくとんでもなく強いだろう」


 浄眼で得た「気配」という曖昧な情報を伝えていく。


 三人のCSS、うち二人は知っているマナだ。女影と剣の奴か。

 どういうわけか影同士が協力し合ってるのか。

 しかも三人とも影の大群を連れているな。

 やはり下級な影相手に命令くらいは出来るのか。

 黒羽大輝に群がってた影も何か一致性の命令を汲んでいるように見えた。


「再生する『二限異能力』に『蒼き瞳』……貴君、まさか………いや、あり得ない」


 考え事をしている最中、オレの青く変色した瞳を見たからか驚いた面持ちで珍しく場違いなセリフを吐く。


「ん、何言ってる?」

「貴君、まさか父と面識があるのか? なら……エミリア様の『王』を継承した可能性……? ……いや……そんなわけは……」


 そう言いながら下を向く。

 本当にどうしたんだか。しかしこの緊急状況でその話に付き合っている暇はない。


「オレは一番強い影が向かった北に行く。瑠璃は取りあえず南を頼めるか。西は一番遠いから後回しだ」

「……いいや……私は翠蘭(かぐや)の居場所を優先したい」

 

 何故か歯切れが悪い瑠璃。


「無理だ。何の因果か、彼女(かぐや)のマナ気配は極端に読み取りにくい。大まかな位置さえ感知できない」

「そうか……なら仕方ない。しかし……状況が変わった。翠蘭(かぐや)だけでなく貴君も死ぬとまずいかもしれない」


 歯切れが悪くなった原因はそれか。

 なら簡単だ。


「安心しろ。オレを殺せる奴など、この場にはいない」



 


 いつもお読みいただき感謝します。

 気軽に評価などくれると嬉しいです。判断材料、モチベにします。



*早く「あの人」を出したい……。が、まだ先になりそうです。


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