表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/293

報復の時 二の篇



 林奥。別荘の車庫内。暗がり、静かな空間。そのまま数分が経過したころ雪華が提案を試みる。


「ねぇ『糸』の拘束はひとまず置いておいて、ここから出る方法はないかな?」


 ここからとは、車庫からという意味。


 リカが即答する。


「そんなことしても意味ないだろうさ。仮にここから出れたとして、拘束が解かれるわけじゃない。この別荘に他の人の気配がある以上は余計なことしない方がいい。さっきの不審者の仲間かもしれん。もし荒事になったとして『糸』の拘束をご丁寧に付けたまま戦闘するのか? ……無理だろ。大人しくミスタマフラー君を待て」


「……どうしてリカ? どうして彼を信用するの? 男嫌いは何も私だけじゃない。リカも同じはずでしょ?」


 リカも男は嫌いでしょ、と問う雪華。同じ人種だと思っていただけに見捨てられたような、裏切られたような疎外感を感じていた。


「珍しく感情的だな、雪華。翠蘭も言ってたように今は情に流されるべきじゃないだろー」


「分かってるけどさ……」


「嫌いでもなんでも、『あの場で状況を切り抜けられない』と嘘をついていた彼にすべてをかける方がいい。そもそも雪華の瞬間凍結能力『白極』でも『糸』の破壊に対して効果が無かった。あれじゃあ何をしたって意味がなかったと、あたいは思うけどな」


 確かにそうだけど、と脳内ではきちんと理解していた雪華。

 拉致監禁を受けていることに対する恐怖はなかった。まともに異能者相手に犯罪を働くとなれば、異能士協会暗部・代行者(だいこうしゃ)が黙っていないことも。


 でも……三宮(さんぐう)家ほどの上流異能権力家が相手なら、いとも簡単にもみ消されるかもな、と直感的に感じるリカ。


「同意」


「ええ、今は統也さんを信じる翠蘭さんを信じましょうよっ! わたくし達にできることなど先より限られてますゆえ」

 刀果(とうか)はあくまで前向き。


「……そう言う刀果はあの場で、影人(かげびと)が苦手だからって緊張してたろー」


 雪華の『(しも)』氷結能力で氷漬けになった影人。三宮拓海(たくみ)を守った影人を見て緊張していた刀果のことを、今頃正面のリカが悪戯(いたずら)な気持ちで揶揄(からか)う。

 

「仕方ないのよ。刀果の影人(ぎら)いは筋金入り。でも異学を卒業するまでには直さないと、異能士なんてやっていけないよ」


 優しながら説教じみた口調で語る雪華。いつもならメガネのブリッジを整える仕草をしている場面だろうが、手に巻かれる拘束のせいでそうはならない。

 

「だ、だってー! なんかG(ジー)に似てません?」

 刀果はそのG(ゴキブリ)を想像してしまったのか、苦笑いをする。


「黒いのは認めるけどー。……ゴキブリには似てないだろ。てか北海道ゴキブリなんているのか? あたい出身が東京だったから分からんけど」


「同意」


 見かねた翠蘭が真剣な眼差しと、冷静な口調で話しかける。


「――皆さん流石に浮かれすぎでは? 現状この場を打開するだけの策は……確かにありません。けれどこれは遊びじゃないんですよ」


 顔を見合わせる皆。


「まあな、少し気が抜けていたのは認める。悪かったよ、委員長」


「いいのですリカさん。分かっていただければ」


 翠蘭がそこまで言ったとき、その瞬間。


 明らかにプチンと何かが切断される爽快音と共に女子五人すべての束縛が解ける。急に『糸』が緩み、拘束が無くなる。


「えっ! 解けましたよっ! ほら!」


 見せびらかす刀果(とうか)


「やったのか、統也とかいう男子!」


「のようですね」


 リカ、翠蘭も喜びを表情に浮かばせる。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ