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暗殺

「ここでよろしい」 


武は孫を見下ろしながら呟いた。兼州離宮の車止め。あたりは護衛の兵達で溢れていた。


「陛下……ご機嫌よろしゅう」 


静かにいつもどおりに頭を下げる献を愛おしげに一瞥すると武は待たせていた車に乗り込んだ。


「時間が押しているわ……早くお願い」 


ドアが閉まると同時に武はそう言って襟元を引き寄せる。運転手は少しばかり緊張した面持ちで静かに車を走らせた。


離宮を出て先導のバイクに挟まれ両脇を高い木々で挟まれた道を行く。


「子供らしい生活ですか……結果、息子の霊はあんなになってしまった。教え諭すことでしか人間は変わらないものです」 


いつものように武は独り言を呟いた。彼女も献の教育に異論があることは重々承知していた。しかし、彼女が帝位に就くときには物心がついていた長男カバラが権威に溺れ酒色に走った様を見ていると武には普通の生活から急に帝室と言う特殊条件に放り込まれた小人がどうなるかはわかっているように思えていた。


「いいのです……これで」 


車はそのまま木々の間を進んでいた。


「あっ危ない!」 


沈黙を守っていた運転手が叫ぶ。


「何事ですか!」 


助手席のSPが降り立つのを見ながら武が叫ぶ。そしてラスバは彼女を乗せた車が粗末な服を着た少女を轢こうとしていたことを知った。


「全く危ないですわね……」 


そう言いながら武は自分でドアを開けて道路に降り立った。SPは少女を支え起こしながらもう一方の手で端末から少女の身元を調べるべく少女の指紋を取ろうと苦心していた。


「帝の……武帝の車ですか?」 


弱々しい調子で少女がつぶやく。


「そうだ。立てるか?」 


SPがそういったのと同時だった。少女は武を睨みつけた。


「あなたは……」 


武が次の言葉を吐くことは無かった。次の瞬間には少女を中心とした50メートル半径の空間が灼熱の地獄に包まれていた。


道路脇に隠れていた護衛の特殊部隊員が駆けつけた時には焼け焦げた車といくつかの消し炭と熱にやられた折れかけた大木だけがそこにあった。

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