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プロローグ
人生とはなんなのか。不意に考えることがある。職場に向かう電車の中、街の喧騒の中、真夜中の寝室等など。今日は、23年間寝泊まりさせてもらったこの体を、手放そうとしながらだ。
「病んでるな…おれ」
頭の中に留めて置くことが難しくなった文字が言葉になり、ポロっとこぼれだした。その言葉に釣られるように、目からは涙が溢れ出した。今までだって散々考えてきた哲学。今までと違うところと言えば、一歩踏み出すだけであの世に逝ける崖の上にいるということ。それくらいだ。もう疲れた。終わらせてしまいたかった。何もかもを。
眼前に広がる美しい大海原が、手招きしている。目を閉じて最期の一歩を踏み出したその瞬間、不思議なことが起こった。