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2話 スキルセレクト

「あれ? 痛くない? 即死したのか?」


覚悟していた衝撃も痛みもない。最初は美味いこと脳天にでも斧を刺してくれたのかと思ったが、どうも地に足の付いている感じがある。


そう思って目を開けてみると、またさっきの盗賊がいた。だが、さきほどまでの下劣な笑い顔ではなく、困惑顔だった。


「お、俺の斧が壊れちまった」


「俺のナイフもだよ」


「俺の剣もだ」


あんたら、俺1人に何人で殺しに来てんだよ。と、そんな場合ではない。いったい何が起こったのか、俺も分からん。視界に少し入った商人ぽい人も困惑しているので、現状を理解している人が誰もいないシュールな状況になった。


いや、俺には心当たりがわずかながらあるか。アナウンスがあっただろ。絶対硬化とかいうやつ。


しかし疑問点が多い。他にもポイントやらなんやらいろいろ言ってただろ。


ガン! ガン!


のんびり思考をしている隙すらない。1回でダメなら2回、そうでなければ3回とでも言うように、俺をガンガン突いて来る。うっとうしいな。どっか行ってくれないか。


『スキルセレクト。絶対硬化解除、強制転移フォースを発動させます。スキルポイントは10消費です。残りは75です』


強制転移ってなんだ? 俺が逃げるやつか?


しかし、俺がそこまでのことを考える余裕もなかった。おそらく、その強制転移を受けた相手も、何が起こったか分からなかっただろう。


目の前にいた10人の盗賊は足元に何か魔方陣のようなものができたと思うと、一瞬で姿がなくなってしまったのである。


そして周りには静寂だけが訪れた。


冷静になってみると、強制転移というのは相手を飛ばす技なのか。


そして、最初の異常聴覚、その次の絶対硬化、そして最後の強制転移、どうも技に一貫性がない。俺の職業みたいなものがよく分からない。


さらによく分からないアナウンスと、ポイントが減る仕組み。


……これは仮定だが、どうも俺の意思とは関係なく、ある程度その場その場で適切なスキルを勝手に選んでくれているようにも感じる。スキルセレクトとか言ってたし。


ポイントさえあれば、俺が何も考えなくても、その場その場で強力なスキルが使えるということか。


でもポイントが無くなったらどうすんだ? もう25ポイントなくなってるのに。貯めるのに手間がかかったら面倒すぎる。


『スキルセレクト、現在スキルの必要性はないと判断いたしました。スキルを全て解除します。なお、このアナウンスは、次回以降なしにもできます』


そしてまたアナウンス。良く理屈が分からない。


「むー、むー」


ん? あ、しまった。いろいろ考えてて、縛られてる人達完全無視してた。


成り行き上とは言え、ここまでやったし、縄くらいは解いてあげよう。


「どこのどなたとは存じませんが、助けていただきありがとうございます。私は人や荷物を運ぶ運送を行っておりますセインと申します。今日は大事なお客様を乗せておりましたから、普段乗せない傭兵も乗せて、安全な道をわざわざ遠回りで来たのですが、このようなことになってしまい、どうしようかと思いました」


商人かと思ったら運送の人だったのか。ということは、他の3人は乗客か。


「いや、しかし10人を相手にしても全く意にも介さない防御力を持ちながら、一気に消し去る魔術までお持ちとは。よほど実力のある魔法使いなのでしょう。魔法使いは一般的に物理攻撃には弱いはずですがね」


俺の正体をそのように思っているのか。どうだろう。あの神様の話を聞く限りでは、転移は珍しくないみたいだし、転移してきましたといっても別にいい気もするけど、あまり一般的じゃなかった場合、頭のおかしい人と思われるし、そういうことにしておこう。


「いえいえ、偶然通りかかっただけです。俺以外の人でも、あの状況なら助けようとしたでしょう。あ、俺の名前は大山誠と申します」


「誠殿。是非お礼を申し上げたい。何か私にできることがありましたら、なんなりともうしつけくださいませ」


お、それは助かる。断るのが礼儀かもしれないが、今のところここの状況が何一つ分からない。まず金がない。


「えーとですね。ずっと違うところに居て、最近ここに来たもので、この辺りの常識が分からないので、いろいろ情報がいただきたいです。後、もしこのままどこかの村か町に行くのでしたら、一緒に連れて行っていただけますか?」


…………ずうずうしいかな?



「そのようなことでしたら、お安い御用です。あ、もしかすると、お金もローカルマネーしかお持ちではないのでは? 命の恩人の方ですから、もしよろしければ、金貨、銀貨、銅貨をご用意いたしますよ」


「あ、お願いします」


そこまで頼んだつもりはなかったが、割と自然に全部教えてくれた。いい人か。


しかし、金ももらえるのは助かる。


「ところで、今から行く国というか場所はどこです?」


「この世界の5つある国で最も大きいアルバンティーア国でございます。目的地は首都ではありませんが、ろいろ御用入りでしたら、首都のギースに行かれるとよろしいです。あ、こちらお金です。どうぞ」


話しながらいつの間にか準備していたお金を渡された、割と重たい。うーん、紙幣のシステムじゃないんだな。


「金貨10枚と銀貨100枚と銅貨100枚でございます。金貨1枚で、銀貨10枚、銅貨100枚の価値です。銅貨幣よりもさらに下の半銅貨、中銅貨、小銅貨になります」


「ちなみに、パンとかを買うといくらくらいですか?」


「そうですなぁ。国にもよりますが、大体銅貨1枚か2枚程度でしょうかね」


ということは、よほど俺の世界よりインフレしていなければ、銅貨が1枚で100円くらいか。つまり、金貨が1万円、銀貨が1000円、銅貨が100円、半銅貨、中銅貨、小銅貨がそれぞれ50円、10円、1円と仮定してもいいのではないか。つまり金貨10枚と銀貨100枚と銅貨100枚で、10万+10万+1万、つまり21万円くらいか。


「入れ物ももらえますか?」


「あ、はいはい、どうぞ。このマジックアイテムでしたら、いくら金貨が入っていても、重くありませんので。私のお古で申し訳ございませんが」


セインからもらった袋は一見なんの変哲もない袋。しかし、そこにセインがお金を当てると、一気に吸い込まれて、210枚の貨幣が全てなくなってしまった。


「あ、ありがとうございます」


ではどうぞお乗りくださいませ。


そして俺はセインの馬車に乗り込んだ。


とりあえずお金の問題が解決したことに安心していた。



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