最終話 何もしないまま終わる
「魔王の気配がなくなってしまったそうです」
ジェニーさんが黙っててくれたので、俺は普通の一個人としてダラダラした生活をしている。
あの人は神野さんにも話していないらしい。
そんなジェニーさんから報告を俺は受けた。
「気配?」
「はい、魔物が毎日のように計測されていた南の森から全く魔物がいなくなり、それで違和感を感じて森の奥まで散策にいったのですが、すっかりもぬけの殻になっていたそうです」
「なるほどな。まぁ俺には関係ないが」
魔物の有無はそこまで気にすることではない。真横で寝ているロロは魔物だが。
そういえばロロが残ってるのは何でだろう。まぁいいけど。
「詳しいことは存じませんが、誠様のおかげで、この国はすっかり平和になりました。それと他の国でも
戦争に対して好戦的な考えを持っている人はすっかりいなくなりました。今は戦争の無い国づくりをするために、各国忙しくなっています」
なるほど、戦争がなくなれば、俺を探す理由も無くなったから、本格的に俺はのんびりしていてよくなるな。
「こちらにいらっしゃる限りは私は誠様にご協力させていただきます」
ジェニーさんはほぼ毎日のように俺のところにいるようになった。
ジェニーさんは唯一俺が今回の戦争の解決に関わっていることを知っているから、俺に恩返ししたいらしい。勇者神野さんには、詳しい事情は伝えずに、戦争解決の恩返しとして俺のところに来ているらしい。
「いやー、これで私ものんびりできるよ」
「まさかマリートさんが元勇者とは思わなかった」
マリートさんは転生した日本人だった。元の名前は「伊東麻里」というらしい。
いとうまり→まりいとう→まりーと→マリートと名乗って、放浪していたそうだ。
細かい権力争いに嫌気がさして逃げていたらしい。
「ロロは寂しくないか?」
「魔物の知り合いはそこまでいませんでしたし、今はこれで幸せです……」
ロロは相変わらずマイペースだった。
「でもこれで、のんびりここに居られるね! 私はどこでも誠君といたいけど」
そして女神セリーヌさん。毎日楽しそうに俺の世話をしてくれる。
そう、魔物や魔王がいなくなったのは、例の戦争迷宮がこの世界全体に広がったから。
スキルセレクトさんいわく、魔物は本能的に人間に敵対心を持って、戦争の意思があるから、戦争迷宮から誰も戻って来れなくなったらしい。
戦争が無くなっても、スキルセレクトさんは細かいいざこざや、面倒なことは全部解決してくれる。
スキルセレクトさんができないことは、セリーヌさんが全部何とかしてくれる。
これで俺は死ぬまで何も考えずにのんびりできることになった。
とりあえず、今日も昼まで寝よう。高い太陽と、セリーヌさんに起こされるまで。
完結です。
非常に最近忙しくて、更新が大幅に遅れて申し訳ございませんでした。
時間がなかなか厳しいので、執筆時間が取れておりませんが、案そのものはあります。
できる限りまた作品を上げられるようにいたしますので、ご縁ありましたらお願いいたします。