26話 セリーヌさんは割と怖い
『やっぱりコウジは気にしてるみたいで……。うれしいんですけど……心配です』
リアリスさんは、基本的にアルヴァンティーアにいるが、ロロが使役すれば会話ができる。
俺達がアルヴァンティーアを離れてしまったので、状況を時々確認するためにリアリスさんはとても助かっている。
「勇者水口が苦労してるみたいだな」
『テキパキしてた国の指示もやってはいるけど……、やってるだけだけで、前みたいな革新的な動きはできてない……』
やっぱり大事な人がいなくなるってのはメンタルに来るんだろうな。
しかし、ここの世界ではだれかが急に死ぬということは普通にあり得ることだ。日本でも事故とかで急死することはあるかもしれないけど、明日死ぬということを身近に感じることがない。
セリーヌさん達が割と達観しているのも、死が現実に近いところもあるだろう。
……俺が死んだら2人はどうするのかと一瞬思ったけど、セリーヌさん生活能力あるし、ロロは単純に強いし特に心配いらないか。
ただ身の振り方を決めておかないと、いろいろ面倒なことになるだろうし。こういう話も必要か。
「セリーヌさん、もし俺に何かあったら」
「うん、喜んで後を追うからねー」
「!?」
ん、なんかえらい物騒なことを言った気がするな。
ああ、目的語ないもんな。それはつまり寿命で……。
「いやだなー、そんな顔しなくても心配しすぎだよー」
セリーヌさんがとても満面の笑みでそう言ってくれた。そうだよな。
「私料理の知識結構あるから、あまり苦しまずに死ねる毒なら知ってるんだよー」
「安心できねー!」
「大丈夫だよ。毒って言ってもすごく眠くなって自然に眠るように……」
「いや、そうじゃなくて……、死ぬ必要ないんじゃ……」
「何を言ってるのかな? 私にとって誠くんは全てだよー」
すごく言ってくれてることは嬉しいんだけど、すげぇ怖い。満面の笑みが逆に怖い。
「ロロ、もし俺に何かあってセリーヌさんが大変なことになりそうだったら、止めてくれるか」
仕方ないので、ロロに声をかけた。
「は、はい……、それはもちろんですけど……、全力を出しても止められないかもしれないですけど」
「ロロは強いんだから、なんとかなるだろ」
「なんともなりませんです……。私はセリーヌさんには手を上げることはもうできません……、それに……」
「それに?」
「……私も、誠さんに何かあったら……、どうなるか分かりませんので」
分かった。俺はとりあえず、できるだけ死なないようにしよう。それが1番いろいろ考えなくていい方法だ。
最悪死んだ後のことだし俺は知らん。