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23話 結論が出ていること

「おはよう、誠君」


「おはようございます、誠さん」


「おお……」


俺が目を覚ますと、セリーヌさんとマリートさんがすごくドアップで視界に入ってきた。マリートさんのほうが髪長いので、俺の顔に髪が当たっている。ちょっと気持ちいい。今度ちょっとお願いしようかな。何とは言わないが。


「ど、どうしたんだ? 2人とも」


「別にどうもしないけどね」

「はい、どうもしないんですけど」


「ちょっとだけ話を聞いてもらってもいいかな?」

「ちょっと話を聞いてもらってもいいですか?」


「わかったから、2人で左右で話しかけないでくれ。こそばゆい」


左右両方の耳からステレオで言葉が飛んでくると、混乱する。


「実はね、クララベル様が」


「ああ、クララベルさん、王女さんがどうしたって?」


「政略結婚を嫌がって逃げたらしいです」


「そっか」


「それで、今ここにいるんだけど……」


「え?」


俺が寝ぼけ眼をこすって見渡すと、2人の後ろに1人少女がいるのに気付いた。


いかにもお嬢様っぽいロング金髪縦ロールと気の強そうな釣り目がいかにもという感じである。


「失礼いたします……私「帰ってください」


俺はクララベル様が何か言う前に、先に言葉を返した。


「……そうだよね。誠君はそう言うよね」


「ごめんなさい、じゃあそうします」


するとセリーヌさんとマリートさんはクララベル様を追い出そうとした。


「ちょっと、ちょっと、なぜ匿ってくれないのですか?」


「ごめんね、でも誠君がそういうから……」


「うん、私がここを案内した責任もあるから、誠さんには無理は言えない……」


「その誠くんやら誠さんとは何者ですか。お話も聞かずに追い出すとは……」


「誠くんとやらは俺です」


「無礼ではありませんか。そんなだらしない格好で、横になったままで寝起きのままで、しかもそのような態度は」


「は? 何がいけないんだ。というか、クララベル様? 匿ってそれでどうするんですか?」


「それは……」


「いいならいい。嫌なら嫌と言えばいいじゃないですか」


「でも……」


「聞いた話だと、えーと、勇者神野さんだっけ? あの人と恋仲なんですよね」


「……ええ、私はあの方以外と一緒になることなんて、考えられませんわ……」


「じゃあもう答え出てるじゃないですか。政略結婚とか止めりゃいいじゃないですか」


「でも……それではこの国が不安定に」


めんどうくさいな。


「つまりそれはどっち選んでも後悔するってことですね。だったら、今そうしたい方にしとけばいいですよ。国民の人はあなたと勇者神野さんのこと応援してるんですから、国民を裏切ることにもならないですし」


悩んだときは今困らないほうを選ぶ。これが一番考えなくてもいい手段である。明日のことは明日の自分がなんとかするのである。



「…………そうですわね! ありがとうございます。マリートさん。ここに連れて来てくださってありがとうございますですわ。私は後悔しない道を選びますわ!」


こうして、あっさりクララベル様は納得してくれた。


「誠君はさすがだね。あんなに悩んでたクララベル様があんなに元気そうに」


「そんなこともない。どう考えてもあの人は答えを出してた。ただきっかけが無かっただけだろ」


「ごめんなさい誠さん。アルヴァンティーア国が騒がしいと思ってここに連れてきたのに、せわしなくなってしまって」


マリートさんが俺に頭を下げてくる。


「まぁマリートさんが悪いわけじゃないし、たぶんアルヴァンティーア国にいるほうが面倒くさかったから、それはそれでいい」


確かに面倒なことになっているが、たぶんアルヴァンティーア国で、勇者水口様やらその取り巻きとか、もっと悪いと王とかに絡まれるという最悪の展開になっていく可能性はあった。


だが、伝手の無い俺がうかつに逃げ回って、宿とかに止まると足がつきかねないので、特定の住居があるほうがいい。


「ありがとうございます。いい人ですね」


「俺がいい人なわけないだろう」


ただいろいろとどっちでもいいだけである。


「それでー、ジェニーさん、クララベル姫様が勇者神野様と結婚しない場合は、どんな人が相手なの?」


少し状況が落ち着いたからか、セリーヌさんがジェニーさんに尋ねる。


「はい、ラルド王子という方です」


「へー、どんな人?」


「あまりいい方とは言えませんねぇ。10にも満たない相手でも欲情されますし、かと言って未亡人でも欲情されますし、既に5人くらい側室がいらっしゃって、お金があるのをいいことに、やりたい放題去れていて、まだお若いのに太っていて剥げていらっしゃることが問題ですねぇ」


「問題しかないよー」


「そして、これは大した問題ではないのですが、基本的に何も考えてなくて、面倒くさがり屋で、料理とか仕事とかは人に任せっぱなしで、引きこもりで、細かいことを気にしない主義ですね」


それは問題じゃないのか? というか俺の悪口じゃないかそれ?


「それは問題ないね」


「……私と同じです」


「それくらいならいいですねー」


え、それって問題じゃないの。俺母親にすら問題だって言われてたのに。この世界と俺の世界の常識若干ずれてるだろ。



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