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22話 勇者と王女と貴族と国民と

「政略結婚反対! クララベル姫を政治の道具に使うんじゃない!」


「王族不在となるんだぞ! アルヴァンティーア国との同盟は必要だ! 断れば戦争になるぞ」


入国するといきなり国民同士の喧嘩が行われていた。


おかしいな。俺はこの国は平和で治安のいい国と聞いていましたがね。


「そちらの方、このクララベル姫政略結婚反対の署名に協力ください! 国民の3分の2の賛成が取れれば、王も無視できないはずです!」


「戦争になるのはクララベル姫の望むことではないはず! そのような署名に協力してはいけない!」


こっちにも絡んできた。面倒くさい。


『スキルセレクト、影同化シャドーを発動します。スキルポイントは10です』


「…………さっきここに4人くらい人いなかったか?」


「さて? 俺は独り言を言ってたかな?」


スキルセレクトさんのファインプレーで絡まれる前に俺たちは彼らの視界から離れた。


ドラちゃんの石ころなんちゃらみたいな効果だな。便利でいい。


「マリートさん、とにかく大丈夫そうな場所に案内してくれるか?」


「わ、わかりましたー」


マリートさんに声をかけて、地の利のある彼女に場所を案内してもらった。



「あら、マリ-様。お久しぶりですね。アルヴァンティーア国にいると聞いてましたけど」


住宅街を歩いていくと、少しさびれた洋館の前にメイドがいた。


無表情で短めのショートヘアーがなびく長身のメイドさんだ。


「久しぶりです。アルヴァンティーアで最近いろいろあったからこっちに戻ってきたんです」


「そちらの方々の紹介をしていただいても大丈夫ですか?」


メイドさんが俺たちを見てそう言う。


「あ、はい。えーと、あっちで知り合いになった人です。男の人が誠さん、そちらの小さい子がロロちゃんで、すらっとした子がセリーヌちゃんです」


「あ、どうも、大山誠と言います」


「セリーヌです」


「…………ロロです」


「お初にお目にかかります。私はジェニー=シュトラウスと申します。マリートさんとは、友人をいたしております。そして、王女クララベル=ヴェルト様の直属のメイドです」


おおう、けっこう偉い人が出てきた。


「ジェニーさんとお呼びすればいいですかね」


「よろしくお願いいたします。マリートさんのご友人であれば、私の友人も同然。マリート様、勇者神野様と約束したとおり、家の管理はしておりました。またこちらにすまれるのですか?」


「はい。しばらくこっちでお世話になろうと思ってます」


「それは勇者神野様もお喜びになるでしょう。この時期に神野様の味方をしていただける方が1人でも多くなるのはいいことです」


「そう、その件なんですけど、なんか皆さん荒れてませんか? この国は勇者神野様の管理になってから、どこよりも治安がいいことが有名だったはずじゃないですか?」


「…………もしよろしければ、その件私がお話いたします。立ち話もなんですし、家に入りましょう。マリートさんの家ですが」


「そうしよう。俺座りたいし」




「わー、家大きいね」


「…………住みやすそうです」


すでに見た目で大きな家だったが、中もきれいで立派で、前の住宅よりも豪華だった。語彙少ないな俺。


「さて、ではどこからお話いたしましょうか。まずはつい先月頃に、ダグラス王が急死されたことがはじまりでしょうか」


「ダグラス様がですか!?」


なんかキナ臭そうな話だな。話半分で聞いてよ。


「ダグラス様がお亡くなりになったことで、ヴェルトー国の正当な血筋を受けているのが、クララベル姫とまだ9歳のノイント王子だけになりました。ダグラス王はまだ40代で若かったので、ノイント王子の後見人も定めておりませんでしたから。同盟国であるアルヴァンティーア国との協力を得るために、クララベル姫の政略結婚の話が浮かんだんです」


「クララベル様の政略結婚……、わかりました。もうそれ以上聞かなくてもわかります。それは荒れますよね……」


マリートさんが少し頭を傾げた。


「ねぇねぇ、マリートちゃん、どういうことかな?」


俺はどうでもよかったが、セリーヌさんは興味があるようだ。普段は俺と同じ無関心を徹底するロロもちょっと耳を傾けている。女の子だから、結婚とかその辺の話に興味あるのだろうか。


俺にその気がない以上は、セリーヌさんにはちゃんとそういう相手を見つけてあげないとな。


「難しい話じゃないです。クララベル様と勇者神野様は、恋仲なんです」


もう嫌だ。絶対にこれ面倒くさい。


「へー、忍び愛なの?」


「いいえ、もともとこの国は非常に不安定な国でしたが、勇者神野様が来てから12年で、とても裕福になりました。ダグラス様も当時28歳でしたが、優秀で、2人で協力しておられました。ノイント王子が生まれて、クララベル様は婚姻を自由にできるようになりましたので、ダグラス王も公認しておりました」


「しかし、ダグラス王がお亡くなりになってしまったので、緊急の対応として、政略結婚の話が貴族からあがりました。しかし、これに国民の一部が猛反発しておりまして、富裕層と騎士や国民側で対立状態になってしまいました」


「なんで揉めるの?」


「実は、神野様は貴族や一部の富裕層にはよく思われていないのです。国民に住みやすい街づくりをしておりますし、ダグラス王もかなり神野様を信頼していらっしゃいましたから、貴族としては面白くなかったはずです。だから、ダグラス王がお亡くなりになったのを機に、自分たちに有利な人材を国に受け入れようという話だとは思います。もちろん表向きの理由は、トップ不在の状況をなんとかするためですが」


もう後半から聞いてない。俺には関係ない話だし。


「大変そうだね。勇者神野様の考えは?」


「神野様は、政略結婚であれば仕方ないとの考えでもあります。合理的な方ですから。自分の感情よりも、国益の事を考える方です。この件で難しいのは、貴族側の言い分にも理はあることです。王が不在となれば、王女が政略結婚をして、統治者を引き入れることはめずらしいことでもありませんし、下手な手をうつと、国全体での混乱を招く恐れはあります。クララベル姫が政略結婚をするほうが、最悪の事態になったときのリスクが低いのは確かです」


だらだら話してるけど、つまり、活躍した勇者と姫が恋仲にあるけど、国のためには姫は政略結婚をしなくてはいけない。でも、どっちを選んでもどこかで問題が起こるということだ。


まぁどっちになってもいいか。俺は寝ることにした。



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