21話 移動中
「腰が痛い……」
現在俺たちは移動中であるが、馬車がとても揺れる。
日本と違うのは道路の舗装がされていないので、すごく揺れて腰に来る。
「そうかなー?」
セリーヌさんは余裕の表情である。なんというかたくましい。
「もし痛いなら、私の膝の上に載ってもいいですよー」
それは別の意味で痛いことになる。周りの目線とか。
マリートさんは割と積極的だった。まったくフラグを立てた覚えはないが。
「…………酔いました…………」
ロロはぶれないな。俺も酔いそうだもん。
ちなみに席は俺の横にマリートさんがいて、手前にセリーヌさんとロロが座っている。電車のBOXシートみたいな感じである。ロロは横になってセリーヌさんの膝枕をしてもらっている。うらやましい。
「ちなみに、ヴェルトー国はどういう国だ?」
俺はマリートさんに尋ねる。
「いい国ですよ。治安もいいですし、魔王の国から遠いので戦争も少なくて、勇者をやってらっしゃる勇者神野様は、勇者の中でも1番の最年長で、とても知的な人ですから」
「勇者ねぇ。水口みたいな感じか?」
「勇者水口様はいい人ですけど、まだお若いですからね。水口様に経験を加えた方です」
何それ完璧超人?
「あまり民間人に戦争をさせようともしませんし、のんびりと過ごしたい誠さんのニーズにあってると思いますよ」
勇者水口の部下の騎士は俺がたたかわないことを悪く言ってきたからな。そのあたりがしっかりしていることを祈りたいところだ。
「あ、つきましたね。ギルドのカードをお願いしますね」
この世界ではギルドで身分証明を発行するが、移動だけなら、身分証明をすればよく、居住地を変えるのにも、新規加入の時の半分のお金でその国のギルドで切り替えれば簡単に住むことができる。
「……私持ってませんけど」
そういえばそうだ。ロロは魔物側の存在だから、そういうの発行してないな。その辺の説明マリートさんにしてないけど、話しても大丈夫かな。まぁセリーヌさんの友人だし、そこら辺りはいいのかな。
「マリートさんいいか?」
「はい、なんです?」
「実はさ、ロロって魔物でしかも魔王の幹部なんだ」
考えるのが面倒くさいので俺はマリートさんに話した。
「えー! そうなんですか。びっくりです」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
4人とも沈黙した。そのあとが続かなかったためだ。
「えーと、それだけか?」
「ロロちゃんは害なさそうですしね。それにセリーヌさんから聞いてますけど、めんどくさがり屋の誠さんが、受け入れているところを見ると、そういうことなんですよね、ならいいです。でもどうしましょっつかー。身分証明がないと、ちょっと面倒かもしれませんねー」
マリートさんがロロを受け入れてくれたのはいいのだが、問題は解決していない。面倒ごとになったらいやだな。
「ここは私も身分証明をなくしたことにするよー。2人なくしてればロロちゃん悪目立ちしないし、見た目は人間みたいだからなんとかなるでしょ」
「うーん、どうですかね。勇者神野様は真面目で厳しい方ですから、検問も厳しい話になると思うんですけど……」
マリートさんがあまりいい顔をしてない。まぁ最悪の場合そこら辺で野宿して作戦を考えるか。ロロに幽霊出してもらって混乱起こして……。
「身分証明ないんですか? わかりました。定額の罰金をお支払いいただければ、仮の身分証明を発行しますので、そちらをギルドにもっていってください」
俺が珍しくちゃんと考えたのに、なんでそんなにあっさり行くんだよ!
俺は文句を言いたくなったが、いいほうに転んでいるので、下手に口に出すと面倒くさいことになるので、言わない。
マリートさんの心配と俺の珍しく考えた気苦労を無視するかのように、簡単に入ることができた。
ロロに至っては仮にも魔物なのに、そんなあっさりでいいんかい。
「よかったねー、仮の身分証ももらったから、これでギルドに行きやすいよ」
「……はい…………」
ロロは見た目は少女でも魔物なので、面倒なことにならないようギルドには登録させなかった。
だが、仮の証明書があるなら、あまり厳しい審査もないと思うんだよな。セリーヌさんももらってるから先にセリーヌさんに先にやってもらって、いけそうならロロもやってもらえばいいかな。
「それにしてもさ、マリートさん、聞いてた話と違うんだけど」
「おかしいですねー。前来た時はこんなに緩くなかったですし、そもそも罰金制度なんて覚えがありませんけど」
マリートさんも首をかしげている。まぁ、いいほうに転んでるから攻めるつもりはないが。