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15話 勇者水口

「おいおい、あの引きこもりがまた女の子増やしてるぞ」


「あの小さい子もすごくかわいいな」


「どこの子だろうか? セリーヌのお嬢ちゃんはよく顔を出すから知ってるけど……」


「でもあの引きこもりと一緒にいるんじゃ、手を出したら大変なことになるよな」


「なんであいつの周りにかわいい女の子が集まるんだ?」


左側にセリーヌさん、右側にロロを連れて街中を歩く。非常に目立つ。


ちなみに、4人目くらいの男が言った発言だが、まさにそのままの意味である。


セリーヌさんは、出会ったときからすでにレベルが高かったが、衛生面と健康面が改善されて、より美人になっていった。


そんな彼女を1人で町を出歩かせて大丈夫なのかと思うかもしれないが、実際大丈夫なのである。


俺のスキルセレクトは、俺に何も考えさせないことに長けているスキルである。


要するに、俺にとって、心配する対象ができれば、その心配を取り除くことをこのスキルセレクトさんはやってくれるのだ。


簡単に言うと、セリーヌさんが1人で歩いていて、危険な目にあったり、男に絡まれそうになる前に、このスキルセレクトは発動するのだ。


セリーヌさんが、1人で町を出歩いていると、毎回1度は何かの発動が俺の耳に届く。


よって俺はセリーヌさんのことを心配する必要がない。そして、その対象は、一緒に住むようになる以上、ロロにも発動するというわけだ。毎回来るたびに恨めしそうな目で見られるが、何かするとスキルセレクトが勝手にいろいろやってくれるので、何もしてはこない。平和だ。


「さてと、ロロちゃんはどこに行きたいかな」


「そうですねぇ……、静かそうな場所がいいですね」


「じゃあこの魚が見れる場所にしよっか」


「そうですね……静かで音もない……、平和なプレイス」


「セリーヌさん、それはなんだ?」


俺はセリーヌさんが何か冊子のようなものを持っていたので尋ねた。


「これはこの町の情報がわかる冊子だよ。勇者水口様が、町を観光しやすくするために、作ったみたいだね」


少しセリーヌさんに見せてもらうと、町の情報や写真のようなものが乗っていて、確かにそれは日本でもあったガイドブックのようなものであった。


セリーヌさんがロロにそれを見せて、ロロのお気に入りの場所を見つけていく。


ロロは見た目どおりおっとりしているので、水族館のような場所、植物園のような場所、図書館のような場所を選んで、特に会話をするわけではないのだが、本人がすごく満足そうなので、いいだろう。


俺も別に魚とか自然を見てのんびりするのも、本を読むのも考えなくていいので楽である。


「やぁ、今日もいい感じだね」


俺たちが図書館でのんびりしていると、静かな図書館で会話が聞こえてきた。


「はっ、さすがですね。図書館の設立により、お金のあまりないものでも、教養を得られるようになりました。勇者水口様のおかげです」


「まだまだこんなものではないよ。いずれは小さい子たちが全員教養を得られる学校というものを設立して、さらにこの国を活性化させていくさ」


「ついていきます」


迷惑にならないとは言え、図書館で会話をしているのは気になったが、それよりも勇者水口? 


あの俺を誘ってきたおじさんの言ってたここの勇者か。うわー、かっこいい。


イケメンだし、背あるし、何か3人くらいえらいレベルの高い女子連れてるし、余裕がすげぇし。


転移者としては先輩になる人か。この人がいてくれたおかげで、俺は面倒くさいことはしなくてもいいのだから、ありがたいとは思うが、俺を誘ってきた件もあるから、関わり合いにはなりたくないな。


「すっごいよね。コウジは」


「コウジさんならできるよ」


「…………コウジはなんでもできる。私が保証する」


おお。女の子のさすがです感がすごい。でも実際にここでの水口の実績はさすがなんだろうな。コウジってことはあの人は水口コウジって名前か。日本人だ。



「水口様!」


そんな静寂の状況に、いきなり水を差すような大きな声が響いた。あ、あれ俺のこと誘ってきた騎士のおっさんだ。隠れよ。


「こら、図書館では静かにするのがマナーだぞ」


「も、申し訳ございません。ですが、緊急事態です! 南の森との国境沿いで、またもや魔物の群れが現れました!」


「前もきちんと退治できたいたのだろう? その報告か?」


「違います! 今回の魔物はレベルが違います! 次々とわが軍の精鋭がやられております。おそらく、幹部クラスが関係しております!」


「なんだと?」


「ここは勇者水口様に協力いただかないと、戦況が非常に不利です」


「仕方ないか……悪いな3人とも。今日は珍しく俺の休養日でデートをしていたのに」


休養あまりないのか。やっぱいろいろやることが増えるとしがらみも増えるんだな。うらやましくない。


「いいよ。それが仕事だもん。私も戦う」


「私も協力します!」


「…………頑張る」


あの3人も戦えるのか。しかも魔王幹部クラスとの戦いにも参加するってことは、かなり強いってことだな。


こっちはセリーヌさんはほぼ戦えないし、ロロは戦いを好まないし、俺も好まない。あちらは好戦的ですね。


しかし幹部クラスか……。ちらっと横目でロロを見る。


ロロは今のところ悪霊を操れるという話と、魔力を国に供給しているという話だけで、実際の戦闘力に関してはよくわからない。普段はただのかなり内気な子でしかない。


とはいえ、挑んできた幹部候補を返り討ちにしているくらいの強さではあるのだから、もちろん強いはずか。


「ロロはこういう場合、だれの味方をするんだ? 幹部と人間の戦いだぞ」


「………………幹部の人とは1人を除いて仲がいいとは言えませんでしたし、私は誠さんとセリーヌさんがいてくだされば、それでいいです……」


割りと本人はドライだった。


「よし! 平和のためにたたかうぞ!」


「「「おー」」」


まぁこの国の平和のために戦っていただこう。勇者水口様がんばれ。





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