14話 魔物の秘密
「へー、ロロちゃんってすごいんだね」
「な、大丈夫だったろ。余計なことを考えるのはやめとけ」
ロロが魔王軍の幹部の話をセリーヌさんに話だが、全くセリーヌさんは気にしなかった。
「…………はい…………ありがとうございます」
ロロも困り眉ながら、笑顔になったようで安心した。
「そういえばずっと1人って言ってたけどさ、魔物は仲間とか家族の概念はないのか?」
「魔物の世界は、弱肉強食ですから、友人関係と呼べる相手は少ないです。お父さんは私が幹部になる前の幹部の人ですが、ほかの魔物の方に倒されてしまいました……。お母さんは、勇者に殺されてしまいました……、ですから、私は人間も魔物も両方怖いです……、誠さんやセリーヌさんみたいに無条件で優しくしてくれた方は初めてです」
「あーなんか悪い」
セリーヌさんのときもそうだが、この辺りのデリカシーが足りない。
「いえ……、気にしないでください……魔物幹部になるために、魔物の幹部を狙って戦うのは当然ですし……、魔物と人間が対立している以上は仕方ないことでもありますから……」
割とドライだった。
「でもどうしてロロちゃんは、幹部になってるの? 幹部になるために戦わなきゃいけないんなら、ロロちゃんは戦って幹部になったってこと?」
確かに気になるな。ロロはそういうタイプには見えないが。幹部の地位にも興味なさそうだし、復讐をするタイプでも先ほどの発言から違いそうだ。
「それは……、新しく幹部になられた方が、私の復讐的なものを恐れてですね……、私を襲ってきたので……、返り討ちにしてしまいまして……、それで幹部になってしまいました……」
まさかの展開。ロロは戦いが強かった。
実際悪霊を使いこなせるなら強いもんな。
「その後もいろんな方が私に戦いを挑んできたのですが……、ほぼ全員を返り討ちにしてしまいまして……、それでも皆さん挑んでくるので、また返り討ちにしてしまいまして……、それでいろんな魔物の方に迷惑をかけてしまうので、魔王様にお伝えして幹部を引退させてもらおうと思ったんですが、私の能力と魔力は幹部クラスとして必要とのことでして……、なので、とりあえず地位だけ残してこの誰もいなくなった村にいさせてもらいました……」
「なんで魔力がいるんだ?」
「魔王様や魔王様のお城の結界を維持するのに、高いレベルの魔力が必要なんです……。私はその魔力の供給だけ、手伝っています……、このアルヴァンティーア国にこっそり入り込んでアルバンティーア国からあふれる魔力を魔王様に送っていました」
「なるほどな。それでなんかこの国に問題が出るのか」
「…………いいえ、自然にあふれる魔力の一部を送るだけですので、魔王様にいい影響はあっても、この国に悪い影響を与えることはありません……」
「そっか、ならいいよな。セリーヌさん」
「うん、私も誠君と一緒に過ごして、ロロちゃんも一緒にいれば楽しいよ」
「く、苦しいです。セリーヌさん、力強いです……」
ロロをセリーヌさんが持ち上げて抱きしめる。家事スキルの高いセリーヌさんは割と腕力がある。俺普通に力で勝てない気がする。
「ロロちゃんは完全に見た目は人間に近いから、一緒にお出かけもできるかな?」
そんなとある日、セリーヌさんが俺にそう提案してきた。
俺とセリーヌさんは1週間に1回くらいは出かける。
俺は外に出るのが嫌いというわけではない。ただ、外に出るよりも中にいるほうが考えることが少ないから楽なのである。そこまで多くない友人と出かけるときも、ほぼプランは相手に任せていた。何も考えたくないから。
ある程度仕事をしてくれるセリーヌさんにアルバンティーアの首都バースを案内してもらって、のんびりと町を歩くのが、俺の数少ない外出であった。
セリーヌさんが、その出かけるのに、ロロをつれていくことを提案してきたのである。
「あの……、大丈夫でしょうか……」
「魔王の幹部って名前がばれてるもんか?」
「そうだね……。あんまり知られてないことが多いよ。幹部クラスだと、ほとんど外に出てこないし、ロロちゃんは幹部になってから間もないし、ほとんど人間の前に顔を出してないから」
「町はちょっと怖いです……」
ロロは勇者に母親を殺されている。人間に対して恐怖心があるのは当然である。
「でも、人間の世界も興味はあります」
しかしアグレッシブだった。むしろ俺より。