表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

13話 ロロと2人きり

「じゃあ出かけてくるねー」


次の日、セリーヌさんがいつものクエストに出かけたため、ロロと2人きりになる。


「………………」


「………………」


うーむ、会話の糸口がない。セリーヌさんはおしゃべり好きで、しかも話し上手の聞き上手と来てるから、俺でも会話がしやすいが、原則俺は女子と話すスキルは持っていない。それはスキルセレクトでもどうにもならないか。


「えーと、ロロ。昨日は強引にセリーヌさんが連れてきちゃって悪かったな。迷惑じゃなかったか?」


「……迷惑ではありません…………」


「言いたいことがあったら言ってもいいからさ。俺急かさないから」


セリーヌさんは基本的に元気な子で、ワンテンポ速い。昨日の会話も、ロロが言いたいことを言い切れていない印象を受けたので、めんどうでも、俺は今日2人になったときに会話をしようとは思っていた。


いや、面倒だけどさ。完全に無視してロロが傷ついても居心地悪いし、寝てる間にロロが出てって、セリーヌさんが悲しむのも見たくないし。


「えーとさ、一緒に住む以上ロロのことを少しは知りたい。話したくなったらでいいから話してくれ。俺は特に今日外に出るつもりはないから」


こうしてあげるのがいいだろう。ロロのペースに任せよう。



「…………私は5年くらい前から、ずっとこの村にいました」


数時間ほどぼーっとしていると、ついにロロが口を開いた。


「でも幽霊騒ぎもあったし、少なくともここ1ヶ月は俺達がいたから、ここにはいなかっただろ」


「いいえ、ずっといました……、あの幽霊騒ぎの犯人は私です」


「は?」


ロロの言葉に俺は耳を疑った。


「ど、どうやって…………」


「どうやってと言われましても、私の能力がそれですから……」


質問に答えてもらっても、俺は困惑する。


「すげぇな。まだ小さいのに」


「小さいといいましても私もう15歳です……、セリーヌさんと1歳しか変わりませんけど……」


まじかよ。


昨日はずっとセリーヌさんがべったりしてて、俺は会話に参加しなかったけど、そのくらいの話はしてるんだな。というか、セリーヌさんが16歳にしてはしっかりしてて女性っぽい見た目だし、ロロが15歳にしては小柄だから、どうも年齢とのイメージがずれる。


「15歳でもすごいだろ。なんだ、魔法使いか何かか?」


「……いえ、私の職業はソーサラー、悪霊を利用した呪術師に近いです……」


「へー、すげぇな。どうやってその年齢で」


もしかしてこの子も転移者? いやそれにしては、名前も見た目にも日本人の面影が無いし……。


「あの……、本当のことを言っても私を嫌いになったりいじめたりしませんか?」


「いや、しないけど、そんなこと面倒だし」


俺はいじめという行為を見ていたが、あれの何が面白いのかよく分からない。どう考えてもやってる側のメリットを俺は感じないんだよな。


「…………、私は魔王幹部7人衆の1人です……すいません、いえなくて……」


「へー、そりゃ驚いたな。びっくりしたよ。なるほど、それで、見た目が妙に小奇麗で、家柄もありそうな感じだったわけか。納得納得」


ちょっとあった違和感が抜けて安心した。なるほどなるほど。


「…………あのー」


「ん?」


俺が1人納得して再び寝ようとすると、ロロが話しかけてきた。


「どうした?」


「あのー、さきほどの話聞いてましたよね」


「聞いてた。ロロは魔王の幹部なんだってな。ちょっと驚いたけど、幽霊を扱えるくらいなんだから、それくらいの実力はあるよな」


「いえ、そういうことではなく、誠さんは人間ですよね」


「まぁ人間だな」


少なくとも見た目はそうである。クズと人間という境目があるとしたら、クズ寄りであるが。


「私は魔物でしかも幹部クラスです……。人間は魔物を嫌っているはずではないのですか」


ロロが目線を下げて言う。


「まぁ一般的にはそうなんだろうな。人間と魔物はそういう関係なんだろ。だけど俺はそんなんはどうでもいい。嫌ったり苦手に思ったり憎しみあったりするのは、考えることが多くて疲れる。だから、ただそう魔物だからって嫌ったりはしねぇよ。もちろん人間が相手でもな」


逆もしかり。無関心以外の感情は、結果的に考えることが増えて面倒くさいものである。


「人間でも魔物でも……、同じというのですか」


「同じだよ。要するに俺に面倒ごとさえもってこなきゃいい。ついてだが、ロロは何で幽霊をこの村で出してたんだ?」


「……魔王様の命令です……」


「人に危害は?」


「加えてません……」


「それだけだろ。今は幽霊を出して俺とセリーヌさんに何か危害をくわえる気はあるか?」


「…………セリーヌさんは優しいですし、誠さんも、私をどうにかしようとする気はなさそうです……、ならそのつもりはありません」


「じゃあいい。セリーヌさんもロロを気に入ってるみたいだし、いたきゃいろ。2個だけ守ってくれりゃ俺は追い出さないから」


「2個とは何ですか」


「ここを出ていく場合は、ちゃんと理由を言ってから出てくことと、ここにいてもいいのか的な発言はしないことだ。前者は勝手に出てかれると、何かあったのかと思ってセリーヌさんが心配して、探しに行くとか面倒ごとが増えるから、後者は俺がロロを追い出したいと思ったら、問答無用で追い出すから、そうじゃない限りは、絶対に追い出さない。そのたびにお前に説明するのが面倒だからだ。いいか」


「…………誠さんは高潔な心をお持ちなんですね……。わかりました……、ずっと1人で寂しかったです……、一緒にいてもらえればうれしいのでお願いします」


こうして、俺の周りにもう1人同居人が増えることになった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ