12話 謎の少女
「いやぁ、平和だね」
「平和だな」
約1ヶ月経ったが、ものすごく平和だった。
スキルが勝手にいろいろやってくれているので、俺は週1、2回くらいアルバンティーアのギース町にクエストの状況を確認しに行くという名目で、セリーヌさんとお出かけするくらいしかやることがない。
セリーヌさんも週に3~4回くらい家事手伝いや運送の仕事をやって、ギース町での立ち位置をしっかり得て、週に1金貨~1金貨と5銀貨くらいは稼いできてくれる。月で換算すると金貨4枚~6枚で、家賃もかからないどころか、月1回金貨10枚くらいはガイツさんからお金がもらえて、家計も完璧にセリーヌさんが計算してくれているので、幽霊村クエストでもらった100金貨と最初にセインさんを助けたときのお金の余りの10金貨はまるまる残った状態である。貯金110金貨で、月14~16金貨あれば、全然お金にも困らない。
魔物は出てきても、スキルセレクトさんがなんとかしてくれるので、事実平和である。することがない。
「しかしこの村に人が住むことはできるんだろうか」
「誠くんみたない人ならいいけど、ちゃんと整備されてないと住みにくいよね」
そう、このサカ村。予想以上に魔物の襲撃を受けやすい。
良く考えると、この場所はまだ整備されていない南側の草原、森がこの家から見えるくらいの距離である。
ギース町は外を城壁に囲まれているが、ここはそんなことはない。一般市民が住むには厳しいのではないだろうか。
って何で俺がこんなこと考えなくちゃいけないんだ。俺は別にどうでもいい。実際のこのままでも俺は困らんし。近所付き合いとかの問題が起こってくるし。
「冒険者の人なら住んでもいいのかな? ほら、ギース町だとクエスト無しだと魔物と戦えないけど、ここだと向こうから襲ってくるからさ」
「なるほどねー」
こうしたたわいもない会話を続けて、特に実りのない時間を過ごす。ああ幸せ。
「誠くん誠くん」
俺が惰眠をむさぼって、また日も高い時間に寝ぼけていると、セリーヌさんに起こされる。
「どうしたんだ? 何かまずいことがあったか?」
こんな感じでセリーヌさんが俺をゆすって起こすことは珍しい。
「あそこに小さい女の子がいるんだけど…………、大丈夫かな」
窓の外を見ると、確かに小さな女の子がいた。
年齢は12歳か13歳くらいかな。この村で魔物以外の生物を見るのは初めてだがそれどころではない。
なぜあんな小さな女の子が1人でたたずんでいるんだ?
……考えるの面倒くさいな……、でも俺みたいなのが話しかけたら逃げられそうだな……。
「連れて来たよー」
「……あ、そう」
俺が考えないようにしてたら、セリーヌさんが連れて来てしまった。まぁいいけど。
「ひぃぃぃ!? わ、私を捕まえてどうするつもりですか!」
すっげぇ怯えてるんだけど。
「落ち着いてー、何もしないからね」
「何もしないわけないじゃないですか! 現に今何かされてますけど!」
「1回座ろう、ね?」
「座った後私をどうするつもりですか!」
何と言うか声はか細いんだけど、意思は強いな。後ろ向きに。ちょっと親近感が、じゃなくて。セリーヌさんみたいな温厚で優しい子でもこんなにびびってるとは。ずいぶん臆病な子なんだな。
「えーと、俺は誠って言うんだけど、君の名前は?」
セリーヌさんに任せてどうにかなるならどうにかしてもらうけど、どうにかならないなら手を出さなくては。
「…………ロロ…………、ロロって言いますけれども…………」
俺との目線を露骨に逸らしながらも、返事はしてくれた。
「ロロちゃんかー。私はセリーヌって言うの。よろしくね」
「……よろしくお願いします……」
セリーヌさんに対しては抵抗してたけど、俺の参加であきらめたかのように素直になる。2対1では分が悪いと判断したか。
しかしずいぶんと特徴的と言うか何と言うか。
自信なさげな困り眉毛とタレ目に、さらっとした髪、小柄だけどとても可愛いのはいいとして、紫色のドレスみたいな服を纏っていて、何と言うか身分がありそうなのだ。セリーヌさんと初対面のときは、明らかに見た目も汚れていたし、体調も悪そうだったが、そんな感じがこのロロには無い。
「えーと、ロロ、なんでこの村にいるんだ? 1人か?」
「この村にもともと私がいたからです…………私は1人です…………、知り合いもいません…………」
「そっか」
ということは、ロロはここが幽霊村になる前にこの村に住んでいた子で、セリーヌさんと同じで、何かあって両親も不在ということかな。でもそれにしては見た目が小奇麗なんだよな……。
「ロロちゃん、この後行く宛はあるのかな?」
「…………特にありませんが…………」
「じゃあ一緒にしばらく住もうか? いいかな誠くん」
「……別にいいけど、セリーヌさんいいのか? 俺は面倒とか見れないし」
「いいよっ。1人でも2人でも私がお料理とお掃除がんばっちゃうよ!」
「で、でもあの……私は……」
「遠慮しないでっ! じゃあよろしくね」
「く、苦しいです……」
こうして、俺の家に新たな住人が増えることになった。




