11話 元幽霊村の住宅
「こんにちは、本日はお呼び立てごめんなさいです」
俺はのんびり1ヶ月くらい過ごしていると、ギルドからのお呼び出しがあり、セリーヌさんと共にギルドに行った。
「あれ? あまり見ない顔だね」
家事手伝い関係でよくギルドに来ているセリーヌさんが、受付の人の顔を見てそう言う。
「はい、私は最近まで、冒険者として活動してたんですけど、なかなか成果が出せなかったので、一旦引退して、こちらから世界を見てみようと思いましてー。あ、私はマリートって言います。しばらくは受付をするので、よろしくお願いしますー」
マリートさんか。何か知らんけど、妙に気になる感じの人だな。ずいぶん長い銀髪ロングヘアーをツインテールにして、顔は大人っぽいのに、超アニメ声。要素が濃い。
「えーと、それで、今日は何を?」
「はいー。以前あなたがクリアしたクエストの幽霊村の現場の整備が終わりましてー、約束どおり1件家をおゆずりする話が出ましたので、そのお知らせですー。都合のよろしい日に直接村にお伺いしていただければ、その憂慮をしていただけるそうですー」
「あー、そういえばそんな話あったな」
金銭面での余裕があるので、宿屋でもよかったが、やはり自分の家はほしいな。
「もし本日やることがないのでしたら、今からでも手配いたしますけどー」
「そうだな。ちょうど今日で宿屋の宿泊も終わるし、顔出してくるかな」
「分かりましたー。では今日の午後くらいに、村に直接行ってくださいー」
マリートさんに言われて、俺は村に向かうことにした。
「ではこちらの家をお譲りします」
村に到着すると、既に商人のガイツという人がいて、とんとん拍子に話が進んだ。
「いいんですか。本当に」
「何をおっしゃいますか。この村に家を建てて売れるなどと、これまで不可能だと思っておりましたが、その可能性が得られるだけでもありがたいのです。あなたの名前はギルドで広まりました。あなたが住んでくれるのであれば、仮に幽霊騒動が起こっても問題ないと、さすがにすぐには無理でも、将来的に住んでもいいという話が多くありました。ですから、追加のクエストとして、この村でしばらく生活をしていただきたいです」
「……家をただでもらった上に、ここに住んでお金をもらうんですか?」
「そういうことです」
「そこまでしてもらっていいんですか?」
「いいんです。この土地が完全に使い物にならなくなるよりは、ずっといいです。そして、もしよろしければ、専属での契約も結んでいただければ……」
「専属?」
何か面倒そうだな。
「あ、そこまで深刻に考えないでください。専属とは言っても、私の依頼を絶対に受けてもらう必要はありません。ただ、他のクエストと被ったときに、私の用事を優先していただきたいだけです」
「それくらいならいいかな」
「もちろんいつでも解除してもらって構いません。実は私のところでは近々南の森を開拓して、住宅地にしていこうという計画があります。そのときに、同じような事例が起こらないとも言えませんから。長年問題だった幽霊騒ぎを解決できるあなたの存在は貴重ですから」
「分かりました」
「では失礼」
というわけで、俺はこの村。名前はサカ村と言うらしい場所に家を構えることになった。
「とはいっても静かだなー」
幽霊の騒動が無くなり、綺麗に開拓されているので、前来た時みたいな不気味な雰囲気はなくなっているのだが、幽霊の雰囲気すら無くなっているので、耳がキーンとするほど静かである。誰もいないからな。
「ふふふーん、ふふふーん♪」
セリーヌさんが鼻歌まじりで掃除をしている。
セリーヌさんは家事が得意であるが、同時に好きでもある。
散らかっている場所とかを見ると、本当に楽しそうに掃除し始める。
新築と言うことで、ある程度は綺麗になっていたが、それでもやや本人には気になるところがあるのか、細かいところの埃をとったり、インテリアを揃えたりしている。
俺は何をしているかというと、魔物退治である。
アルバンティーアでは国境沿いに検問もあるし、定期的に騎士や冒険者のクエストとして、魔物退治をしているので何もしなくてもいい。
ただ、この村、サカ村にはまだそういうシステムがない。ここに出てくる魔物を確認してすることもガイツさんからのクエストに入っていた。
俺が魔物を見つけなくても、あっちから来たのを俺のスキルセレクトさんが勝手に処理してくれるので、別に問題なかった。セリーヌさんは原則俺の側から離れないから、まず危険にはならないしな。
しかもこれ魔物倒すたびに、クエストクリアしたと判定されるらしく、3か月に1回わざわざクエストを探すこともない。
ついでに俺のスキルセレクトが何ができるかのチェックもできるし、一石二鳥である。
約1週間で出てきた魔物および撃退したスキルセレクトは以下の通りである。
VSスライム (スキルセレクト 爆破霧散 スキルポイント10 スライムが跡形もなく消滅)
VSポイズンスライム(スキルセレクト 毒素反射 スキルポイント5 毒効果無効、交換を相手に跳ね返し、相手の能力を無視して、2倍の効果で毒状態にする)
VSキメラ (スキルセレクト 放電現象 スキルポイント10 空飛んでる魔物はキメラに限らずほぼ一撃)
VSスケルトン (スキルセレクト 万物引火 スキルポイント15 発火条件を無視して火をつけて燃やし尽くす)
VS魔虫 (スキルセレクト 輝細雪刃 スキルポイント20 小さな無数の氷の刃が散弾銃のように飛ぶ。小さな相手に有効)
VSガーゴイル (スキルセレクト 信号操作スキルポイント15 本能的、あるいは操られて動いている相手の行動を不可能にする。ゴーレムなどにも有効)
大体これくらいで、この辺にいる魔物は大丈夫である。属性も方向性もめちゃくちゃで、一貫性が相変わらず無い。