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プロローグ 

「…………ここが天国かな?」


俺の名前は大山誠おおやままこと享年19歳。俺はそれを自覚している。


どう考えても俺は死ぬようなことをしたのだから、死んだに決まっているし、見た感じここが病院ではないことはわかるので、おそらく天国だ。地獄に落ちるようなことはしていないと思うし、別に地獄でもいいけど。


「残念ながら、ここは天国ではございません」


「おお?」


俺は驚いてのけぞった。ぽけーっとしていたら、目の前に急に人が現れたらそりゃ驚く。


「どこから出てきたんですか」


「そんなこと、私は神なのですから、当然ですわ」


「神様? あの神様ですか?」


「どの神様をいうのかは分かりませんが、おおよそあなたの思っている神様と思っていただいて大丈夫です」


「神様って俺のイメージだと、ひげもじゃおじいさんか、ちょっと妖艶なお姉さんのイメージあったんですけど、違うもんですね」


俺の目の前にいるのは、正直10代でも通じそうなほど若い少女だった。


「そういう神様はもっと高位の存在ですね。私はまだ成り立てですから、いわゆる下っ端の神様です」


「へー」


「それよりも、おめでとうございます」


「おめでたい? あ、俺天国にやっぱいけるんですかね」


死後の神様からの祝福、考えられるのはそういうことだ。


「いえいえ、あなたは転移者に選ばれました! 違う世界にそのままの姿で転移していただいて、その世界を救っていただきます」


「遠慮します」


「はい、そうでしょうね。いきなり言われても分からない……、え? 断る?」


「はい、嫌です」


俺の言ったことを信じられないともいう表情で見てくる。そんな顔をされても困る。


「お、おかしいなー。あなたって人生に絶望して、自殺してお亡くなりになったんですよね?」


「まぁ自殺に近いといえば近いんですが、原因の100%が俺じゃないので、アレは自殺じゃないです」


「どういうことですか?」


「俺の住んでるマンションが火事になったんです。もちろん原因は俺じゃないですけどね。それで、あえて逃げなかっただけです。だから、自殺と言えば、自殺ですけど、多分あっちじゃ、事故死ってことになるんじゃないですか? 逃げ遅れたとかで」


「な、なぜそのようなことを?」


「俺はもう14くらいの頃から、人生に絶望していました。毎日毎日死にたくて仕方ありませんでした。でも、俺は家族もきちんと健在で、友人もいて、志望大学にも通えて順調でした。そんな俺が自殺をすれば、きっと悲しむ人が多いでしょう。ですから、自殺だけはしてはいけないと思いました。俺はめぐまれているのですから、自分の命を自分で絶つことだけはしてはいけないと」


「で、でも結局は悲しませてしまうのでは?」


「悲しませるのは嫌ですけど、俺の意思で死ぬ場合と、別の原因で死ぬ場合では、周りに与える影響が違います。たとえば、車に轢かれる、通り魔に殺される。病死。これらなら、確かに悲しまれはするでしょうが、自殺と違って俺に責任はありません。俺は毎日思ってました。あの車が俺を轢いてくれないか、夜道を歩いていたら、刺されないか、病気にかからないかって」


「…………しかし、あなたの人生は充実しているでしょう。自殺の理由が分かりません」


「理由があったら、自殺してもいいんですかね? 俺は何もしたくないんですよ。人生はわずらわしい。ただ生きているだけでは評価されない。何かしていないと認められない。俺がダラダラしていると、どっかに遊びにいけと休日のあり方まで否定され、彼女がいらない結婚したくないと言えば、それも悪だという。俺は学校休まず通って、勉強という必要最低限をしているのに、それを回りは認めない。人生は、必要最低限のことだけをするということを認めない。だから、俺は早く死んで、次は人間以外に生まれたいと思っていたんです。ですから、転移したくありません」


「えー、まさかのですよ……、私にやっと回ってきたと思ったら、こんなのですか……」


神様がすごく落胆していたが。俺は知らん。


「回ってくるってのはなんですか」


「いわゆる転移を担当する神様の担当があるんですよ。それで転移者が活躍すれば、その神様は評価されます。でも最近は神様の数も多いので、1人当たりの担当できる転移者も限られてます。私はかなり下っ端ですから、あなたがようやく始めての担当なんです」


「そっか。まぁそれはいいから、俺を天国に送ってくれ。次の人生待つから、もしよければ貝になりたい」


「困ります!」


「困る? あ、もしかして、もう決まってるんですか? 転移すること」


それだと面倒だな。


「い、いいえ。あなたには転生と天国に行って生まれ変わりを待つ2つの選択肢はあります」


「ならいいじゃないですか。俺天国行きますよ」


「あ、あのですね。先ほど人生に絶望して自殺した人って言う話したじゃないですか?」


「しましたね」


「そういう人は天国に行く前にここを通って、転移と天国を選びます。あ、自殺に限らず、事故死とかでも、人生に絶望している人も来ることはありますけど、大抵ここに来る人は、転移を選びます。転移は大抵いい人生を遅れますからね。いいスキルを与えて、英雄になってモテモテですから」


「へー、それはすごいですね」


「何か食いつき悪いですね。モテモテとか英雄とかに興味ないんですか?」


「ないです。俺自分のこと嫌いなんで、女子にもてたくないです。自分の遺伝子が入った子供を愛せる自信がないので、結婚したくないんです。あと、自分の知らない人に、自分のこと知られてるのも気持ち悪いので嫌です」


これは本音である。19年生きてきて、まともに女子と会話したこともない。あ、業務上の会話はするよ。プライベートな会話をしないということ。


「ど、どこまでこじらせているですか。あ、あのー。本当にお願いできませんか? 転移してもらえないと、あなたが天国に行くことになって、私の評価がもっと下がっていってしまいますし……」


「あなたの評価は知ったことではないですが」


「て、天国に行っても、娯楽も何もないですよ。生まれ変わるまで、ただ、ダラダラ日向ぼっこと昼寝ですよ」


「最高じゃないですか。何も考えなくてもいいですし」


「…………本当に駄目ですか? 私ずっと異世界に人を送ってないので、けっこう何でもスキルをあなたにつけれますよ?」


「スキル?」


「あ、はい。異世界に行って活躍してもらうとは行っても、何もないのではダメですからね。言語理解はデフォルトでついていて、他にもう1つお望みのものをつけれます。そしてですね、ベテランの人だと何度も送ってるので、強くても融通の利くスキルはつけられません。神様にも魔力はありますから、あまり無理をすると、次が辛くなりますから。でも、私ははじめてで、おそらく次もなかなか無いでしょうから、あなたが望むスキルをほぼ100%与えられますよ」


「……本当何も考えなくてもいいんでしたら、考えますけど……」


「……厳密に言うと、何も考えないのはちょっと困るんですが……、たとえば、あなたがいる町とかに、敵が来たら、撃退するくらいのことはしていただけませんか?」


「それくらいなら。能動的には動きませんが、受動的にならいいです」


俺は根っからのめんどくさがりや。自分からは何もしない。そして、イエスマンで事なかれ主義。でも目の前で起きた問題くらいなら、無視はしない。いわゆる受身型である。


まぁそれに、天国に行けたとして、次に必ず俺の望む生まれ変わりができるとは限らない。だったら、さほど何も考えなくてもいいことを確定してるなら、そんなに悪い案でもないだろう。


「その条件を受け入れます。では、この能力を……、あ、時間が来てしまいました。でも、本当に何も考えなくてもいいスキルなので、説明ははぶきます! ではどうぞ異世界へ」


「説明をはぶくなー、わー」


そして俺の視界は真っ白になった。



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