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Big Enough  作者: 朝楽
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 二人のカウボーイは馬に乗っていました。一人は栗色の馬で、一歩進むたびに隆々とした筋肉の動きに合わせて光沢をちらつかせていました。もう一人はくたびれてた白毛の馬でした。二人はだだっ広い砂漠を進んでいました。

 「相棒、そろそろいいだろう?干肉一つおくれよ」

 「駄目だ。出発の前に二人で等しく分けたろう。お前は自分の分を早々に食っちまった。俺は昼時まで残して置きたいからな」

 答えた白毛の馬の方のカウボーイが、腰のガンベルトの隣に付けたポーチを触る仕草をしました。栗色の馬の方のカウボーイが、恨めしそうにそれを見ます。白毛の方はわざとらしく目を逸らしました。そして馬を半身だけ前に出させました。

 「言っとくけどな、今日狩る牛も山分けだからな。おまえが多く狩ったとしても、約束通りだからな」

 「分かってるよ。約束だからな。それに、昨日だってお前の方が沢山狩ったのに、山分けした。今日俺が多くを狩ったとして、多くを貰おうだなんて、そんな都合の良いこと言うほどには飢えちゃいないさ」

 「ま、これまでにお前が俺より多くを狩ったことなんて、一度もないけどな」

 そんな他愛のない会話をしながら二人は先に進みました。進んでも進んでも、起伏の一切ない真っ平らな砂漠が続いているのでした。砂漠と言っても砂利や岩石の多い固い地面だったので、馬は快適そうに走っていました。空は遠すぎて目の前にあるかと思えるくらい透き通った青をしていて、雲は一切ありませんでした。ならば、砂漠と空の間には定規で引いたような地平線があるかというと、そうではありませんでした。栗毛のカウボーイが言いました。

 「なぁ、あの岩山の向こう、行ったことがあるか?」

 「ないよ。行きたいと思ったことも、ないね」

 地平線は全方位が大きな岩山に縁取られていました。砂漠は円弧状の岩山に取り囲まれていたのです。

 「そうなのか?俺はたまに行ってみたいと考えるね。だってさ、俺たちはずっとこの砂漠で暮らしているだろう。どこを見ても砂漠だ。毎日牛を狩ってばかり。飽きてしまわないか?」

 「岩山の向こうに行っても同じことさ。岩山の向こうに、別の世界が広がっていようと、別の世界にいることが慣れてしまえば、飽きてしまうさ。ところで、あの岩山の向こうには、“海”というものがあるらしいな。“海”というのはな、水で出来た砂漠のことだ」

 「なんだそれは。砂漠が水で出来ているなんてあり得ないだろう。それより、その話はどこで聞いたんだ?あの村には俺とお前しか住んでいないはずだが」

 「誰かに聞いたわけじゃない。知識として知っていただけだ」

 足取りが重くなったので、白毛のカウボーイは拍車を馬に食らわせました。白毛のカウボーイが追いついてから、栗毛のカウボーイが言いました。

 「よく分からないな。でも……。なぁ、行ってみないか?あの岩山の向こうに」

 「やめておけ。“海”というのは恐ろしいものらしいからな。それに“海”の水は飲むことが出来ないらしいぞ」

 「でも、一度見るくらいはしたいと思わないか?たとえ危険なものであったとしても、岩山の影から、ちらと見るくらいは……、ん?何だ?何か聞こえるぞ」

 二人のカウボーイが耳にしたのは、甲高い口笛でした。

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