激戦
「全軍城門を出て敵を向かい打て!」
テレジアの命令の元でアントウェルペン軍は城門を出て戦いを始める。アントウェルペン軍が城門を出て陣形を組むのを阻止するようにシュタウフェン軍も全軍に攻撃命令を出す。
「敵のウルフ兵が来るにゃー、弓を構えにゃ、撃てにゃー」
素早く展開したネ族が弓を構えて放つ、ネ族は動態視力に優れており、動く敵に対しての命中力はエルフの弓兵を凌ぐと言われている。白兵戦闘能力は獣人族の中では弱い方だが動きが身軽で壁登りもでき、夜眼も効くため非常に強く、獣人族の中では種族を超えて民族レベルまで昇華した人である。
「槍を構えろ!撃てええええええ」
接近して来たウルフ兵による投げ槍攻撃が開始される。ウルフ兵は魔法により速力が強化されて平均時速120㎞を超える高速で走りながら強靭な筋力で背中に数本の投げ槍を背負い投げてくる。投げ槍の威力は凄まじく槍に付けられた魔力石が着弾と共に爆発するように仕掛けられている。それによって周囲にいた兵士共々爆発で吹き飛ぶのである。
「怯むなあああ陣形を整えろおおおお」
防御魔術兵に守られながら魔法石で防御力を高めた重装歩兵が進む、彼らも魔法で速度を上げており、時速60㎞以上で走り陣形を整える。
「敵の鉄条網を突破せよ!」
シュタウフェン軍の重装歩兵が鉄条網を壊してアントウェルペンの重装歩兵に近づく、それを援護するように重魔導砲兵が支援射撃を行い、さらに弓兵と魔法兵が攻撃を行う、ウルフ兵が重装歩兵を側面から支援して突撃してきた。
「向かい打てええええ」
アントウェルペン側も重魔導砲を発射する、さらに城壁からバリスタが猛烈な勢いで発射され、投石機からは火球となった石が発射される。城壁にいる長弓兵と魔法兵による射撃も行われた。外ではネ族弓兵とボウガンを構えた市民兵、迫撃砲のように魔法で支援する兵士などが接近する兵士に攻撃を行う。最前列には敵を迎え撃つ重装歩兵、側面を守る獣人兵が敵を正面から向かい打った。
その頃、市内では順調に降下してきた勇者軍に対しての殲滅戦が行われた。当初こそ勢いは勇者軍にあったものの…市民兵主体とはいえ数で圧倒し、セルディウス配下の三千人の勇者討伐軍が出張ってくると戦いは次第に勇者軍が押されることとなった。
「何か騒がしいな…」
酒場でテーブルに突っ伏していた男が起きて近くのテーブルでお酒を飲んでいた男に尋ねる。
「ああ、どうやら敵が攻めてきたようだ」
「ほう、そうか…マスターお酒くれ!」
「あんた傭兵じゃないのか?」
「あんたこそ…武器持っているし戦わないのか?」
「俺は商人として来ただけだ…あと義理の息子が勇者討伐軍に参加していてな…」
「奇遇だな!俺の娘も勇者討伐軍に参加しているんだ!!」
外が騒がしいのを酒のつまみにして二人の男はお酒を飲み続けた。
「ケンティウス様、我々も外に出た戦った方が…」
「おいおい、ケリー、外の情勢がヤバくなったら知らせろ!と言っただろう?」
「しかし…」
「お前は外を見張ってろ!」
ケンティウスは傍にいた数人の兵士に命じるとお酒を飲むのを再開した。
「見つけたぞ!北辺の勇者!!」
セルディウスは遂に北辺の勇者を見つけた、見つけると同時に接近を図る、叫ばなければ、もう少し近づけたかもしれないが叫ばずにはいられなかった。セルディウスの叫びを聞いて驚いた北辺の勇者は町への攻撃を止めて近づいてくるセルディウスに天力放出により強力な天力の一撃を聖剣に帯びさせて放出した。放出された一撃はセルディウスに向かっていったが一撃目はセルディウスは当たる直前で空中で宙返りして回避する。
「…」
北辺の勇者は無言のまま自らの全身を巡る天力を増やして身体全体の防御力を上昇させる。続いて移動速度を上昇させる。これらと並行して二発目の天力放出を発射する。
「むだあああああ」
セルディウスは二発目を自らの天力放出で相殺させた。二つの力がぶつかると爆発を起こす。
「くらええええ」
爆発すると同時に北辺の勇者が近づいてきて三発目をゼロ距離で食らわせようとする。
「むだだといっているだろおおお」
セルディウスは三発目を回避すると北辺の勇者を数回切りつける。速度も剣術もセルディウスが上回っているのでセルディウスの攻撃は直撃するが北辺の勇者の攻撃は直撃はしない。しかし、北辺の勇者は自らの圧倒的な天力を使って攻撃速度を上昇させ、さらに天力放出で全身から天力を放出させてセルディウスを近づけないようにする。セルディウスが離れるとすかさず近づいて攻撃してきた。
「クソ!」
何回も建物を蹴りながら激しく空中でぶつかるが…北辺の勇者の方が天力が馬鹿力すぎて空中にいられる時間が長い、その分相手の方が空中戦が有利だった。また、一発一発の攻撃が強力で直撃すると痛いダメージが入った。逆にこちらは遥かに攻撃を直撃させているのに膨大な天力が強靭な耐久力となって敵にダメージが入っているようには感じられなかった。
「さて、行くとするかの!」
西側の正門に設置された前線司令部で戦局を見守っていたハイゼンが席から立ちあがると外に出て呟いた。
「投げてみるか!」
軽い口調で言うと近くに置いてあった投げ槍を掴むと敵の本陣を守る兵士の集団に向けて槍を投擲した。
ヒューン!ドオーン!ドカーン!
物凄い速度で飛んだ槍は敵の集団にぶつかると爆発して周囲の兵士達を吹き飛ばした。
「行くぞ!野郎ども!!」
それを合図にサヴィアスの傭兵隊のリーダーのサリファスがハイゼンに続いて城壁を降りて敵陣に突撃していく、それに続いてサヴィアスの傭兵達が突撃していった。彼らの目標はガウヴィンの首を取ることであった。
「サヴィアスの傭兵どもだ!殺せえええ」
サヴィアスの傭兵達に逸早く気付いて迎撃してきたのはウルフ兵達だった。彼らは強靭な肉体と速度を持っていて集団戦闘を非常に得意としていた。しかし、サヴィアスのサリファス兄弟の一人で女性のサリファが敵のウルフ兵の側面に高速で回り込んで首を切断していく、サヴィアスの傭兵の前にはウルフ兵といえども容易く陣形を崩されてしまう。
「他愛も無い、一気にたたみかけるぞ!」
そうサリファが言った瞬間に黒い影がサリファに襲いかかろうとした。それに対して白い影が黒い影の横合いを攻撃する。
ガキーン!
黒い影はガウヴィンで白い影はハイゼンであった。周囲にいたウルフ兵とサリファは周囲から一時的に退避する。ここに大将対決と言って良い対決が始まる。
長い話になりそうなので分割することにしました。(大筋は出来ているけど…面白くする方法を考えて悩んでいます。)
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