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アントウェルペン降下作戦

 アントウェルペンの周囲を囲むシュタウフェン同盟の『軍勢に動きあり!』の情報を受け取り、テレジアと側近たちは西側の正門にある前線司令部に入り、情勢を見守る。


「敵は攻めてくるかしら?」

「間違いなく、攻めてくるだろう」

「バリアーを破るつもりかしら?」

「破られれば城門を出て戦う方が良いだろう」


 バリアーを破られれば兵士は動揺する。しかし、城門を出て迎撃に出れば外には鉄条網があり、城壁からの援護がある。圧倒的にアントウェルペン陣営が有利になる。


「敵は本気で攻めてくる?」

「そう考えた方が無難だな」


 単純にアントウェルペンを攻めようとしたら攻略は難しい、だが、奇策で攻めるのは単純に攻めるより難しいのがアントウェルペンの難攻不落の由縁なのである。市民を含む民衆は訓練を受けている兵士でもあり、結束は固い、裏切りは期待できない。地下は要塞化されていて川や貯水槽があるなど大変だからである。



 大型魔導砲は巨大な槍の形をしていた。大量の魔導士で魔力を充填するのである。バリアーを破るために大量の魔力石も使用する。そのため、発射するのは現在のシュタウフェン家の力では一度が限界である。


「発射準備が整いました。」

「よし、勇者にも降下準備に入るよう命じろ!」


 ガウヴィンが勇者に命令を出すと勇者軍が航空戦力と共にアントウェルペン上空へと向かう。


「陛下、準備が整いました。」

「よし、魔導砲を発射しろ!」


大型魔導砲は発射された。



 アントウェルペン側は無理にバリヤーを守ろうとはしていなかった。バリアーを守ろうとせずに敵の攻撃を受け止めてバリヤーと相殺しようと考えたのである。もちろん一時的にバリヤーを破られるリスクはあるが修復する手間が楽になるので戦術としては妥当であった。


「バリヤーが破られるぞ!」


 その言葉と共にアントウェルペンに張られていたバリヤーが破られてしまった。アントウェルペンにいた民衆も空を見上げて状況を察知した。



アントウェルペン上空


「炎天の輝きを見よ!ファイヤーボール!!」


 アステレアが上空で魔術術式を展開して数万発のファイヤーボールを一度にアントウェルペンに向けて放った。


「一発も東側には当てるなよ!防御術式展開!!」


 バリヤーが破られたので王城から緊急展開すう形で戦乙女たちが陣形を組んで防御術式を展開した。ファイヤーボールは戦乙女達の力で東側に着弾しなかったためアントウェルペンの工業生産量に影響は出なかった。それ以外の地区も各地区の魔術師などによって防がれたが幾つかは着弾した。特に西側は数千発が着弾して火災を引き起こすなど被害が出た。


「炎天よ!我に力を与えたまえ!!」


 リディアを狙ってアステレアが強力な術式を展開して強力な火炎の一撃を放った。まさに地獄の業火である。


「弱いな!痒い程度だぞ!!」


 リディアは防御術式を展開してアステレアの攻撃を正面で受け止めたが全くダメージを受けていなかった。


ヒュン!


 アステレアとリディアがいる間を大型のガマガエルが直下にあった水路から飛び出て通り過ぎていった。


ガバッ!(ガマガエルの口が開く音!)


 口の中から覗く顔に傷のある女性、彼女が指を立てて腕を出す。そしてガマガエルの口の前に大型の魔術術式を展開すると何かを呟いた瞬間に強力なレーザーのようなブレスを上空にいたシュタウフェン軍にh放った。


「そんな、馬鹿な!!」


 一瞬であった、ブレスは降下中の一万の兵士と支援用に上空に待機していた航空戦力ごと消し飛ばしてしまった。



 勇者軍三万のうち一万は消し飛んだが…残りの約二万の兵士はアントウェルペンに無事に降下して着地することに成功した。彼らは悪のアントウェルペンを倒す正義の味方という大義を胸に抱いていた。


「ここが悪の根拠地ね!お仕置きしてやるわ!!」


 戦争中なのに正義のヒロイン気取りのアリーナを始めとした負傷して参加出来ないミシェル・ネイを除く北辺の勇者を含む最強の六人の仲間たちが降下していた。


「ネイの仇を討つぞ!」

「おおおおおおお!!」


 彼らは各地に分散して攻撃を始めた。やっていることは破壊であり、彼らの正義気取りで数多くの人が殺されていくという悲惨なものではあった。


「ふざけるな!しねええええ」


 敵の奇襲で最初は不意を突かれた市民達だったが事態を飲み込み始めると傍に置いてあった武器を手にとって戦い始めた。降下した勇者軍は市民兵達に攻撃される。


「どうして!悪の権化に味方するのですか!!」


 そんなアリーナの意味不明な言動など誰も聞くわけも無く、戦いが繰り広げられた。


「クソッ、ネイチェル!俺に防御魔法と強化魔法をかけてくれ!!」

「分かりました!光の眷属達よ!!バルサンの防御力を上げよ!!」


 ネイチェルは必死に詠唱してバルサンの防御力と各種ステータスを上昇させた。


「助かる!うん?!なんだ、おまえは!名を名乗れい!!」



 セルディウスはシーマ達と公園にいたが異変に気付いて迎撃に向かうことにした。ラディアをセルヴィウスに預けて彼に王城に向かうよう命じた。シーマとヴァリエールに対空迎撃を命じた。そしてセルディウスは市内にいる敵を探していたら数人の演技がかった集団に出くわした。


「名を名乗れとか凄い世界観だな!」

「なにを言っている!騎士であれば当然だ!!」

「どこの騎士団なんだい?」

「我は勇者軍の最強の仲間にして騎士であるバルサンだ!!」


 セルディウスは呆れるしか無いのである。故に直ぐに相手に切りかかるのもバカバカしいので呆れながら相手に聞いてみたが意味不明な回答で理解が出来ない。


「くだらない気持ちで戦うなら止めてくれないか?」

「下らないだと!我らはお主のように悪に味方する者達を討つために来たのだぞ!!」


 セルディウスは怒る気さえ生じないほど呆れざるおえない。しかし、何も反論しないのも癪に障ったので聞いてみた。


「人を殺すことは悪では無いのか?」

「おまえ達のように人を人と思わずに金で働く連中に言われたくないわい!」

「そうよ!そうよ!」(ネイチェルの声)

「おまえのような悪には我の鉄壁の防御は破れまい!」


 歌舞伎のような芝居かかった動きでバルサンが防御の姿勢になった。


「そうか、なら死ぬことはあるまい!」


 セルディウスは一瞬でバルサンの右横に来ると彼に言葉を投げかけた。


バルサンは反応が出来なかった。


盾を構えていた腕を剣で真っ二つにされた。


バルサンが痛みで叫び声を上げる前に…


セルディウスはバルサンの胴体を切り返した剣で


真っ二つに切り裂いてしまった。


「なんだ、死ぬじゃないか…」


 バルサンの敗因は弱いことでは無い、バルサンと同じ能力でもセルディウスの攻撃を防ぐ人間は存在している。バルサンが簡単に破れたのは『相手も自分と同等以上の力を持っている』ということを理解していなかったからである。今まで素人相手に圧勝出来たからと言って軍事訓練を受けたプロに戦って勝てると思える神経は凄いと思うが…彼は北辺の勇者みたいな人外では無かった。



分割されたバルサンが驚愕の表情で地面に落ちる前に


後ろにいたネイチェルに向かって突撃する。


「あああバルサンんんんん」

「ネイチェルううううう」


それに対して


バルサンの左後方にいたクリフトがネイチェルを助けようと


セルディウスに剣を突き立てるように向かってきた。


それに気付いて後ろに振り向きざま


クリフトの剣を回避し


セルディウスはクリフト胴体をバルサンのように


真っ二つにした。


そして反転するとネイチェルに向かう。


ネイチェルは必死に魔法を唱えて攻撃する。


ネイチェルの上級魔法『業火球』である。


しかし、ファイヤーボールだと認識したセルディウスは避けずに


突進した。


球はセルディウスに直撃するも霧散して消えた。


 弱いのはネイチェルの魔力が弱いからでは無い、むしろネイチェルは魔力が世界の平均値より高い、ネイチェルより低い魔力でもセルディウスと渡り合える人間はいる。では何が違うのか?


 それはネイチェルが魔法は詠唱しないとダメという固定概念を持っているからである。魔法はイメージが重要である。術式を組まないと使えない魔術とは違う。上級者は無詠唱でも攻撃できる。だが、あえて術式を展開したり詠唱をする、理由はイメージを強固にして威力と精度を上昇させるためである。これらは本人の魔力と想像力しだいで幾らでも強力にできる。


 それをネイチェルは詠唱するだけなので魔法の威力も精度もガバガバで弱すぎて無意味なのである。まさに軍事教育を受けた兵士に及ばないレベルであった。


「なんでえええええ」(絶望)


叫ぶネイチェルを黙れ!と言わんばかりに首をセルディウスは切断した。


ネイチェルの胴体が後ろに倒れる。


切断された頭部がネイチェルの腹部に着地した。


「詰まらない者を切ってしまった。」


 そんな捨て台詞と共にセルディウスは前にいた敵兵士を睨むと突撃して切りかかっていった。


この世界観での魔法や魔術、魔導の違いを説明していきたいですね。


 ちなみに魔導は魔力の流れや力の作用を研究するための用語です。魔導士は主に魔力の流れや作用を重視する人のことを指します。


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