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アントウェルペン包囲網を阻止せよ!

マイページの活動報告でキャラ紹介などを始めました。

 男爵側の戦略は三個軍集団でアントウェルペン同盟の切り崩しにあった。A軍集団はシュタウフェン家次男グレーデルが率いている。戦力は勇者軍、ベーメン軍、アルカディア地域北部諸侯が加わった戦力である。このA軍集団はカルダン攻略を成し遂げることが最重要課題となった。


 B軍集団はガウヴィン率いる本隊と勇者率いる勇者軍が主力となっている。このB軍集団は当初はアントウェルペン同盟の中部を攻略することになっていた。攻略と言っても本気で都市を攻めると時間がかかる。だからといって毎回重魔導砲を乱発すると弾切れになって補給が大変になってしまう。だからこそ圧倒的な力を見せて降伏を誘うつもりであった。しかし、降伏する都市や諸侯は現れなかった。痺れを切らしたガウヴィンはアントウェルペンに直接攻撃を仕掛けることにした。


「勇者軍にはロムール川からの補給を絶つためにアントウェルペン東側の包囲をお願いしたい。」

「分かりました。ご期待に応えられるように頑張らせていただきます。」

「頼んだぞ、ネイ」


 ガルジアに頼まれた。ミシェル・ネイは勇者軍40万人を引きいて北側から回り込むようにロムール川に向かって進軍した。彼らの装備は一流である。訓練も三か月しかしていないが良く動き、よく戦ってくれていた。


「チャールズの奴が南側を包囲すれば問題無いのだが…」


 チャールズとはシュタウフェン家の長男である。彼がC軍集団を率いていた。この軍にはアーヘン及び中部諸侯が加わっている。彼らはアントウェルペンの南側を包囲するべく進軍していた。



ミシェル・ネイ率いる勇者軍


「包囲用の囲いを作りながら進軍するのは…」


 ミシェル・ネイが困惑するのも仕方が無った。叩きには慣れ始めた勇者軍だが…正規軍ではない、ましてや包囲用の柵や砦を建設することほど彼らにとって困難な作業は無かった。


「俺たち戦いに来たんじゃないのかよ…」

「こんなの戦争じゃねぇ」


 そんな文句があちこちから聞こえてくる。勇者軍は装備は一流で訓練も三か月だけだがしていた…しかし、しょせんはゴロツキか難民などの貧困層中心の寄せ集め集団であることは隠しきれないレベルであった。


「もうやだよ~」


 そんな弱音を誰かが言い始めたころ、突然進軍を知らせる太鼓が鳴り響いて凄い音が近づいてきた。


ザイード率いる3万のアントウェルペン軍の奇襲である。


戦いは一方的なザイード側の攻撃で終始した。練度もそうだが柵や砦を作ろうとして兵力を縦に並べていた勇者軍は簡単に分断されて蹴散らされたのである。


「怯むな!数は我が方が多い!!進め!進め!!」


ミシェル・ネイは数で勇者軍が勝っていると見抜いて兵力を集結させるとアントウェルペン軍に攻撃を仕掛けた。するとアントウェルペン軍は総崩れして逃走してアントウェルペンの東側にある大きな森に逃げていった。


「一気に攻め入れ!!」


 勇者軍は森に攻め入り、深く進攻し、目的地のロムール川まで到達した。そして勝どきを挙げて休憩に入ろうとした。


「攻撃を開始しろ!」


 そんな言葉と共に突然、勇者軍に弓矢が降り注いだ、弓が止むと一気に身を潜めていたアントウェルペン軍に攻撃された。勇者軍は大混乱となる。


「ええい、何故だ!クソッ態勢を整えろ!!」


 ミシェル・ネイは必死に兵士たちに命令した上で辺りを見渡すと一人の男に狙いを定めて一気に走り、ジャンプして男に切りかかった。


ネイの剣が男に到達する前に男はネイの攻撃を持っていた剣で受け止める。


「何者か!!」

「しねえええええ」

「クッ、若いのに頑張るではないか!」

「おまえのような奴は殺しとかないと駄目なんだ!」


そんなことを言ってネイが必死に男を攻撃したが男はネイの攻撃を華麗に受け流してネイが隙を見せたところで剣でネイの体を刺した。


「ググッ…」


剣で刺されてもネイの闘志は眼から消えない。


「若いのに根性があることは良いことだ、殺すには惜しいが…」


そう言いながら男はネイから剣を引き抜く、ネイは地面に倒れて男の前に頭を差し出す形になる。


「これで!おしまいだ!!」

「ザイード様!敵が態勢を整えて押し寄せてきます」


「ネイ様を救え!!」


そう言って勇者軍から弓矢が飛ばされてきた。ザイードは剣で弓を弾くと退却していった。



 この日、勇者軍40万は…3万のザイード隊に襲われた後に森に隠れていた2万の兵士と合流したザイード隊に攻撃されて10万近い死傷者を出して撃退された。


※勇者軍の全てが森に突入わけでは無い、しかし、それは何のハンデにもならない、何故ならザイードが率いていた東側の総兵力は15万人いたからである。ネイがザイードに倒されたことで結果的には勇者軍が撤退したことにより、勇者軍が全滅せずに済んだという幸運を生んだ。



 アントウェルペン内では市民が戦況を細かく伝える新聞を読んでは戦局を面白がりながら相変わらず呑気な日常が続けられた。


「はーい、クッキーが焼き上がったわ!」

「わぁ!マレージア様のお手製ですか!!」

「ええ、皆も食べて頂戴、テレジアもどう?」

「ええ、頂くわ」


 病気中とは言え、先の軍事パレードに参加したせいか母上は元気が出たらしく、久しぶりにクッキーなどを焼いて午後のティータイムに戦乙女など側近達に振舞う。母上と戦乙女達は完全に戦争中であることを忘れている。


「ねぇマレージア、この後、ガウヴィンはどう出てくるかしら?」

「そうね、アントウェルペンを直接狙うでしょうね」

「どうやって?」

「出来る限り、弱体化を狙うんじゃない?」


 お菓子を皆に配り終えて自分もお茶などを飲みながら呑気そうに物騒な話を平然とするマレージアにテレジアは落ち着きを保つのが限界という感じである。戦いの長期化と共にガウヴィン側はアントウェルペンの資産を没収し始めた。手始めは自領だった。その後にベーメン、アーヘンと続けている。これだけで既に被害額がウェルペン金貨に換算して2000万枚を超えているのでテレジアが焦燥感を募らせるのも当然であった。


※ウェルペン金貨、一枚=約30万円の価値がある。装飾が豪華で偽造防止の魔法までかけられていて金含有率が高い、ちなみに金などを魔力で作っても両替商に見せると即バレするので危険である。アントウェルペン金貨の偽造防止は物質以外の物を保証するためにかけられている。


「既に被害が多くて困ります!」

「相手はもっと苦しいはずよ?」


 マレージアの言う通りでシュタウフェン側も紙幣を含む通貨の価値が下がっている。理由はウェルペン同盟の両替商が通貨の交換を停止してしまったことが大きい、さらにアントウェルペンが受けている被害ほどでは無いが資産の凍結が行われている。通貨の交換停止はガリア帝国が債務を肩代わりすることで被害を抑えてはいた。


「資金もだけど食料や物資は向こうの方が調達がしにくいはずよ」


 これは必然である、ガリアは山岳が国土の大半を占めていて人口が多いために食料の提供する余裕が無い、一大穀倉地帯であるセルギアは魔界帝国と戦争中で食料を輸出する能力が低下している。例え穀物を調達する当てがあっても市場をウェルペン陣営が抑えていて適正な価格では買うのは難しい状況である。


「物質的豊かさは完勝ね」

「ガリアからの支援を絶てれば良いけど…」


 工業力に関してはシュタウフェン側も相当あるので武器と防具には困らない、ただし、鉱物資源は兵器の生産能力に比べると厳しい、この点は鉱物資源が豊かで兵器関係が豊富なガリアが提供している可能性が高いだろう。


「ガリアも戦争をしているから魔光石や天光石に関しては提供は苦しいはずよ」

「その点はロムール地方を味方に付けている我が方が有利ね」


 魔光石&天光石とは自然環境で一定量生じる天然の魔力石である。魔界や天界では豊富に産出される。人間界では各地に一定量が降り注いだり、地下で蓄積されて産出される。ちなみにロムール地方は両方とも大量に産出されることで有名である。ロムール地方には西側に有名な十三魔族の家系の一つであるティベリア家が支配していて、彼らからは魔光石を輸入している。東側にロムールエルフが住んでおり、両者は仲が悪いがティベリア領を迂回してでもアントウェルペンに天光石を売りに来ている。それどころかロムールエルフはアントウェルペンが負けると困るとでも思ったのか傭兵という形の援軍まで寄こしてきている。


「守りが固いのは知っているけど…心配だわ」

「そんなに心配しても仕方ないんじゃない?」


テレジアの心配は尽きることが無かった。



 シュタウフェン同盟軍による。アントウェルペン包囲は進んでいた。東側の包囲は不十分なものの西、北、南は完全に包囲に成功した。試しに魔導砲を連射するがアントウェルペンを守るバリアは強固でビクともしなかった。


「大型魔導砲の準備は進んでいるか?」

「はい、陛下、既に充電作業に入っております。」

「よし、いいぞ、勇者は編成を済ませそうか?」

「はい、そちらも問題はありません」


 ガウヴィンは超魔導砲で一時的に敵のバリアを破壊して勇者を含む3万の戦力をアントウェルペン上空から降下させる作戦を立てた。狙いはアントウェルペンに被害を与えて早期降伏を実現しようと考えてのことである。


「炎狐将軍アステレア閣下が自分も作戦に参加させろ!と言っておりますがどうしますか?」

「大規模な戦力は送れない、上空から援護する程度には許可すると

言っておけ」


 アストテレアはシュタウフェン軍:第三軍司令官である。武闘派なせいかアントウェルペン攻略に積極的だ、彼女の力は確かなのでアントウェルペンの魔女共に負けることは無いだろう。


「作戦の準備を完璧にするのだ!」



 テレジアの元に魔女の代表である、水の魔女が訪れてきた。名をミレーヌと言うらしい。彼女は凶悪などと諸国では言われているがガルジアはミレーヌに実験施設を提供して受け入れた。


「テレジア様、こんにちは!」

「ええ、ミレーヌ様も、お元気なようで!」

「はい、おかげさまで研究も進んでおります。」

「今回は何の用件ですか?」

「お力をお貸ししたいと思いまして直接参戦を願い出ようと思い来ました。」


 魔女たちは主にアントウェルペンのバリアーの運営に力を貸してもらっている。それだけでは無く、参戦までするということらしい。


「願ってもいないことです!よろしくお願いいたします。」

「いえいえ、私もガルジア様を殺されて怒っているだけですので」


 パトロンを殺されて魔女達も新たな領主に自分たちの力を見せたいと思っているのかも知れない。参戦願いを伝えに来たミレーヌと幾つかの雑談をして話し合いは終わった。ミレーヌは帰っていった。


「水の神が怒らなければ良いですが…」

「彼女は元水の巫女でしたね。」

「はい、それもゼノギアの巫女です。水神様と対立して逃げているうちに悪名が付き、流れた末にアントウェルペンにいます。」

「大丈夫では無くて?水神様は気性が激しいと聞きますが同時に寛大だと聞いています。」


 ゼノギアはウェルペン本家の国だが同時に水の信徒の国でもある。共同統治という形態をとっている、水神教は水神様が任命した水の巫女が神の代理人として水の信徒達をまとめている。水神とは絶対神がお創りになられた元素神である。第一新世界ではアストレイアの支配下に入っているが第二新世界では半独立状態で権力を握っていると言われている。


「それより、ミレーヌ様はお歳はいくつなのかしら?」

「見た目よりは遥かに歳をとっているはずです。」

「先ほど来たのは可憐な少女だったは…」

「あれは魔力で創った、人形だと言われています。本体は昔の傷を治さずにいると聞いております。」


 ミレーヌは美しいと昔は評判だったらしい、先ほどの青髪碧眼の少女は傷が無い状態の本人のレプリカで本人は研究所から出ないという話である。


「戦いに出るのは、どちらなのかしら?」



セルディウス達


「アイス美味しいよー」

「うわぁ美味しい!」


 公園の噴水前でシーマとラディアがアイスを食べながら騒いでいる。こう見ると完全にシーマも子供にしか見えない。



セルディウス達は勇者討伐隊を編成して出撃の準備を整えつつあった。










いよいよ、決戦前という感じになっています。アストレア、ミレーヌ辺りの紹介も活動報告に投降しようと思います。


そういえば前回、ダルタニャン物語の話をしましたが、あれは本当に面白い、既に百年くらい前の話ですが…今のライトノベルよりライトノベルな物語になっています。(笑)性描写もあったりといろいろ過激です。


 作者の大デュマのお父さんは黒人で父親に母親と兄弟を奴隷として売られました。(残酷)しかし、優秀だったから売られずにナポレオンと一時肩を並べた将軍でした。そういう作者本人の歴史的背景とかも非常に面白い人です。


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