アントウェルペン侵攻作戦
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ベーメン王国は歴史ある国である。ベーメン王国は既にアントウェルペンと同盟を結んで以来、一世紀近くになる友好的な同盟国である。人口600万人以上の国であり、アルカディア地域では単独であれば最も大きい国で、この国の王は80歳の老人である。もうすぐ死にそうな王だが賢王として知られていた。
「閣下、敵に囲まれました。どう致しますか?」
部屋に入ってきた従者に聞かれたのはアントウェルペン商会:ベーメン支部のトップである。彼は大使も兼ねていた。ここは単なる商館では無く、大使館でもあるので本来なら攻撃される場所ではない、にもかかわらずベーメンが包囲してくるのはアントウェルペンのベーメンでの利権を奪い取ろうと考えているからである。
「妻たちは無事に逃げれそうか?」
「難しいでしょう、逃がした者の幾人かは捕まるでしょう…」
「卑劣な連中だ、権力があれば何をしても良いと考えているらしい」
「彼らからすれば我々が奪った側なのでしょう…」
「詭弁だな、アントウェルペンのお陰で利益を得ていた連中の筆頭がガウジ侯爵だと言うのに…」
王国の首都であるプラークの中心地の一角に商館はあった。商館の周りは堀と塀で囲まれていたが泥棒対策程度の意味しかない、建物も頑丈だが…兵力は三百人前後という程度のため、敵を撃退するなど不可能である。何せ敵は軽く10万人はいると考えられるからである。
大使は部屋から出ると吹き抜けの廊下に出て階下の広間にいる人々と降伏勧告を告げに来た使者に向けて告げる。
「アントウェルペンは何者にも屈すことは無い、自由は我らにあり、最後の一人になるまで戦おうではないか!!」
「おおおお!!」
皆猛々しく叫び声を上げると使者に詰め寄る、縄で縛られていた使者は顔を青くするが時既に遅い、使者は生きたまま首を切られて絶命した。
「まだ、降伏はしないようだな!!」
そんな軽口を言いあっていたベーメン軍に使者の首が投げ飛ばされた。使者の頭には紙が貼りつけられていた、紙には『裏切者には死を!!」と書かれていた。
「我々は、決して屈することは無い!かかってこい!!」
そうアントウェルペン側が窓から叫ぶ
「全軍、突撃しろー」
戦太鼓を叩いてベーメン軍は勇ましく突撃した。戦いは三日に及ぶ激戦だった。本当に最後の一兵までアントウェルペン側は戦った。大使も敵との戦闘で命を落とした。最終的にはアントウェルペン側が用意していた爆弾を爆発させて商館ごと吹き飛ばして終了した。
その後、逃げていた人達の一部は捕らえられた。たった三百人に三日も戦う羽目になって悔しいのかベーメン側は捕まった人を殺して首を切断して晒し首にした。中には女子供も含まれており、大使の家族も捕まっていた。これらは一部始終が潜伏していたスパイにより撮影されていた。
アーヘンでも同様のことが起きたが、こちらは大使を含む全員が敵の包囲網を突破してアントウェルペンまで脱出に成功した。
それら凶報と共に女子供まで晒し首にしたことを告げる記事は強烈な憤怒をアントウェルペン同盟の人々に与え、戦意が高揚して益々戦争は激しくなる。
アントウェルペン国境地帯
街道は障害物で国境は鉄条網で封鎖されていた。そこに幾人かの兵士が匍匐前進で近づくと爆弾を設置して爆発させた。シュタウフェン同盟軍によるアントウェルペン侵攻作戦の始まりである。
「砲撃開始!!」
「うてー」
国境近くに布陣した魔導重砲隊、大型の槍を一人が構える、脇にいる2~3人の充填兵が魔力を構えている人に充填する。そして構えている一人は狙いを定めると魔導砲を発射する。重魔導砲兵の下にはレールが敷かれており、発射すると同時に反動で後ろに下がる仕組みとなっている。威力は凄まじく、数階建ての建物が吹き飛ぶ威力である。
「全軍進撃開始!」
司令官が指示すると同時に歩兵が道を開けた場所を騎兵が突撃していく、さらに後ろに荷台に兵士を乗せた馬車が続いていった。軍が突撃すると黒竜騎士団を中心とした航空戦力が敵軍及び都市に爆撃するべく飛んでいった。
その日、シュタウフェン同盟軍は三個軍集団に分かれて各地の国境を突破した。ガウヴィンは勇者軍を信用しておらず、勇者には三つに兵を分けさせ補助軍として運用することにしていた。そのうちの精鋭をミシェル・ネイに率いさせた。ガウヴィンはネイを勇者軍の中では比較的マシと考えていたのである。
「敵軍を発見しました。」
「ようし、包囲して殲滅せよ!」
シュタウフェン軍の進撃を知った。ハーヴェイ伯爵率いる15万の兵力は敵を足止めしようと布陣していた。この軍勢にウルフ軍団が高い機動力を使って包囲を試みる、ハーヴェイは意図を察して動く最中にミシェル・ネイ率いる騎馬隊が突撃してハーヴェイの動きを止めてしまい、ハーヴェイ軍は完全に包囲されてしまった。テレジアの元に魔導通信が飛ばされた。「自由万歳!!我、玉砕する」という通信後にハーヴェイは突撃を命じて玉砕した。
「素晴らしい戦果だ!」
「お褒めいただいて光栄です!」
「ネイよ、どうせなら我が軍に仕官しないか?」
「いえ、私は勇者様に付いていきます」
「そうか、ならば剣を与えよう。」
ネイの活躍を見てガウヴィンはネイを気に入り剣を与えた。剣はガウヴィンが腰に差していた剣なので相当な業物であった。
「ありがたく、頂戴致します。」
ネイが仕官すると言っていたらガウヴィンは受け入れたかも知れない、しかし、断ることでガウヴィンに益々気に入られることになった。
戦いはベーメンからアントウェルペンに流れる川にある都市に移る、都市の名前はカルダンという。カルダンは大都市で人口120万人が暮す工業都市である。ここを落とせばアントウェルペンを包囲することが現実的に可能になる非常に大切な都市であった。
「砲撃開始!!」
「うてええええええ」
都市に向けて重魔導砲兵隊が砲撃を開始した。あっという間にカルダンは砲撃で廃墟の山に変わった。
「勇者軍を突撃させろ!」
ガウヴィンは何かを察して勇者軍に突撃を命じた。
「うおおおおおお」
雄たけびを上げながら勇者軍は都市に突入した、都市の中は静かだった。
「死体が無いぞ?」
誰かが疑問の声を上げた時だった。
「うてええええええ」
突然、廃墟から現れた民兵を主体とする軍隊に攻撃される。彼らは連射可能なボウガンを装備していた。
重量は重たいが魔力で軽く出来たのである。魔力が無い者も魔法石を使って軽くした。弓の技量のある者は弓を使用した。魔法が使える者は迫撃砲の如く突入してきた軍隊に砲撃した。
ドカーン!
「わあああああ」
「むかいうてえええええ」
激しい市街戦の始まりである。アントウェルペン軍は川の対岸に布陣していた。司令官はビルゼン・アントホーフェンである。アントウェルペンから川を遡るかたちで続々と物資と兵員を乗せた船が来る。
「兵士達よ!自由を守るために戦え!!」
そう教えられた兵士達は必死にシュタウフェン同盟軍と戦うことになる。
この頃、戦いは熾烈を極める。アントウェルペン一帯は元々湿地だが所々に丘や山が点在していた。植林された森もある、それらにアントウェルペン側は兵士を潜ませて近づいてきた敵に奇襲をかけては散々に打ち破るを繰り返した。ゲリラ戦術である。さらにアントウェルペンの商人たちは馬車にバリスタを乗せて敵陣に近づくとバリスタを発射後に引き上げるを繰り返した。『ヒット&アワェイ』戦法である。
「敵はどうやらカルダンに地下要塞を築いているようです!」
「なんということか!消耗ばかりしては困る。」
「どうしますか!!」
「アントウェルペンを包囲する」
「しかし、難しいのでは?」
「勇者軍がいるだろ?」
ガウヴィンは戦争が始まる前は勇者軍に情けがあったが、この頃は完全に酷使していた。勇者に追加の兵まで用意させ、総勢130万人まで増強させていた。
アントウェルペン
アントウェルペンには大量の農民が逃げて来ていた。彼らは自分たちの農地を焼き、村を壊し、ダムを決壊させて敵に失血させた後に『アントウェルペンに逃げる権利』を行使して大挙して避難してきたのである。一部は後方の衛星都市に避難させるものの収容力の高いアントウェルペンが最大の受け入れ場所となった。
「凄い数だけど大丈夫かしら?」
「食料も水も物資も腐るほどあるからな、大丈夫だろう。」
「収容場所は?」
「そのために不必要な自由民と人は追い出したんだから大丈夫だ!」
「さすがハイゼンね!」
アントウェルペンは世界最大の穀物、武器、資源などの取引所である。腐るほど大量の物資が集積されていた。しかも大部分は地下に保管する倉庫があるという鬼畜仕様である。都市の城壁は重魔導障壁で作られ、都市上空も強力なバリアで守られている。城壁には強力なバリスタや投石機まで取り付けられており、過剰なほど防衛施設が充実していた。まさに難攻不落である。
「敵は本当にくるかしら?」
「来るだろう、来ないと可笑しい」
「主力をアントウェルペンに置いておくのは心が痛むのよね」
「何が痛むだ!何とも思っていないくせに!!」
「心外だわ!地下の方は大丈夫?」
「サヴィアスの傭兵の一部とモグラ兵を主体とした6千も置いておけば大丈夫だろう」
アントウェルペンに主力の60万人が駐屯している。これに市民兵及び約10万人の守備隊が加わっている、まさにガン待ち状態である。その他はカルダン方面軍、ベーメン方面軍、アーヘン方面軍、遊撃軍、各都市の防衛戦力、後方の予備兵力などに振り分けられていた。これが現在のアントウェルペン本国の防衛戦力である。
「戦争経験があれば野戦も仕掛けられたのにね」
「ガウヴィン相手に野戦は危険な掛けになるからな!」
「どちらにしても同盟諸国が敵に回った時点で無理ね」
「後はウェルペン同盟を待つしか無いだろう」
南部のフェルト島を含む地方は北部側に裏切りが一人だけ出たが即血祭にされて消滅した。南部諸侯はフェルト島が難攻不落の要塞で中央海の制海権をウェルペン同盟が握っているかぎり裏切りようが無いのである。敵も分かっているために牽制の兵力以外は差し向けていない。南部は今のところ平和である。
※相手の方が強く、経験の豊かな指導者なのに対してテレジアは戦争経験の無い指導者である。司令官クラスは非常に優秀な人材がいる一方で全軍を指揮する人材にアントウェルペン側は欠けていた。
セルディウスの行動
僕は今、シーマ、セルビヴィウスを連れて吸血鬼の幼女と手を繋いで歩いている。吸血鬼の幼女は僕らが帰るまで爆睡していた。余程、今まで安心して寝れなかったらしい。帰ると彼女の名前を決めることにした三人で考えた結果、ラディアに決定した。
「なんだか犯罪の匂いがするよ」
「しないよ、シーマが犯罪者思考なだけでしょ」
「むー」
アントウェルペンは嘘みたいに平和すぎる、物資に困らず、人々は平和な日常を楽しんでいた。戦争の影は皆が常に傍に武器を置いて家に籠れるように補強をして守りを固めていることくらいである。宿屋、教会、休憩所、ホテルなどは臨時的に避難民の受け入れ場所になっている。レストランは通常営業をしている。
「ネ族の組合に行くのはいいけど…本当に優秀な魔術師がいるの?」
「噂だと良いところのお坊ちゃんで今はネ族に囲われているらしい」
「ふーん、そうなんだ。」
そう会話しながら目的地の組合本部に到着した。ネ族のうち、ガリア側のネ族以外は大方がアントウェルペン側に味方ないしは友好的な中立でいてくれている。特にアントウェルペンに拠点を構えているネ族の商会などは市民以上に恩人であるガルジアの死に悲しんで積極的に協力してくれている。
「失礼!ヴァリエール伯爵家の息子がいると聞いたんだけど?どこにいるか教えてくれません?」
「ああ、あそこにいるよ!」
守衛に聞くと簡単に教えてくれた。守衛が指を指した方向を見ると椅子に座った男の周りをネ族達が囲んでいた。そこに近づいて行って声をかける。
「やあ、あんたがヴァリエール家の人かい?」
「うん?なんだい、君は?」
そう答えたのはオリヴィエ・ヴァリエールである、彼はアルカディア地域とセルギア王国に跨る名門貴族ヴァリエール伯爵家の三男である、幼い頃から魔術師として才能を開花させたが上の兄弟も別の才能で上回っており、注目を集められなかった。その後、家を出入りしていた旅の商人の娘と結婚すると兄弟喧嘩になり家を抜け出した。流れに流れてネ族と仲良くなり、アントウェルペンに流れついたのである。
「ヴァリエール!君の力を借りたいんだ!!」
そう言うと近くにいたネ族がヴァリエールに話しかけた。たぶん、アントウェルペンの事情に疎いヴァリエールに僕らが何者で何をしに来たのか彼に説明したのだ。さらに言えばネ族にとってはアントウェルペン家に恩を売るチャンスと見ているので協力するように説得していると推察される。
「分かった、話を聞こう!」
そう言うとヴァリエールは席を立ち、握手を求めてきた。僕は手を出して彼と握手すると「これで契約成立にゃ」と無邪気に笑いながら周囲のネ族が拍手する。これでヴァリエールをゲットしたのは確実だ。
ヴァリエールの容姿はイケメンに尽きる、赤髪で眼も赤い少年である。背も高い、来ている服も赤い魔術師の服である。彼の実力は見た目の爽やかさで誤魔化されそうだが…かなりの実力なのは直ぐに分かった。
「いや~俺はアントウェルペンの情勢に疎くってねぇ」
などとチャラい感じがするが…こいつ曲者な気がする。だいたいネ族に囲われいる時点で曲者だ!ネ族は人間に友好的な民族である。前述の儀式のイメージが強い人は怖いかも知れないが…基本的にネ族は自分たちに好意的な人間を大切にする。ただし、嘘をついたり、約束を破ったり、騙す奴には容赦しない!ただそれだけである。彼らを騙すのは不可能に近い、彼らは人の動きや表情の変化、そして人間では理解できない感性と耳で人間の心の動きに敏感である。彼らを騙すのは大変難しい。
「また、負けたにゃ」
そのネ族をブラックジャックやババ抜きで負かしていたのがヴァリエールである、彼は嘘はつかないがハッタリとテクニックに優れているらしく、ネ族でも見破れないようである。ネ族達は面白がって彼に勝負を挑んでは負けて彼にお金を貢いでいた。接待にも見えるがネ族の目や表情が時折本気になるので完全な接待では無い、むしろヴァリエールの気を良くさせてテクニックを教えてもらおうとしている感じがする。だが彼は『やんわり』とかわして逃げている。そういう人間なのは間違い無い。
「どうやってさっきのトランプ勝利したの?」
シーマさんが直球勝負とばかりに聞くがヴァリエールは取り合わない。
「運と経験ですよ!」
「つまらない回答だよ!」
「教えるとシーマさんが強くなりすぎるでしょ?」
「まだまだ弱いから大丈夫だよ?」
そんな冗談を二人で話していた。
僕がヴァリエールを味方にした理由は…もちろん勇者討伐隊の結成の為である。討伐隊はアントウェルペンの主力を出来る限り、使わずに行う計画となった。主に僕に与えられた戦力と豊富な資金で集めた優秀な傭兵で討伐隊を編成する。
「勇者は必ず、殺す」
後ろで聞いていたヴァリエールが不敵に笑う
書いているうちに長くなりました。シーマ、セルヴィウス、ヴァリエール、ラディアのステータスも活動報告に記載したいと思います。
ヴァリエール家、あの有名な三銃士でお馴染みですね。私『ダルタニャン物語』大好きです。読むきっかけは…もちろん!『烈風の騎士姫』です。(笑)完結しなかったけど…結構面白かった…作品です。
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