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ハシマ33 ツアー参加者に、長崎でオランダ人に伊万里焼と茶を売り、御蔵島からは肥料を購入してもらうよう持ち掛ける件

 「あの厄介な土地に宝?」

 牛込さんの喰い付きは素早かった。


 僕は頭の中で「フィッシュ・オン!」と叫ぶ。(釣りをしない人のために説明すると「掛かった!」って合図だよ。)


 「ああ……天草にも、良き……せ・せき・石炭が?」

 そうガッついてきたのは本所さん。


 長崎奉行所調役や調役下役という身分が、幕府の中でどんな序列なのかは知らないけれど、仮に石炭奉行なんて役職が新設されるとしたら、有力候補に選出されるのかも分からないから、出世のチャンスなのかも知れない。


 僕は「いえ、天草にあるのは、石炭ではなく砥石といしなのです。」と”お宝”の内容を白状する。

 それを聞いた牛込さんと本所さんの肩が、ガックリ下がる。

 「砥石か……。まあ、京の砥石には値の張るモノも有り申すが……。」

 本所さんが残念そうにつぶやく。

 砥石は軍事にも民生にも必需だから、嬉しくないことはないのだろうけれど、石炭がどうしたとか、タングステンがどうしたとか新規資源で話が盛り上がっている中では、既知の資材だから地味に思えるのだろう。


 「天草の石は良い砥石になる石なのですが、細かく砕けば白磁を作るのに最上の石でして。」

 僕がそう続けると、反応したのは安芸守さまだった。

 「片山殿、それは天草の石を用いれば有田の磁器にも勝る、という意味であろうか?」

 鍋島藩にとっては、有田焼・伊万里焼は贈答品として藩の有力戦略物資であるから、それに匹敵する白磁が天草で作られるようになるのは面白くない、という思いがあるのに違いない。


 「安芸守さま。天草に眠る砥石は、白磁の材料としては有田の石に”勝るとも劣らない”品質であることは確かです。」

 僕がそう返答すると、安芸守さまは難しい顔になった。「我が藩にとっては、大層厄介な競争相手になる、と云うことだな。」


 だから僕は、安芸守さまに対して『美術品』の価値についての認識を改めてもらわなければならなくなった。

「そうとは限りません。世に名品・逸物いつもつと称えられる茶碗が存在しますが、元をただせば粘土に過ぎません。けれども名工と呼ばれる職人の手に掛かれば、その土塊つちくれが千金の値を持つようになるのです。誰が焼いてもそうなる訳ではありません。選ばれた名人・上手だけが逸品いっぴんをモノにする事が出来るのです。……そう、例えば鍋島様お抱えの『柿右衛門』さんみたいに。」


 「むう……。片山殿は諸事に明るいとは存じていたが……いや、そなた柿右衛門も知っておるのか。」

 安芸守さまは、ちょっと意表を突かれた、という顔をする。


 「もちろん存じておりますとも!」僕は頷く。「代々名工を輩出した柿右衛門窯の名は、遠くオランダやプロイセンにまで轟く事に成るのですからね。」

 実を言うとプロイセン王国の成立は1701年のことだから、まだこの段階では諸侯国のすみっこに過ぎないのだが、安芸守さまが聞いたことも無いような国にまで(将来は)名が響くようになるというのは、知って悪い気分ではないだろう。――僕も『嘘を言った』わけではないから、良心が痛むことがないワケだしね。

 「評価される、というのは重要なことで、仮に出来そのものが素晴らしくても、それを『名品である』と何らかの権威によって価値が保証されなければ、値段は付きません。高麗茶碗だって『茶聖 千利休せんのりきゅう』が”味が有る”と評価したから、名品の列に加えられただけで、元をただせば庶民の普段遣いだったわけですから。千利休という人物は、クリエイター――ええと創造者という意味です――というより、腕利きのプロデューサー・ディレクターですね。プロデューサー・ディレクターっていうのは、制作兼演出責任者のことで、俗な言い方をすれば『企画の売り込み屋』でしょうか。」


 「片山殿が言われる事は、確かにもっとも。」

 安芸守さまがビミョウな表情で頷く。「なれど片山殿、貴殿まるで先の世まで”観てきた”ような口ぶりじゃのう?」


 ここで『そうです。ボク、未来から来ました!』って言い切ってしまうと、ツアー参加者の皆さんから、これまでに貯めた信用を軒並み失ってしまうに違いない。

 だから僕は佐賀の焼物が、ヨーロッパで受ける理由を合理的に説明しなければならないワケで――


 「いえいえ、考えてみれば単純な事なのです。」僕は尤もらしい顔を保って、鍋島の磁器が西欧で売れるワケを講釈する。

 ”その理由”は、フツーに世界史の参考書にも書いてある内容なんだから、”見てきたようなウソ”を言い連ねるのとは違う。

「明国は今、清国と激しく戦っている最中でありましょう? 景徳鎮けいとくちんで磁器を焼いている余裕は無いのです。だからエゲレス・オランダ・イスパニアなどの金持ちが、大評判の明の白磁や彩色皿や豪華な壺などを買いたいと思っても、売ってくれる先が無い。品物が無いのだから、値段は上がるばかりです。」


 「なるほど、読めた!」安芸守さまは、ぽぉんと膝を叩く。「この機会に、長崎のオランダ人に柿右衛門窯の焼物を売れば良いのじゃな? すみの代わりには石炭を燃せばよいから、薪炭不足を気にせず窯を使え申そう。それに……泉山から掘り出すだけでは、急ぎの量がまかなえられなくば、石は天草より買い入れれば良いわけじゃ。……ふむふむ。そしてオランダ人に売り込みをかけるのには、誰ぞ――片山殿が申される処の――ぷろじゅうさあ・でれくたあ、が必要だというワケですな。」


 磁器の材料になる石、すなわち磁石(この場合は”じしゃく”ではなく”じせき”)は、掘り出しただけでは使えない。

 粗く砕いた後に、水車の動力を使って、ゴットン・ゴットンと気長に細か~く小麦粉みたいな微粉体にまで仕上げなければならないのだ。

 だから粘土を原料にした陶器が『土物つちもの』と呼ばれるのに対して、磁石を原料とする焼物だから『石物いしもの』と呼ばれたりもする。

 原料の供給元が増えて、更に水車を用いた中間処理業者が増えれば、当然ながら磁石性粘土の供給量もアップするという流れになる。

 仕上げは佐賀藩の官営窯が行うとして、佐賀藩(や柿右衛門窯)にとっては、中間処理に掛かる時間を「金で買う」ことが可能になるというわけ。

 販売量が増えて粗利あらりも増えれば、中間財コストに支出する費用分は量で吸収出来るだろうから、佐賀藩にとっても天草にとっても、win-winの関係になれるだろう。

 釉薬ゆうやくを使う前の素焼きの段階まで、いわゆる仕掛在庫しかかりざいこにまで中間業者に仕事をさせるのは、ちょっと冒険かもしれないが、今後は考えてゆく必要があるかも知れない。


 ――但し本音を漏らすなら、僕の本当の目論見もくろみは、築炉用のシリカリッチな耐火煉瓦や耐火モルタルを、佐賀藩や天領天草で製造してもらう事にある。

 だから最終的には、この場の話題を『そこ』に誘導して行きたいんだ。(大きい声では、まだ切り出し難いんだけどね。)


 「どんな皿が売れているのか、どんな壺が評判なのか、出島のオランダ人に訊く必要はあるでしょうけどね。市場調査ってヤツです。有田の焼物の技法は、既に素晴らしい出来ですから、絵付けさえ売り先の好みに合えば間違いなく売れますよ。――そう、たぶん、色をふんだんに使った見た目の華やかな白磁なんかが、売れ筋になると思いますけどね。」

 僕は参考書に載っていた伊万里焼の壺の写真なんかを思い出して、説明を補強する。

 そして「天草下島の西側には、ちょっと信じられないくらいに大量の、白磁用の石が埋まっているんです。」と安芸守さまと牛込さんの顔を見る。


 「これは良い事を聞いた。」と牛込さんの顔も晴れる。「オランダ船や明船相手の商いだと、本邦からは金・銀・銅が流れ出てゆくばかりで、頭を抱えておった処でしてな。鍋島様の焼物が売れるとなれば、金銀の流出も減りましょう。」

 そして「安芸守様。天草の砥石、高こう買うて下され。」とジョークをカマす余裕も出てきた。「オランダ船のカピタンには、奉行所の方から手を回して、売れ筋を調べさせますゆえ。」


 「その役目、なにとぞ拙者に!」本所さんが慌てて立候補する。

 けれども牛込さんは「熱意は買おう。」と頷いたが「されど、世慣れた者でなければ、交渉が難しかろう……。」と難しい顔。

 若い本所さんには、海千山千の商売人を相手にするには、経験や貫禄が不足だという見立てのようだ。


 「それでは、手前共てまえどもが、及ばずながら御助力申し上げるという事で。」

 ここまで”死んだふり”を決め込んでいた長崎役人氏が、ドロボウの笑顔になって復活する。

 若輩者の僕が言うのもなんだけど、したたかで抜け目の無さそうな『良い』笑顔である。


 「そのほうならば、首尾しゅび良く事を進められるであろうな。」

 牛込さんも、長崎役人氏の手腕は買っているようだ。

 けれど「されども」と思案顔しあんがおになると「手練手管てれんてくだだけでは上手くいくまい。なにしろ相手は、遠く海を渡って本邦の金銀を求めに来る相手じゃ。欲をかいては身も蓋も無くなるぞ。互いに十二分に利の乗る取引でなければのゥ。」と若干じゃっかんながら懐疑的かいぎてき


 「それでは焼物に、更に付加価値を付けたらどうでしょう?」

 十二分に利が乗る必要がある、という牛込さんの意見に対して、僕はアイデアを追加する。

 「オランダ船に売る壺には茶を詰めて、白磁と茶葉との両方を一度に買って貰えるようにするのです。」


 「茶か。南蛮相手に昔は大商いをしたものだが、今ではめっきり売れなくなり申したぞ?」

 否定的意見を口にしたのは平戸藩氏。

 そう。彼の意見は”つい先だってまで”なら、非常に正しかったのだ。


 いわゆる鎖国前に、ヨーロッパ相手に茶を売りまくっていたのは平戸藩だったのだが、日本の茶は値付けが高かったために、価格競争力が有った中国産(明国産)にその地位を奪われる。

 紅茶が普及する以前に、ヨーロッパで広く愛されていたのは日本産の緑茶であり、日本産の葉が売れなくなったといっても、ヨーロッパ人が茶を飲む習慣を捨てたわけではなくて、購入する産地が変わっただけなんだ。


 今では世界的な産地になっているインドでも、この時期既にチャイが有るには有ったが、インドで本格的に茶葉の栽培が始まるのは、ムガール帝国が衰退してイギリス領インド帝国が成立(1858年)する19世紀のことになる。

 イギリスが植民地インドに、プランテーション作物として茶の栽培を奨励したからだ。

 イギリス領インドで本格的に茶葉の生産が始まるまでの200年ほどの間、ヨーロッパ人は清国から大量に茶葉を買い続けた。それこそ、銀が流出して自国経済が危ぶまれるほど熱狂的に。


 1840~42年のアヘン戦争は、イギリスが清国から『茶・陶磁器・絹』を買い過ぎたことに端を発する。

 清国への一方的な銀の支払過多に業を煮やしたイギリス政府は、インド産のアヘンで輸出入の均衡を得ようとする。

 けれども健康的な飲料である茶葉と、中毒者が廃人になるアヘンとでは、社会に対する影響が違い過ぎる。

 アヘンやモルヒネには、麻酔薬としての用途の重要性があるから完全悪とは言い切らないが、意図的に麻薬常用者を濫造したという点において、茶や陶磁器の代償品にアヘンを選んだというイギリスの手法には、一片の理も認められない。

 現にアヘン戦争を起こすにあたっては、当時のイギリス議会でも野党が「恥ずべき行為である!」と強硬に反対している。

 ただ見方を換えれば、イギリスは国内の銀の流出を抑えるためには、清にアヘンを売りつけなければならないほど、清国から茶・陶磁器・絹を買い付けていたのだ、それほど追い詰められていたのだ、と考える事も出来る。


 けれど、その「茶葉輸出国」である明は現在戦乱の最中さなかで、ヨーロッパでは茶葉が不足している!

 再び日本産の茶を輸出品目に計上するチャンスが来ているんだ。

 だから僕は平戸藩氏に

「景徳鎮の磁器と同じく、明国の茶も今はオランダ船が買い付け難い環境です。元から日本の茶葉の評価は高かったのですから、値段さえ勉強すれば喜んで買ってくれるはずです。」


 「いや片山殿。茶はなぁ……オランダに売らずとも、国内で高こう売れましてなぁ。」

 安芸守さまが首を振る。「それに茶の木は、こえを食う。」

 換金作物として茶は優秀だから、距離の離れた宇治うじなど遠くで求めなくとも、九州でも嬉野うれしの八女やめなど有力な産地がある。

 初めに種子が伝来したのが博多で、最初にそれなりの規模で生産が始まったのは背振山地なんだから、アタリマエと云えばアタリマエ。北部九州の比較的寒冷な標高の高い場所では、茶を作っている場所は多い。

 だから九州諸藩の人にとっては、茶の商業的価値は身近なものだし、栽培にかかるコストも既知であるという事。

 「そうそう。油かすやら魚肥ぎょひやら、おごってやらねば良い葉が出来ないんじゃな。」

 三左衛門さんも同意する。「茶畑に喰らわせてやるには魚肥は高こうて、なかなか、な?」


 油かすとは菜種なたねや大豆から油を搾った残渣ざんさで、魚肥は魚(主に一度に大量に水揚げがあるイワシ類)から作った肥料。

 魚肥には、煮干しサイズの小さなカタクチイワシをそのまま使うこともあるけれど、魚油を搾ったかすを使うこともある。魚肥には肥料として必要とされる三大要素「窒素・リン酸・カリウム」が豊富だから優秀な肥料であると言ってよい。

 藩財政にとっては、換金作物である茶は「そりゃあ、収入としては優秀だよ!」なんだけど、コメ本位制の江戸時代にあっては、米(とその補助としての五穀)の収量が配下と領民とを養う最重要課題なワケで、茶畑ばかりに肥料を投入出来ないのは事実。むしろ『付け足し』の”その他収入”の項目なんである。


 けれども御蔵島近辺では、夜間照明に寄って来る小魚類の漁獲量は大きく、食品利用分以上に獲れており、現に舟山地域向けとして、火力発電所の排熱を利用して洋灯らんぷ用魚油の生産も増やしている。

 油を搾った後の魚糟さかなかすは、家畜や家禽の飼料にも一部利用されてはいるが、魚肥としては温州や台州で販売しようかと計画しているほどの量がある。(しかも御蔵地域にいる家畜類は、まだ数が限られているし、田畑には毎日肥料を撒くわけではないから、日々、在庫量は増えているわけだ。)


 それに肥料の窒素成分オンリーに限れば、ハーバー・ボッシュ法で水素と窒素から作成できるわけで。


 「ええっと、実は魚糟は御蔵領には大量に在庫がありまして、皆様にお売りすることが出来ます。お値段は勉強させて頂きますよ? それに御蔵には、空気から肥やしを作る方法もございまして。」


 「空気から肥やしを!」

 「それはマコトでござるか!」

 「なんじゃ、それは!」

 「魔術か?!」

 ツアー参加者の皆が目をいて一度に叫んだので、誰が何を言ったのかはよく分からない。

 ただし武富さんだけは、御蔵勢ならばそんな事も出来無くはなかろう、とでも云うように例のチェシャ狸笑いで微笑んでいる。もしかすると僕の知らない所で、ミッチェル大尉殿か早良中尉殿あたりから、既に話を聞いているのかも知れない。


 僕は雪ちゃんに目配せすると、ちょっと皆様に御説明を、と指示を出す。

 雪ちゃんは「はい師匠!」と元気に進み出ると、ハーバー・ボッシュ法について講義する。

 「…………でありまして、酸化鉄を触媒に使い、窒素と水素からアンモニアを作りだすのでございます。このアンモニアなる物質、アルカリの性質を帯びておりまして、酸の性質を帯びている硫酸に吸収させますと硫酸アンモニウム――俗に硫安と呼ぶ――肥料に変化へんげいたすのです。また、アンモニアを白金触媒を用いまして硝酸なる酸にまで変化させまして、そののちアンモニアと化合させますと、硝酸アンモニウム――すなわち硝安――という肥料に変化いたします。硫安と硝安とを比較致しますと、同じモル数ならば酸の部分にも窒素分子を含んでいる硝安の方が、窒素の分子量が多い分、肥やしとしての利きが良いと考えられましょう。」


 雪ちゃんの語る化学の講義を、皆チンプンカンプンという表情で聞き入っていた。

 これは可愛い雪ちゃんが一生懸命にやっているから、誰しもが我慢して分からないなりに謹聴きんちょうしているんだけど、僕がやったら寝入ってしまう聴講生が出たのは間違いない。


 ――そう考えていたのだが、分からないなりに一字一句を理解しようと努めている人物がいた。

 奉行所調役の牛込さんである。

 「待たれよ。」

 講義が一段落したところで、彼は『非常に気になっていた』部分を確認すべく質問をする。

 「硝酸というモノは、硝石からいずる汁ではないのか?」


 ハーバー・ボッシュ法が確立していない時代には、火薬用の硝石は南蛮貿易で買い入れるか、亜硝酸菌と硝酸菌の生化学反応で生成させるかしか入手手段が無かった。

 亜硝酸菌と硝酸菌の二つを併せて硝化菌と呼ぶが、硝化菌が自然に生成する硝石は純度にバラツキがあって低品位の物も多く、純度を高めて爆発力を増すためには硫酸に溶かして蒸留し、出てきた気体を集めて一度硝酸にする必要があった。

 蒸留によって集められた純度の高い硝酸をカリウム塩にした物が、鉄砲などの火薬に使われたのだ。

 だから牛込さんが硝酸を知っていて、それが硝石から作られる物だ、と言っているのは不思議ではない。(むしろ、それ以外の方法を知っていたなら、未来人認定してOK。)


 問われた雪ちゃんは「左様でございますよ。」と動じず

「なればこそ、このハーバー・ボッシュ法は『平時には肥料を作り、戦時には火薬を作る』方法と呼ばれているのです。硝酸態窒素を含む硝安は、取り扱いに注意しなければ、爆薬みたいに爆発してしまいますから。まあ一番危険なのは、近くで別の爆発が起きることによる誘爆なんですけれど。一方でアンモニア態窒素だけが植物に利用される硫安は、残った硫酸イオンが田畑を酸性化させるので、藁灰わらばいなど灰分かいぶんを追加してやるか、石灰みたいなアルカリ性物質を補う必要が生じます。」

と解説を付け加える。「硫安を使用しない場合にも、水田を除く農地は酸性化しやすいので、塩基性成分を補ってやるのは、どのみち悪くない事ですけれども。」

 なんだか雪ちゃんの説明が、途中から僕の語り口調に似てきた気がする。(以前にも、そんな事があったよなぁ。)


 「お説の通りであるならば、御蔵様は硝石を自前でいくらでも生み出せると云う事でござろうか?」

 再び牛込さんが声を上げ、ツアー参加者一同がザワッとする。


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