たったひとりの好きな人
あらすじ
私にも好きな人ができた。
私は茜と出逢った日に恋愛というものを知った。
朝は一緒に登校して、昼は保健室で由実姉も一緒に昼ごはんを食べて、放課後は寄り道をして・・・
そう、毎日が夢のようだった。
いつまでも終わらなければ良かったのに。
ずっとこのままでいたかった。
絶対に離したくはなかった。
昼休みの時間に私は由実姉に会いに行くことにした。
いつもは茜さんと一緒に行くのだが、今日は学校に来ていないらしい。
朝の待ち合わせの場所に来なかったのだ。
茜さんのクラスメイトに聞いても、知らない分からない。
この場合は由実姉を頼るしかないだろう。
という事で、私は保健室の扉を開ける。
舞「失礼します。由実姉、茜さん休みなの?」
なるべく声量を抑えつつも、力強く聞く。
由実「ちょっと落ち着きなさいな。話があるから場所を移しましょう。」
私は逸る気持ちを抑え、由実姉と校舎裏へと向かった。
校舎裏に人がいないのを確認した後、私は切り出す。
舞「で、話って何なの?」
由実「こうなった時に、茜さんから伝えてほしいって言われたの。」
舞「何をよ。」
多少イラつく。大事なことなら早く教えてほしい。
由実「あなたには辛いことだと思うけれど、それでも聞く?」
舞「そこまで渋る話って何のことよ?」
由実姉が下を向く。
由実「茜さんは・・・」
由実姉が拳を強く握る。
由実「茜さんはもう長くはないわ。」
その瞬間、私は由実姉に飛び掛る。
舞「どういうことよ!今まであんなに元気だったじゃない!嘘よ!嘘に決まってるわ!茜さんのことだからきっと驚かそうとしてるだけよ!」
由実「私だってそう信じたいわよ!嘘だって信じたいわよ!でもね・・・」
由実姉が一枚の紙、いや、メモを見せてくる。
由実「あなたと出逢ったときにはもう分かっていたことなの・・・」
舞「そんな・・・」
頭が真っ白になる。
全身から力が抜けて崩れ落ちる。
由実「茜さんはね、あなたにこの事を隠していて欲しいって、あなたに対して嘘を付くのをとても怖がっていたわ。」
舞「そんな、まだ、これからなのに・・・」
由実「朝から目が覚めてないって・・・」
悔しい。やっと、やっと、好きな人が出来たのに。
舞「由実姉、今、茜さんはどこにいるの?」
いつのまにか流れていた涙を拭く。
由実「総合病院の828号室よ。」
舞「私、行ってくる。早退するわ。」
壁に手をついて立ち上がる。
由実「後のことは任せなさい。」
本当に頼もしい姉だ。
ちゃんと前を見る。力強く。
舞「絶対に終わらせたりしないわ。」
私は走り出す。
茜さんに会うために。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
三話時点での登場人物の情報をまとめておきます。
本條 舞・・・茜のことが好き。友達以上に親友以上に。
白井 茜・・・病気であることを隠していた。朝から目覚めていない。
本條 由実・・・頼れる姉。舞と茜を少しでも幸せにしてあげたかった。
次回もよろしくおねがいします。




