あなたのことは嫌いなの
どうして想いは伝わらないの?
いつまでも憶えていられるように。
私達はメモを残していた。
どんなことがあろうとも。
いかなる邪魔が入ろうとも。
私の、いや、私達の愛は。
永遠に終わらない。
もうそろそろ寒い風が頬を撫でる頃。天気は曇り。
私はクラスの男子に校舎裏で告白を受けていた。
勿論答えはノーだ。
大して仲が良い訳でも無いのに、こいつは勝算があるとでも思っていたのか。
その事を素直に伝えると、案の定キレる。
これだから男は嫌いなのだ。
この後私は、適当にあしらって帰るつもりでいた。
しかし、ここで予想外の事が起きる。
男子が私を押し倒したのだ。
成程、人通りが少ない所に誘い出したのはこれが狙いだったのか。
息が顔に当たる。
・・・本当に気持ち悪い。
か弱い私の抵抗は体格の良い男子の前では全く意味をなさなかった。
ああ、私はこんな奴に・・・
穢されてしまうのか。
そう思って諦めていると、近くで声が響く。
女子の声「先生!早く来てください!」
男子生徒は慌てて逃げていった。
少し経ってから女子生徒が駆け寄ってくる。
女子生徒「大丈夫でした?怪我はないですか?」
私「ええ、大丈夫よ。」
あくまで冷静に会話する。
女子生徒「舞さんを見かけたのでどうしたのかなって思いまして。」
服の乱れを直して立ち上がる。
舞「それで、何故私の名前を知っているのかしら?私はあなたを知らないのだけれど。」
そう、彼女とは初対面だ。なのに名前を知っている。
舞「それに、先生はいつ来るのかしら?」
女子生徒「そ、それは・・・」
なんだか怪しい気がする。
女性「それは私が茜ちゃんに呼ばれたからよ、舞。」
白衣を着た女性が出てきて、私の名を呼ぶ。
舞「由実姉・・・」
その女性は私の姉である本條由実。保健室の先生だ。
由実「舞、あなた、茜ちゃんに助けてもらわなかったらどうなってたか分かってるわよね?」
そう言われると、何も言えない。
舞「さっきは疑って悪かったわね。」
茜「いえ、私こそ紛らわしくて。」
互いに握手を交わす。
由実「あなた達、同学年なのよ?敬語はやめなさいよ。」
茜「でも、由実先生の妹さんなので。」
由実「まあ、好きにしなさい。」
由実姉と茜さんの関係については、よく分からない。
少なくとも先生と生徒というより、先輩と後輩という感じがする。
私にとってはあまり気にする事ではないが。
事後処理は由実姉が全てやってくれるそうなので、私達は一緒に帰ることにした。
どうやら由実姉はこの茜さんを家に泊めるつもりだったらしい。
理由を聞こうにも、あまり話そうとはしなかった。
曇りだした空からは、今にも雨が降りそうだ。
私達は雨が降る前に家に向かうことにした。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
一話時点での登場人物の情報をまとめておきます。
本條 舞・・・男嫌い。普段から冷淡。16歳。
白井 茜・・・不明。16歳。
本條 由実・・・保健室の先生。舞の姉。24歳。
全6話程度で完結させる予定です。
次回もよろしくおねがいします。