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あめ玉のお話。

作者: 雪姫

 孫が絵本を読んでとねだってきた。


私もよく祖父に絵本を読んでとねだったものだ。


そんなことを思い出しながら孫に絵本を読み始めた。




 私はおじいちゃんっ子だった。


毎日毎日、おじいちゃんと遊んだ。


おじいちゃんの日課は小さな庭の散歩だった。


腰の後ろで手を組んで少し猫背になって歩くのだ。


私はよくおじいちゃんの後ろを同じ格好をして歩いたものだった。


おじいちゃんはタバコを吸っていた。


私はタバコのにおいは好きではなかった。


おじいちゃんはそれを知ってか一人のときに良く吸っていた。


おじいちゃんは三時になると必ずあめ玉をくれた。


赤い色をしたあめ玉。


なんでも私のことを聞いてくれるおじいちゃんだったが、あめ玉は三時にしかくれなかった。




 私はおじいちゃんと楽しい日々を過ごした。


いつものように、おじいちゃんの後ろについて庭を散歩していた。


すると突然おじいちゃんが倒れた。


私は何がなんだか分からず、ただ泣きじゃくった。


私の視界はだんだんと暗くなっていった。


母が家から飛び出してきたのを最後に、目の前は真っ暗になった。




目を覚ましまわりを見渡すと、いつもとは違う光景だった。


ちょうど看護師さんが入ってきて、私の体調を確認した。




看護師さんにおじいちゃんがいる病室に連れて行ってもらった。


わたしが病室に入ると同時に嫌な機械音がなった。


そこにはお医者さんと看護師さんがいて、その間から泣き崩れるおばあちゃんと母の姿が見えた。


「十四時五十五分00秒」お医者さんはそう言って、静かに病室を出て行った。


私は、おじいちゃんのベッドに近寄った。


おじいちゃんは眠っているようだった。




 その日は、親戚の人が迎えに来て、私は親戚の家に泊まった。


おばあちゃんと、母は、病院に残った。


小さいころの私に理解できるはずも無く、私はおじいちゃんのいない数日を過ごした。




 私はよそ行きの格好をさせられた。


家族は皆、黒い服を着ていた。


何をするのか聞いたところ、おじいちゃんを遠くに送り出すのだと言う。


私はそんなことしたくなかった。


皆は会場に入っていったが、私はずっと外にいた。


家族が一人ずつ出てきて、最後におばあちゃんが出てきた。


おばあちゃんはゆっくり近づいてきて「吾郎に持っていてほしい」とそっと私の手に時計を握らせた。


本当の時刻よりいつも五分早く時を刻んでいるその時計はおじいちゃんが身につけていたものだ。


私はお礼を言おうと、ふとおばあちゃんの顔を見た。


おばあちゃんの目は赤くはれていた。


そんなおばあちゃんの顔を見て、どうしてか何も言うことができなくなった。




 おじちゃんは帰ってくるものだと思っていた。


私はおじいちゃんの時計をつけて、おじいちゃんの部屋にこっそりと入った。


いつもと変わらぬようにおじいちゃんがいるのではないかと思ったからだ。


だがおじいちゃんがいるわけも無く、かすかなタバコのにおいだけがそこには取り残されていた。


机の上を見ると大好きな絵本があった。


私はそれを手に取り、庭へ出た。


庭にあるベンチに座り、私は絵本を読み始めた。




 目を覚ますとおじいちゃんがいた。


あたりは夕焼けだった。


おじいちゃんはそっと私の隣に座り、絵本を読んでくれた。


絵本を読み終えると、私はおじいちゃんにあめ玉をねだった。


おじいちゃんは困った表情を浮かべたが、私にあめ玉をくれた。


私はそのあめ玉を口に放り込んだ。


甘い香りが口の中に広がった。


ふと私は我に返った。


あたりは日が暮れ始めていて、口の中にはまだ甘い香りが残っているような気がした。




 時計が鳴った。


時刻は三時をさしている。


横には孫がすやすやと寝ている。


私はひざの上に置いてある絵本をとって読み始めた。






   「あめ玉のお話。」


内田 一郎・作




  真っ赤な太陽の下、小さな男の子とおじいさんがいました。


  二人は来る日も来る日も二人で遊びました。


  二人の好きなもの、それはあめ玉でした。


  二人であめ玉を食べるのが一番の楽しみでした。




  ある日おじいさんはいなくなりました。


  男の子は来る日も来る日もおじいさんを待ちました。




  いつしか男の子は大人になって、結婚しました。


  子どもを産んで、その子どもが成長し、結婚して子どもが生まれました。


  小さい男の子はおじいさんになりました。


  おじいさんは、孫と遊び、二人であめ玉を食べ、毎日毎日楽しく過ごしました。




読み終えると目から涙がこぼれそうだった。


「どうしたの?」


孫が起きて尋ねてきた。


「なんでもないよ」


私はそっと微笑み孫にあめ玉を一つあげた。


あふれそうな涙をこらえ、私もあめ玉を口に放り込んだ。


甘い香りが口いっぱいに広がった。













 あとがき




ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。


僕がこれを書くにあたり、様々な人の協力を得ました。


幼少期、祖父から聞いた話を思い出しながら、事実をそのままに書きました。


これを読んで、普段では気づかないようなことに気づいて頂けたのなら幸いです。


これが正解。というものはありません。


十人十色、人それぞれ気づいたこと、それがその人にとっての正解になるのでしょう。




最後に、




 目を覚ますと、おじいちゃんが、絵本を閉じていた。


なにか悲しそうな顔をしていたので、僕は「どうしたの?」と尋ねた。


おじいちゃんは「なんでもないよ」と少し微笑んで僕にあめ玉をくれた。


僕はあめ玉を口に放り込んだ。


おじいちゃんもあめ玉を口に放り込んだ。


その刹那、おじいちゃんの頬に一筋の光がはしった。


その時はただの光にしか見えなかったが、今でも僕はその時の光景を鮮明に覚えている。






                      

内田 十五・作

お読みいただいた読者の方々ありがとうございます。

本文でのあとがきまでで、1つの作品として投稿させていただきました。

この作品は私が高校生のときに書いた処女作ですので、完成度はあまり高くないかもしれません、特に絵本の内容とか、、、

ですが、私としては、子供の視点だからこその、描写などうまくかけていたのでそのまま投稿させていただきました。


今後はもう少し長いお話を投稿できたらと思っております。恋愛小説とファンタジーを掛け合わせた物語です。

では次回作でもお会いできることを祈っております。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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