2/2
後
闘病は、しかし長くは続かなかった。
肝臓転移が分かった。
気づいたら、余命半年と宣告されるほどになっていた。
私は、彼を家に連れ帰ることにした。
疲れたね、と彼が言う。
そうねと、私が答える。
最後の残された日々は、あっという間に過ぎていく。
それでも、わずかの間でも、私は彼と大切な日々を過ごした。
子供らも、予期された死の前に会おうとして、入れ替わりやってきた。
教え子たちもそうだ。
彼が教え子で連絡がつながる子らに手紙を送ったために、死ぬ前に一目、ということで会いに来たようだ。
そして、その日がやってきた。
家の縁側で、彼はのんびりと好きな緑茶を飲んでいた。
私がそのすぐ横に座ると、彼はコップを縁側に置く。
この人生、どうだったと、彼が私に言う。
貴方と出会えてよかったと、私が彼に言う。
そうかと、彼が言った。
ポンと私に倒れてくる。
ありがとう、と彼がつぶやく。
そして風が、彼の魂を天へと連れて行った。
「ありがとう」
私は、彼にそう答えた。