短編小説・甘い誘惑
不思議な短編小説
宜しくお願いします!
私が小学校の頃の話だ。
人見知りな私にも少ないものの友人と呼べる存在がいた。
その友人から話を聞いた。
最近、校門前でおじさんがアメを配っているらしい。
配り終えるといなくなってしまう為、図書室に寄って帰りが遅い私は会った事がなかった。
「アメを配って帰るだけなんて不気味だね。」
私は友人に正直な意見を述べた。
「そうだよね、気持ち悪くて食べられないよね。」
友人はそう言った。
だが気になった私は図書室から見える校門を毎日眺めてみる事にした。
浮浪者という風貌でもなく小綺麗にしているおじさんが優しそうに笑いながらアメを配っていた。
見るからに人の良さそうなおじさんである。
昨日、気持ち悪くて食べられないと漏らしていた友人もアメを受け取っていた。
クラスの情報通である佐藤に詳しい話を聞いてみた。
とある男子生徒がおじさんからアメを貰い、凄く美味しくてハマると噂があっという間に生徒たちだけに広まったらしい。
知らない人から食べ物を受け取るなど私には理解出来なかったが何日か眺めていて分かった事が一つあった。
一度受け取った人は次から必ずまた受け取りに行くという事である。
凄く美味しいアメ…必ず受け取りに行く程に美味しいアメか…
私の中では嫌な予感しかしなかった。
小学生の低学年なら未だしも高学年になってアメを欲しがるなど普通とは思えない。
私が出した結論は、そのアメには何らかの中毒性があるという事。
私は職員室まで足を運んだ。
私は人見知りなので知らないおじさんに話をする度胸も勇気もある訳がない。
ここからは大人の出番。
そう判断した。
次の日、朝礼にて校長先生から知らない人から物を受け取らないようにという話があった。
何か問題が起きた訳ではないが、何かあってからでは遅いと説明。
その日から、おじさんは現れなくなった。
「あぁー、あのアメ美味しかったのになぁ。」
友人は気持ち悪くて食べられないと言った癖に、その事も忘れたのか私に愚痴を漏らした。
「美味しいもの食べ過ぎると太るぞ。」
私は嫌みも込めて友人に言葉を返した。
それから数年後。
私は、あのおじさんをニュースで見かけた。
麻薬密輸の元締め。
何となくは分かっていたものの、臭いものには蓋をして見なかった。
あまり関わりたくなかった。
話が大きくなれば友人たちは真実を知り傷つく者が。
中毒性に囚われ手を染める者も現れるかもしれない。
そういう不安もあった。
ただ私がアメを貰って警察に提出していればもっと早く捕まって被害者は少なく済んだかもしれない。
数年は野放しになっていたのだ。
知らない被害者より知っている友人たちを取った。
正しかったとは思わない。
私は正義の味方やヒーローではないのだから。
目に見える友達や家族くらいを助けるのが精一杯である。
読んで頂きありがとうございました!
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