成長しない豚。
御機嫌よう、今日のご飯はよくわからない魔物の内臓モツでございます。
なんとこのモツ、鮮度を感じさせる為に生!
しかも素材の味を存分に味わうため、手を一切加えておらず、
更に味を深めるために熟成という名の放置を1日してるため人間の体では絶対に味わえない味覚の領域に踏み込んでおります!
うん、俺、豚でよかった。
人の身ではちょっとばかり・・・いや、豚オークでも大丈夫なのか不安になる朝飯をシバきつつ、俺はある事について悩んでいた。
それは、自身が全くと言っていいほど成長しないこと。
確かに生後に比べて体は少しばかりでかくなったが、あれからすでに二ヶ月は経過しているのに未だに子犬サイズは異常である。
この世の中にlvとかファンタじーな概念が存在しているかはわからないが、確認をしようにもブヒブヒとしか言えない俺が鑑定が使えるはずもなく、結局異世界三点セットは放置している。。
というかあのニートめ・・・人語が喋れないと使えねーってどういうことだ・・・。
ちなみにアイテムボックスも、同じ理由で使えない。
というわけで、今俺が使える能力は発動しているかわからない加護の暴食と天稟の才と異世界言語だけだ。
異世界言語に関してはチートかもしれない。
大人オーク。というか、オークと言葉が何故か通じない俺だが意味だけはなんとなく分かる。
恐らくこのスキルのお陰だろう。
遠くで聞こえる魔物の断末魔は何故か翻訳されないのでもしかしたら違うかもしれないが。
それはさておき、問題はこの体だ。
未だに子犬の身体ではできることが少ない。
群の中でも狩りなどができない俺は、小さい木の実をせっせと最終したり食い散らかした魔物の残骸の処理などしか出来ない。
前世ではわりと自炊したり、バイトしたりで自分のことは自分でしていた感じだったので群れに対しての負い目がヤバい。
ニート神にも伝えてやりたい、この気持ち。
しかし、本当にいつまでたっても大きくならないし、相変わらず四足歩行のままだしでいい加減どうにかならないかと考えて、いくつか仮説を立ててみた。
1、変異種なので致し方なし、豚として生きるべし。
この場合は詰みだな。この世界はそんなに甘くできてないし、つか俺が一口サイズの魔物とかいんだぜ?
一昨日ビビりながらも食ったけど。
ちなみに味は美味しかったです。
2、デカくなる条件があり、他のオークたちと違う。
デカくなれるなら多分この可能性が一番高いと思う。
レベル上げて進化とかよくあるパターンだしな。
しかし、レベル上げて進化だとするとこの子犬並みの体でなんとか魔物とかを倒さないといけないという事だ。
この体の長所は素早いこと。攻撃力なんて皆無。魔法なんか見たことない。
うん・・・無理だな。検証は本当にどうしようもなくなった時だけにしよう・・・。
まだ死にたくないしな・・・。
3、前世の呪い
豚丼をしばきまくってーー。
まぁ冗談はさて置き、俺の無い頭ではこの二つのどちらかが有力だと思う。
結局の所では、見の姿勢を崩さない方向だ。
食事を取っても成長しないし、駆け回ったりしても一向に体に変化がないのを見るとおそらく普段してない行動ーーつまりは危険が伴う行為しなければ変わらないだろう。
群には申し訳ないが、暫くは寄生させてもらうしかあるまい。
ブヒブヒ言いながらそんな事を考えていると、大人オーク達がなにやら血相を変えて集まりはじめた。
群の全員が集まっている所を見ると、なんか大変な事が起きているようでみんながみんなフゴフゴいっている。
なになに?ふむふむ?ほうほう?ブヒブヒ?
ふむ。どうやら、人間恐らく冒険者っぽい集団がこちらに向かってきているようだ。
どうやら、人間と出くわした時に狩ったのが問題だったらしい。
・・・って俺知らないんだけど。
食ってないよね?ね?
ってかそれって討伐隊的ななにかだよね?
間違いなく俺巻き込まれたら死ぬよね?
大人オークの話を聞いていると、どうやら全面抗争をするらしい。
血が猛っているのか、大勢ですごい雄叫びをあげている。
そんな大人オークたちを尻目に、俺は頭を抱えーーられないけど項垂れながらそれから4時間後、豚になって初めての危機と、人間との邂逅を果たした。