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異世界に降り立つ豚。

俺は現在豚になっている。

勿論比喩ではない。文字通りの豚だ。

いや、正確にはオークの変異種らしきものになっている。


オークと言えばエルフをにゃんにゃんしたりする下衆を思い浮かべるかと思う。

そういうオークは周りにいるが、俺はというと一ヶ月を経過したのに未だに四つ足歩行で体格も小型犬サイズ。

もろ地球でいうミニブタのような姿だ。

一緒に生まれた兄弟は他に8体ほどいるが、全員生後一週間ほどで二足足歩行をはじめ、二週間にもなると他のオークに負けず劣らずの醜さと、成オーク顔負けの体格になり現在では狩りなども行うほど力をつけている。


既に群れから異端扱いされ、鼻つまみものになっているが、見た目の愛くるしさ?が伝わっているのか伝わっていないのか追い出されずに済んでいる。

まぁそんなこんなで、ほぼタダ飯を食らう豚ライフを送っているんだが、なんで俺が異世界で豚になっているのか説明したい。

いや誰に説明するんだって話だけど。俺ブヒブヒしか喋れないし。ブヒブヒ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ブヒブヒ」

「かしこまりぃ!背脂マシマシ・特大チャーシュー・麺エベレストですね!暫くお待ちぉ!」


俺はその日、いつもの如く豚屋というラーメン屋にきていた。

所謂常連という奴で、ブヒブヒというのは裏メニューの油塗れのラーメンを指す。

決して地球でも豚だったわけではない。断じてない。

ちなみにブヒはブヒブヒの半分の量だ。


「おまちぃ!」


こってこてのラーメンが目の前に出される。

俺は比較的痩せている方で、仲間内では「異次元胃袋(ディメンションイーター)」の二つ名を付けられている。

なんて事はなく、実際はガリガリデブとか言われていた。

そんなこんなで1.5kgほどの油の塊を平らげ、いつもの如く向かいの牛丼屋へ梯子しようとしていた時だ。


「いやぁ、お兄さん。凄い食べっぷりでしたね!!」


店から出ると、外人っぽい男に絡まれた。

その時俺は滾る食欲を落ち着けたかったのだが、何故か男に惹かれるモノを感じて立ち止まってしまった。

ちなみにホ◯的な意味ではない。


「なんか用か?」

「あぁ、はい。わたくし神をやっているものでして、見事な喰いっぷりの貴方をスカウトしに来たんですよ!」

「じゃあの。」


俺は神を名乗った辺りで踵を返し牛丼屋へ向かったが、自称神に肩を掴まれた。


「ちょっと待ってくださいよ!せめてお話だけでも・・・」

「・・・宗教の勧誘は間に合ってますんで」


自称神とかせめてお話だけでもとか怪しさ満点である。

こんな話にホイホイ付いて行くほど俺は平和ボケしているつもりはないし、こんな怪しい男の話を聞いてやるほど暇ではない。

すぐ様俺は肩を振りほどき、牛丼屋へ向かおうとするが・・・。


「待ってくださいって!!ご飯奢りますから!」

「よし分かった、少しだけなら聞いてやろう」


・・・どうやらとても大切な話らしく、自称神の話を聴くことになった。


牛丼屋に入り、特盛りを食べながら聞いた話を整理すると、

・魔物の勢力が大きすぎたのと、人類同士の戦争の為人間が勇者と呼ばれる器を産み出してしまった。

・それにより、世界のバランスが崩れこのままだと世界が傾いてしまう。

・そのため、この世界の神と交渉し、見出したものを連れていっていいと言われた。

・俺の食いっぷりに感服して、俺を連れて行こうと思った。

・もし向かってくれるなら自分の能力をフルに使い力を授ける。


「うん、意味わかんない」

「えぇっ!チートを授かって異世界に降り立つとか胸熱展開なのに!貴方本当に日本人ですか!?」

「 日本人をなんだと思っている」


俺はお茶を啜り、店員にデザートの豚丼を注文しながら続ける。


「普通、異世界とか憧れはするけどそんば話に鵜呑みにできるわけないだろ。まぁ本当だったら行ってみたいな、とは思うけども」


実際異世界無双とか憧れるしな。

俺が日本で無双できるのと言えば豚屋でブヒブヒ無双くらいだもん。

常連仲間にブヒブヒ様とか言われてるけど、冷静に考えて蔑称だよな・・・。

なんか泣きたくなってきた・・・。


そんなことを考えていると、自称神がキランと効果音がなりそうなくらい目を輝かせた。


「それは!!では、いってもいいということですか!?」

「あぁ、豚丼食ったらな」


少し傷心気味になっていた俺は適当に答える。

一刻でも早くこの空腹・・・もとい、傷心を豚丼(デザート)で癒したかった。


「あぁ、よかった!断られたらどうしようかと思ってたんですよね!じゃあ食べ終わるまでに加護とこれから渡る世界について簡単に説明させてもらいますね。転生後は干渉できませんので・・・」

「おう、いただきまーす」

「貴方が転生する世界はズバリ!魔物が跋扈し、魔法が存在する所謂剣と魔法の世界!ファンタジーですよファンタジー!!どうです!?すごいでしょ!?」

「うるせー静かに食わせろ。要点だけまとめて言え」

「はい・・・」


デザートで心を満たしながら聞いた話をまとめると、

俺が行く世界は剣と魔法の世界で、俺は別に行った先で何してもいいらしい。

まあバランス調整みたいなもんだから、自由に過ごして構わないというのも納得だけどな。

あとは、転生時に暴食という加護を与得るらしい。

これは自称神の加護じゃなくて、俺の魂に刻まれた能力で、神様も聞いたことがない加護らしい。

怪しさ満点ではあるが、原罪が刻まれた魂とか若干胸が熱くなったというのは内緒だ。

それと別に、自称神がくれる天稟の才という名前が既にがチートの加護に、異世界といえばこれ!とばかりに異世界言語習得とアイテムボックス、鑑定の3点セットをくれた。

異世界言語習得以外の使用方法は魔法と同じで詠唱を挟む必要があるが、ほぼ漫画や小説みたいなイメージで使えるらしく、加護に関してはゲームでいう特性のようなものらしく、滅多に得られる人はいないらしい。

なんで神がゲームとか漫画とか知ってんだよとか突っ込んだが、うんぬんんかんぬん説明された挙句最後には神だし?とドヤ顔されたのがウザかったためその下りは割愛する。


「ご馳走様でした」

「食べ終わった!?食べ終わったね!いやー助かるよ!これでまた自堕落的な生活に戻れる!ありがとう!」

「働け自称神(ニート)

「変なルビが付いてるよ!?まぁいいや!本当にありがとう!じゃあ向こうで頑張ってね!!ゴニョゴニョ・・・」


食後の満腹感に浸っている俺を尻目に、ニートがなにやら変な呪文を唱え始める。

うわぁ、ニートで厨二病かよ。痛々しくて見てらんねー。俺の暗黒ノートとどっこいだわ。

そんなことを考えていると、呪文が終わったのか、にこやかにニートが笑いかけてくる。


「じゃ、ご飯代は心配しなくていいからね。汝に魔神の加護があらん事を」

「いたあああああああい!!って・・・え?」


あまりの決め台詞のイタさに悶絶した俺はそのまま意識を暗転し、気付けば豚になっているのであった。




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