プロローグ
寝て起きてを繰り返す日々。生まれて15年間が簡単に過ぎていくのを感じる。
繰り返される日常が良いと言う人もいるだろうけど、私みたいに良く人に虐められている人には苦しかった。現に今も私の目の前には彼女たちがいる。
「あれぇ、何で今日も来てるのぉ?」
「だよね。あんだけ遊んであげたのに、また学園に顔を出す何てね」
机に座り授業の用意をしていた私の前に、いつも通りに4人の同じ性服を着た人達が現れる。
「ちょっと来てくれない? 私分からない問題があってさ」
「そうなんだよね。特にチャクラの使い方が分からなくて、困ってるんだよね」
「え……でも、昨日も練習したからいいんじやないですか」
昨日も同じ理由により、裏庭に呼び出された。座学で分からないからと言って体の色々な部位に魔法をぶつけられて、まだ完治していない。
「何? 文句言うの?」
「最低ね。友達なのに、勉強のお手伝いさえしてくれないだなんて」
「そんなつもりはない……です」
私はどうしても否定してしまう。彼女たちがそんな事を言えばどう返してくるか分かってるのに。
「なら行きましょうよ。早く行かないと先生が来ちゃうから」
「……はい」
無理矢理座っている私の脇の下から腕を通すと、両端と前後から囲って教室から出す。
周りも気付いているのは分かっているけど、止めようとする者はいない。みんなも恐いんだ。私みたいに蔑まれて、遊び道具のように捨てられるのが恐いんだ。
教室を出ると私は中庭の木々の影に追いやられた。周囲には焼けこげた後が何カ所も垣間見える。背後にある壁には血痕の後が点在していて、私がいつも受けている軌跡が語りかけてくる。
「じゃあ、今日は炎の魔法でも受けて貰おうかな」
リーダー格の女が手のひらの上に少し濁った紫色の炎を灯した。
「ふふ、今日もでしょ。昨日も炎で遊んだんだから」
「そっかそうだったわね。なんか、毎日してると忘れちゃうんだよね」
「分かる分かる。それに反応も同じなんだよね」
彼女たちは壁際に追いやった私を見て笑う。4人の目が私を見下す。
「なら、今日は少し凝ったやり方にしない?」
左端にいたさっきから笑うばかりしていた子がリーダー格の子に提案する。口元のつり上がった表情に危険を察知した。
「いいね。で何するの?」
「まあ、見てて」
潔く了承した瞬間、私は咄嗟に危ないと感じて走ろうと体を前に倒し、足を出そうと試みた。
だが動かなかった。むしろ足が上がらずに前に頭から転倒してしまう。
「痛っ」
思わず感嘆と声を上げてしまった。
「なにしてんの? ははは、転けるとか恥ずかし」
「ほんとにキモイんだけど」
彼女たちは私の姿を見て笑い出した。惨めにも手を頭に当てると血が流れているのが分かる。倒れ込んだまま足の異変を確かめようと、足下へと視線を寄せると、軽い脳しんとうで視界は悪かったが、なんとか原因が分かった。
「ナイスだよね。ちょうど足に絡まった瞬間に動くんだもんね」
「流石ミキ。木属性の操作はやっぱり一流だわ」
足には地面に生えていた雑草が踝まで巻き付いていた。これは引っ張っても抜けないのは分かっている。これは魔法による仕業なのだから、抜け出せる訳がないのだ。
「で? 凝ったやり方ってこれだけなの?」
中央に立ちまだ満足のいかない表情をするリーダー格の彼女が、左端で笑う彼女に視線を向けていた。
「んなわけないじゃん。まだまだやっちゃうに決まってるじゃん」
彼女はここからが本気と言わんばかりに、両手にチャクラを纏わせる。放出されるまがまがしいチャクラが辺りに生える木や草に馴染んでいく。
うねうねと草がチャクラに指示を受けて私の体に延びてきた。
「キャッ…………痛い。離して下さい……」
苦痛に顔が歪む。木の枝が足と腕を固定して、十字架をつくる。周りに生えていた雑草は体の至る所を締め付けていた。筋肉が潰され、骨が軋む音までする。
「やっぱりミキは最高。じゃあ私もいつもより強く撃ってみようかな」
右手に灯った炎が何倍にも膨れ上がっていく。淀んでいた紫色は大きさを変えるにつれて濃さを増していった。
笑った顔で彼女はじゃあねと言って、それを私に放った。
これがいつもの私の日常だった。