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マリーゴールド(書き直し)  作者: ぽてえび
逃せない想い出
6/28

エディブルフラワーと老店主

 朝九時。昨日、百合と約束した通り駅前で百合が来るのを安堵しながら待っていた。


 安堵しながらというのは夜中に昨日の夕方に見た積乱雲が嵐のごとく雨を降らせていたからだ。


 けど今日はそのおかげというべきなのか雲一つない快晴だ。


 さすがに集合一時間前は早すぎたようでまだ百合が来るようには思えなかった。





「あ!やっぱりもう来てた!」




 けど予想外なことに十五分くらい待っているとソフトクリームを両手に持った百合がこっちに歩いてくるのが見えた。涼しげなワンピースを着ているのも相まって真夏の女の子って感じがしてよく似合っていて可愛かった。




「いやー、早いね君は。はいこれ」




 そう言って百合は右手に持ったソフトクリームを渡してきた。


 少し溶け始めているソフトクリームの上にはエディブルフラワーが乗っていた。




「え?いいの」




「うん、もしかしたらもう待ってるかもしれないって思って待たせてたら申し訳ないなって思って君に買ったやつだから」




「ごめん、気使わせちゃって。ありがとう」




「次はちゃんと時間に通りに集まるよ」




「全然気にしなくていいよ!むしろ君らしくて私は好きだよ」




 不意に好きと言われて顔が熱くなった。


 それが顔色にも出ていたのか百合がにやけて俺の顔を覗いてきた。




「もしかして今照れてる?」




「うるさい」




「やっぱり照れてるんだー、わかりやすいなー。図星だ」




「それより百合はその鼻にアイスはいつ食べるの?」




「え?」




 こっちに向かってきているときに鼻に何かついていると思っていたけど百合が俺の顔を覗いてきたときにソフトクリームがついてるのが見えた。




「ちょ、これ取ってくれない?」




「わかった」




 俺はスマホのカメラを起動して鼻にソフトクリームがついいたままの百合を写真に撮った。


 さっきのお返しだ。少しからかってやろう。




「ちょっと!そっちの撮ってじゃないよ!」




「ティッシュかなんかで取ってって意味で言ったの」




 頬を膨らましてあざとく怒っているから本当は怒っていないことが伝わってきた。




「ごめんごめん、ほら取ってあげるから」




 俺がそういうと百合は俺のほうに近づいて顔をそれよりももっと近づけて目を瞑った。距離が近くなって百合から普段は意識していなかった花のなぜか懐かしい気がする香りがほのかに漂ってきて胸が熱くなった。


 それに目を瞑っているのもあってキスする直前みたいに思えて仕返しのためにからかったはずが逆に自分が恥ずかしくなった。


 だから俺は急いでポケットティッシュを取り出して百合の鼻についているソフトクリームを取ってあげた。




「ん、ありがと」




「どういたしまして。それで今日はわざわざ駅前に集合したけどどこに行くの?」




「ふっふっふ、ついてきたまえ」




 百合は俺の手を引っ張って改札口に向かった。


 不意に手を握られたもんだから今までの倍には胸の鼓動が激しくなった。


 たぶん顔だけじゃなくて耳までもが赤くなっていたと思う。そう思えるほど俺の顔が熱かった。真夏で夏が嫌いだというのにこれじゃ今日一日耐えられるかわからない。





 電車に乗って二駅ほど進むと百合は握ったままの俺の手をまた引っ張り始めた。


 改札口を通り、駅から出るとそこは俺と百合が住んでいる町よりもさらに田舎だった。




「お店までちょっと歩くよ」




「わかった」




 百合は鼻歌を歌いながらのんきに歩き出した。


 歩いている間もずっと手を握っていて、たまにすれ違う中学生に見られなれても百合は鼻歌をやめることも手を離すこともしなかった。




 短い田んぼ道を抜けると小さい住宅街が広がっていた。そこからまた少し歩いていると優しい風に乗ってどこか懐かしい花の香りがした。




「もうすぐだよ」




 百合がそういってT字路の角を曲がると花の香りがさっきよりも強くなった。




「ここだよ!意外と歩いちゃったね」




 百合が示したお店はどう見ても服屋じゃなくお花屋さんにしか見えなかった。


 それに俺は昔ここ来たことがあるような親近感があった。




「お花屋さんみたいだね」




「そうなんだよ!お店の名前もマリーゴールドだしね」




「お母さんが言うには昔はお花屋さんだったらしいよ」




「はぇー、そうなんだ」




「やっぱり覚えていないんだ...」




「ん?なんか言った?」




「ううん、なんでもないよ!暑いから早くなか入ろ!」




「うん、そうだね」




 なかに入るとお店の名前になっている花のイメージからなのかオレンジ色の花があちこちに飾られていた。それに花の甘い香りが意識しなくても息を吸うたびに漂ってきた。今は思い出したくない先ほど百合をからかった時の場面が思い浮かばされて少し恥ずかしくなった。




「ねぇ、この服なんてどう?」




 花の匂いに翻弄されていると百合が俺の着る服をいつの間にか選んでいた。


 百合の選んだ服はアロハシャツのようなオレンジ色の派手な服だった。




「ごめん、それはさすがに着る勇気がないよ」




「えー?似合うと思うんだけどな」




「シンプルなのがいいかな」




「シンプルなもの?おしゃれの努力はどこに行ったの」




「ハードルが高いよ」




「うーん、じゃあこれは?」




 百合がたくさんある服から選んだのは黒をベースにこの店の名前であるマリーゴールドのオレンジ色の花びらが程よく舞っているデザインのシンプルかつきれいな服だった。




「これなら着れるかも」




「じゃあこれにしよ!」




「うん、ありがとう。で百合はどんな服買うの?」




「秘密!水族館当日のお楽しみってことで、ほら服もって先にお会計してて!」




 そういって百合は俺の背中を押して服を選びに行ってしまった。


 会計を老人の店主らしき人に頼み服の値段を聞くと普段買う服のが十枚は買える値段を言われて驚いた。よほど顔に出てしまっていたのか優しいことにその老店主は半分の値段で百合が選んでくれた服を売ってくれた。


 優しすぎて、




「絶対にまた来ます」




 と店主に約束した。

 朝九時。昨日、百合と約束した通り駅前で百合が来るのを安堵しながら待っていた。


 安堵しながらというのは夜中に昨日の夕方に見た積乱雲が嵐のごとく雨を降らせていたからだ。


 けど今日はそのおかげというべきなのか雲一つない快晴だ。


 さすがに集合一時間前は早すぎたようでまだ百合が来るようには思えなかった。





「あ!やっぱりもう来てた!」




 けど予想外なことに十五分くらい待っているとソフトクリームを両手に持った百合がこっちに歩いてくるのが見えた。涼しげなワンピースを着ているのも相まって真夏の女の子って感じがしてよく似合っていて可愛かった。




「いやー、早いね君は。はいこれ」




 そう言って百合は右手に持ったソフトクリームを渡してきた。


 少し溶け始めているソフトクリームの上にはエディブルフラワーが乗っていた。




「え?いいの」




「うん、もしかしたらもう待ってるかもしれないって思って待たせてたら申し訳ないなって思って君に買ったやつだから」




「ごめん、気使わせちゃって。ありがとう」




「次はちゃんと時間に通りに集まるよ」




「全然気にしなくていいよ!むしろ君らしくて私は好きだよ」




 不意に好きと言われて顔が熱くなった。


 それが顔色にも出ていたのか百合がにやけて俺の顔を覗いてきた。




「もしかして今照れてる?」




「うるさい」




「やっぱり照れてるんだー、わかりやすいなー。図星だ」




「それより百合はその鼻にアイスはいつ食べるの?」




「え?」




 こっちに向かってきているときに鼻に何かついていると思っていたけど百合が俺の顔を覗いてきたときにソフトクリームがついてるのが見えた。




「ちょ、これ取ってくれない?」




「わかった」




 俺はスマホのカメラを起動して鼻にソフトクリームがついいたままの百合を写真に撮った。


 さっきのお返しだ。少しからかってやろう。




「ちょっと!そっちの撮ってじゃないよ!」




「ティッシュかなんかで取ってって意味で言ったの」




 頬を膨らましてあざとく怒っているから本当は怒っていないことが伝わってきた。




「ごめんごめん、ほら取ってあげるから」




 俺がそういうと百合は俺のほうに近づいて顔をそれよりももっと近づけて目を瞑った。距離が近くなって百合から普段は意識していなかった花のなぜか懐かしい気がする香りがほのかに漂ってきて胸が熱くなった。


 それに目を瞑っているのもあってキスする直前みたいに思えて仕返しのためにからかったはずが逆に自分が恥ずかしくなった。


 だから俺は急いでポケットティッシュを取り出して百合の鼻についているソフトクリームを取ってあげた。




「ん、ありがと」




「どういたしまして。それで今日はわざわざ駅前に集合したけどどこに行くの?」




「ふっふっふ、ついてきたまえ」




 百合は俺の手を引っ張って改札口に向かった。


 不意に手を握られたもんだから今までの倍には胸の鼓動が激しくなった。


 たぶん顔だけじゃなくて耳までもが赤くなっていたと思う。そう思えるほど俺の顔が熱かった。真夏で夏が嫌いだというのにこれじゃ今日一日耐えられるかわからない。





 電車に乗って二駅ほど進むと百合は握ったままの俺の手をまた引っ張り始めた。


 改札口を通り、駅から出るとそこは俺と百合が住んでいる町よりもさらに田舎だった。




「お店までちょっと歩くよ」




「わかった」




 百合は鼻歌を歌いながらのんきに歩き出した。


 歩いている間もずっと手を握っていて、たまにすれ違う中学生に見られなれても百合は鼻歌をやめることも手を離すこともしなかった。




 短い田んぼ道を抜けると小さい住宅街が広がっていた。そこからまた少し歩いていると優しい風に乗ってどこか懐かしい花の香りがした。




「もうすぐだよ」




 百合がそういってT字路の角を曲がると花の香りがさっきよりも強くなった。




「ここだよ!意外と歩いちゃったね」




 百合が示したお店はどう見ても服屋じゃなくお花屋さんにしか見えなかった。


 それに俺は昔ここ来たことがあるような親近感があった。




「お花屋さんみたいだね」




「そうなんだよ!お店の名前もマリーゴールドだしね」




「お母さんが言うには昔はお花屋さんだったらしいよ」




「はぇー、そうなんだ」




「やっぱり覚えていないんだ...」




「ん?なんか言った?」




「ううん、なんでもないよ!暑いから早くなか入ろ!」




「うん、そうだね」




 なかに入るとお店の名前になっている花のイメージからなのかオレンジ色の花があちこちに飾られていた。それに花の甘い香りが意識しなくても息を吸うたびに漂ってきた。今は思い出したくない先ほど百合をからかった時の場面が思い浮かばされて少し恥ずかしくなった。




「ねぇ、この服なんてどう?」




 花の匂いに翻弄されていると百合が俺の着る服をいつの間にか選んでいた。


 百合の選んだ服はアロハシャツのようなオレンジ色の派手な服だった。




「ごめん、それはさすがに着る勇気がないよ」




「えー?似合うと思うんだけどな」




「シンプルなのがいいかな」




「シンプルなもの?おしゃれの努力はどこに行ったの」




「ハードルが高いよ」




「うーん、じゃあこれは?」




 百合がたくさんある服から選んだのは黒をベースにこの店の名前であるマリーゴールドのオレンジ色の花びらが程よく舞っているデザインのシンプルかつきれいな服だった。




「これなら着れるかも」




「じゃあこれにしよ!」




「うん、ありがとう。で百合はどんな服買うの?」




「秘密!水族館当日のお楽しみってことで、ほら服もって先にお会計してて!」




 そういって百合は俺の背中を押して服を選びに行ってしまった。


 会計を老人の店主らしき人に頼み服の値段を聞くと普段買う服のが十枚は買える値段を言われて驚いた。よほど顔に出てしまっていたのか優しいことにその老店主は半分の値段で百合が選んでくれた服を売ってくれた。


 優しすぎて、




「絶対にまた来ます」




 と店主に約束した。

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