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マリーゴールド(書き直し)  作者: ぽてえび
逃せない想い出
4/28

きっかけと意外なこと

 夏休み初日。どうやら俺は昨日寝た後、一度も起きずに次の日、つまり今日を迎えたらしい。しかも時計を見ると朝の八時半。


 ロングスイーパーになったつもりはないがもしかすると俺はその類なのかもしれない。もしくは単純に昨日ファミレスで百合に心配されたように自分では気づかないほど疲れてしまっているのかもしれない。




 それはそうとあの時寝てからそのままなら俺は歯を磨かないまま寝てしまっていることになるのでさっさと歯を磨く必要がある。


 俺はベッドから降り一階の洗面所に向かった。


 洗面所の鏡の前で歯を磨いている途中、なんとなく自分の顔を見ると寝起きだからなのか年老いたおじいさん。とまではいかないけどそれなりの寝ぼけたあほ面だった。




「ひっでぇ面してんな」




 歯磨きを終え顔を洗って優しくタオルで拭くといつも通りのまだましなあほ面に戻った。結局あほ面なのは変わらない。


 口の中と顔がスッキリしたところだから何かをしようかと思ってもやることと言えば学校に行って花たちに水をやるかゲームをするかしかない。


 しかしあいにく今日の天気は空を見ると雨が降るように見える。天気予報でもがっつり雨のマークが時間ごとの天気予報が意味ないくらいに乗っている。


 だから今日のやれることは自然と一つに絞られてしまった。


 夜にゲームをするのが日課の俺にとってはあまり気は乗らない。


 でも、このまま何もしないで時間が過ぎるのはもっと気が乗らないので仕方なく自腹で奮発して買った黒赤のゲーミングチェアに座り高校入学祝いで半分のお金を祖母に出してもらったプレステの電源を入れる。もう半分は自分で出した。





 普段やるゲームのアイコンを選択してゲームを開く。


 最新のプレステってのもあってロードがすぐに終わり俺を急かすようにゲームの世界へといざなった。オープンワールドなこのゲームは今まで対戦ゲームしかやったことがなかった俺にとってはゲームの価値観を変えるほどに革新的なものだった。


 どこに行くのも何をするにもすべてはプレイヤー次第。だけどストーリーも十分に楽しめるこのゲームは今や俺にとっては対戦ゲームよりも価値のあるゲームだ。


 百合と今みたいな友達関係になれたのもこのオープンワールドがきっかけでもある。






「君って普段家で何してるの?」




 あの出会いから何日間か経った快晴の空の下で花たちに水やりをしながら突然聞かれた。まだ少し気まずさがあった頃だったからきっと百合なりに気を使ってくれていたのだろう。




「何もすることがない日はゲームやってるよ」




「へー!どんな?」




 意外にも百合は食い気味に聞いてきた。




「だいたいは友達とチーム組んで対戦ゲームしてる」




「なんか意外だね」




「なにが?ゲームすることが?」




 百合は少し迷った顔をした後、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて言った。




「それもそうだけど、君に友達がいたんだなって」




「そりゃいるよ!」




「あはは、ごめんごめん」




 笑いながら謝る百合の顔を見て胸の鼓動が早くなるのを感じた。




「でもそれも意外かも。君がゲームするのってなんかイメージつかない」




「そういう百合はゲームしたりとかするの?」




「もちろんするよ!ゲーム好きだもん!」




 待ってました!と言わんばかりの顔をして百合は言った。




「それこそ意外じゃないか」




「あはは、そうかもね」




「ちなみにどんなゲームやるの?」




 百合のことだから友達とできるようなパーティーゲームだったりのんびり系のゲームをするかと思った。けど予想は斜め上にはずれた。




「私はねぇホラーゲームとかサバイバルホラーとかやってるよ」




「え、それはまた意外な答えだな」




「そうかな。私ホラーとかサスペンスとか結構好きだよ」




「そうなんだ、」




 無意識に力の抜けた感じに話してしまった。それを百合は聞き逃さなかったのかまたいたずらっ子みたいな笑みをして顔を覗いてきた。




「な、なんだよ」




「もしかしてなんだけどさ」




 にやけながら百合は続ける。




「君ってホラー苦手だったりする?」




「べつに...」




「あー、図星だ!」




「ホラー苦手なんだね!意外なところもあったけどこれは予想通りだった」




 黙ったままの俺を無視して勝手に納得している百合があどけなくって怒る気になれなかったけど。


 だから本当は隠してたかったけど認めるしかなかった。




「ねぇ今度一緒にゲームしようよ」




「いやだよどうせホラーゲームでもやらせるつもりだろ」




「それも考えたけど二人でのんびりできるゲームしたい」




 百合は少し考えて名案を思い付いたかのように人差し指を立てた。




「オープンワールド。なんてどう?」




「オープンワールド?」




「うん、決められたルートだけじゃなくてプレイヤーが自由に冒険できるんだよ」




「それって面白いの?」




「おもしろいよ!私も君みたいに疑ってたけど実際やってみたら時間なんてあっという間に溶けちゃったよ」




 百合がこんなにも勧めるのがなんだか珍しく思えてまた胸がむずがゆくなった。


 オープンワールド。やってみてもいいかもしれない。




「やってみよっかな」




 俺がそういうと百合の元から明るかった顔がさらに明るくなったように見えた。




 懐かしい記憶を思い出しているといつの間にか十四時を過ぎていた。


 やっぱりオープンワールドは偉大だな。


 あとで百合にあった時に改めて感謝しないとな。

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