青天の霹靂
今日もあの人は寝てるんだろうな。
そう思いながら私はいつものように私がここの病院に勤め始める前からずっといる一人の患者の病室に向かう。先輩の看護師によると彼は何十年もずっと眠り続けているらしい。最初は植物状態なのかと皆も来たばかりの頃の私も思ったけど、どうやら違うみたいでホントにただただ眠っているだけらしい。何十年も眠り続けて彼は一体何の夢を見ているのだろうか。
「おはようございます、今日も暑いですね」
言ってもどうせ寝てるから聞こえちゃいないんだろうな。でも医者は話しかけ続けろって言ってたし多少は意味あるのかな。
部屋の換気をするために窓を開けると、夏にしては少し涼しい風が入り込んできた。
「こんな天気のいい日は散歩にでも行きたくなりますね。でも、折りたたみ傘は持っていったほうがいいかもですよね。なんせ、夏の空は気分屋だから」
「お、おはよう、、、あれ、ここはどこ、、、だ?」
独り言のように話していると、不意に聞き慣れない声が聞こえた。驚いて私は声のほうを振り向いた。
「、、、え、嘘でしょ?先生っ!!!」
その日私は人生で一番驚いたし、焦りもした。
何十年も寝ていた彼が今日、起きた。




