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47章 バドスン・アータスのゴウ=カイ

「まさか、こんな形で華凛たちにボクの過去を見せる事になるなんて…。」


 Mr.シルバーが仕掛けて来た第二関門。それはどうやら失われた未来、ゴーストがまだアルウスと名乗っていた頃の過去の再現のようだった。

 ゴーストの過去は以前、Mr.シルバーと初めて戦った後に聞かされた事があったが、こうして実際に見せられる時が来るとは華凛も思わなかった。


「い、一体何なん、このデュラハンたちは…?」

「こいつらが前に老紳士殿が言っていた後一ヶ月後に姿を現す敵って奴なのか…?ふっ、どいつもこいつもなかなかの猛者と見た…!腕が成るわ…!」


 颯は冷や汗を掻きながらも玉座に座る

ダジーラクと呼ばれている黒騎士を見ていた。


「颯ちゃん、呑気やなぁ~っ…。」

「でも、何だか頼もしいでしょうや。」

「単に強がってるだけじゃない?」


 素子と八雲、ミストが颯を見て色んな感想を述べた。


「みんな、静かに…!どうやら何かを話し始めるみたいだから…!」


 華凛が颯たちに静かにするように言うと華凛の言う事を聞いて颯たちはすぐに静かになった。


「シユーザー、我が方で造ったデストロイ・デュラハンたちはなかなか戦果を上げられていないようだな…。」

「おいおい、言われてるぜ?シユーザー。」

「ちぃ~っ…、まるで他人事みたいに…!黙らっしゃい、ライガ!」


 シユーザーはライガの方を向いて悔しそうに憤ってみせた。


「ご安心を、ダジーラク様。奴らの戦力は大体把握できました。ダジーラク様が満足のいくような、奴らに相性の悪いデストロイ・デュラハンを造ってみせましょう…。」


 ダジーラクの横にいる緑髪の長髪の女性がダジーラクに話し掛けた。


「さすがマーシャル!その通りです、ダジーラク様!私、頑張っちゃいますから!」


 マーシャルの擁護を聞いてシユーザーは張り切ってみせた。マーシャルの方はそんなシユーザーを見て腕を組み、どこか不機嫌そうだった。


「確か奴らの戦力というのは…。」

「はい、『空野道人』と『ジークヴァル』。『城之園愛歌』と『トワマリー』。…『ジュンナ・マノンシア』と『フォンフェル』。『千葉大樹』と『カサエル』の四組です。」

「おいおい、何だか聞き覚えのある名前が何人か聞こえて来たぞ…。」

「道人君の事はゴーストから聞いていたけど、城之園さんも…?」


 城之園愛歌とは式地博士の代理としてデュラハン・パークのプレミアムチケットを華凛たちに渡しに来てくれた女の子の事で、千葉大樹という少年も隣のクラスの生徒の名前だった。


「そんなに強敵なのかい、そのチキュウジンとデュラハンたちは?所詮は紛い物のデュラハンなんだろう?」


 アルウスが他のハチゴウセンのメンバーたちに話し掛けた。


「おう、なかなかの猛者揃いだぜ、アルウス!特にジークヴァルと道人はな!奴らがどう成長するのか楽しみだ。」

「あたいはあの愛歌とトワマリーとかいう奴らが気に喰わないねぇ~っ…。あたいよりも美しく舞って闘うのは許されない事さ!」

「イガイトヤル、ニンジャ!イガイトヤル!」

「カカッ、大樹とカサエルもわしが会った事がないタイプの猛者じゃったな。奴らがどう答えを出すか楽しみじゃわい。」

「ふーん…。」


 ライガ、ダーバラ、ラクべス、レイドルクがそれぞれ戦った相手の感想を述べて来た。


「何だったらアルウス、次はあなたがディサイド・デュラハンたちに戦いを挑んだらいかがですか?」

「ボクが?」


 シユーザーがアルウスに対して挑発して来た。


「そうですね、ディアス様もスラン様も別任務がありますし…。ここはアルウス様が出撃するのもありかと…。」


 マーシャルもシユーザーと意見を共にし、アルウスの出撃を薦めた。


「…まぁ、いいか。いいよ、ボク行くよ。ディサイドの力がどれ程のものなのかをボク自身の目で確かめてみたいしね。」


 アルウスはやる気と興味に満ちたのか、背にしていた柱から離れて立ち上がって見せた。


「ほう…。なかなかの闘気だ、アルウスよ。良かろう、存分に戦って来るが良い。」

「ははっ!ボクの意思はダジーラクと共に!」」


 アルウスはダジーラクに対して敬いの姿勢を取ってみせた。


「吉報を待っているぞ、アルウス。以上。これにてゴウ=カイを終了とする…。」


 ダジーラクは玉座から立ち上がり、マーシャルと共に大広間から退室していった。

 ライガ、レイドルク、ダーバラ、ディアスも退室していった。

 アルウスはシユーザーからディサイド・デュラハンたちに関するデータを受け取っていた。


「さて、アルウス。連れていくデストロイ・デュラハンですが…。」

「いらない。ボク一人で十分だ。」

「おやおや、ライガやレイドルクのような単独武闘派スタイルですか。…ま、いいでしょう。後で私を頼らなかった事を後悔しないように頼みますよ?」


 シユーザーはアルウスに嫌味を言った後、退室していった。


「シユーザーってば、あいかわらずいやぁ~っなかんじ!きにしないでいいよ、アルウス?」

「ありがとう、スラン。別にボクは気にしてないよ。あれがシユーザーの通常運転さ。」

「シユーザーハ、ジブンガツクッタ、デストロイ・デュラハンニ、カナリジシンガアル。ソレデ、スネテイタダケダ。」

「あいかわらずやさしいねぇ~っ、ラクべスは。ねねっ、アルウス。かえってきたらまたいっしょにあそぼ?このあいだ、あったおさかなさんのはなしをたくさんしてあげる!」

「うん、スランが話してくれる魚の話は面白いからね。楽しみだ。」

「ドウカンダ。イガイトキガアウナ、アルウス。」


 アルウスはそう言うとスランとラクべスと別れ、大広間から退室した。


「…? 何…?」


 いきなり風景にノイズが走り、強制的に場所が変わったので華凛たちは驚いた。

 風景は青空が一面に広がった場所。ビルが並ぶコンクリートジャングルになった。


「おっとっと…?ここは…?」

「間違いない、ここは御頭(おがしら)中学校の近くでしょうや…。」


 華凛たちはビルの上にいつの間にか立っていて、アルウスの姿もビルの屋上にあった。どうやら、学校を眺めているようだった。


「ターゲットは見つけたけれど…。これは恐らく学び舎かな…?これ程の規模の学び舎は初めて見たかもしれないな…。」


 アルウスは校舎以外にも周りを観察し始めた。その最中に右肩に鳩が止まった。


「この星の生き物、か…。スランからは魚の話しか聞いてなかったけど、鳥の類もいるのか…。他にも動物に縄を結んで共に歩いている者も見受けられる…。窮屈ではないのかな?いや、窮屈そうには見えないか…。むしろ、喜んでいるように見える…。」

「…ふふっ。」


 地球の環境に興味津々のアルウスを見て華凛はつい笑ってしまった。


「どないしたん、華凛ちゃん?急に笑い出して?」

「いやね、この時点のゴーストはまだ人類の敵で一体どんな感じなのかと思ったけど…。案外いつも通りでさ。何だか面白くて…。それと何だか安心してさ…。」

「華凛…。」


 しばらく言葉を発してなかったゴーストがやっと口を開いた。


「私も気持ちはわかるよ、ゴースト。私もこの世界に来た時は本の知識でしか地球の事を知らなくて、右も左もわかんなかったけど…何て言うのかな?見るもの全てが新鮮で、ドキドキワクワクしたと言うか…。」

「なるほど、つまりミストちゃんの心の底の冒険心が疼いた…という事でしょうや?」

「そう、多分それ!それだよ、八雲!」


 ミストは自分が感じていたものを的確に八雲が言ってくれたので嬉しそうに指差した。


「わかるぞ、ミスト。私も買ったばかりのゲームを家に持って帰るまでの道中もワクワクしたものだ…。」

「そ、その例えは果たして合ってるん、颯ちゃん…?」

「みんな、もう一人のゴーストに何か動きが…!」


 華凛がそう言うとアルウスはその場に座って校舎を眺め始めた。


「…ま、ターゲットが外に出てくるまでここで待つか…。」


 アルウスはそう言うとぼーっと青空を眺め始めた。


「ははっ、ゴーストってこの頃から待つのが好きだったりする?」

「あーっ…、確かに待たされる事は多かったかな…。そういう意味ではボクは待つ事が得意なのかな?」


 華凛たちの絡みを見て緊張が解けて来たのか、段々とゴーストの口数が増えて来た。

 ここでまた場面転換が起こり、あっという間に夕方になった。

 下校時間で生徒たちが帰っている。


「下校時刻か…。あ、ひょっとして私らもいたりするか?」

 

 颯は額に右手を当てて下校する生徒たちを確認し始めた。


「もう、颯ちゃん!今はそんな事やってる場合やないやろ?」

「ふふん♪そんな事言いながら気になっているのではないか、素子よ?」

「ま、まぁ、それは…多少はな…。」


 素子は照れながら両手の人差し指を何度も軽くタッチした。


「…驚いた…。まさか、護衛のデュラハンを連れていないとは思わなかった…。警戒心がないのか…?」


 アルウスは下校中の道人と愛歌、大樹を見て首を傾げていた。

 いつかの駄菓子屋の看板娘店員・潤奈の姿もあり、道人たちに手を振っていた。


「護衛?私がいますが?」

「…!? ダレッ!?」


 アルウスは急いで声がした方を向いた。近くの電柱に腕を組んだ黒い忍者デュラハンが姿を現した。


「オマエは確か、データにあった…!」

「私の名はフォンフェル…。主である潤奈のディサイド・デュラハンだ。あなたがこんな開けた場所で呑気に校舎を眺めていたのでね…。敵対する意思はないのかと思い、私としても遠くから様子を見ていたのだ。」

「ぐっ…!?」


 アルウスはずっと見られていたのを気づかなかった自分を恥ずかしがっているように見えた。


「鳥や動物にも関心を抱いているようだった…。あなたは敵という事でよろしいので?」

「と、当然さ!ボクはそのためにここに来た!ちょうどいい、まずはオマエからアイテにしてやる…!」


 アルウスはそう言うと何もない場所から剣を取り出し、切っ先をフォンフェルに向けた。

 だが、切っ先の先にフォンフェルはいなかった。


「…!? いない…!?」

「こっちです!」


 フォンフェルはいつの間にかアルウスの背後にいて回し蹴りを喰らわして来た。


「ぐっ…!?」


 アルウスは咄嗟に両腕を交差してフォンフェルの回し蹴りを防いでみせた。


「ほう、やりますね…。ですが、なるべくなら主の手は煩わせたくはないのです…。出会って早々申し訳ありませんが、ご退場願いましょうか。」

「やれるものなら、やってみろ…!」


 アルウスがそう言うとフォンフェルと共にビルとビルを次々と飛び回り、互いに剣と刀をぶつけ始めた。

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